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旅の始まりと終わりの匂い【台湾⑤-最終日-】

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台湾の旅の終わりは線香の匂いだった。最後の一日を無駄にしないために、宿を朝早く出て市街へと向かった。特に必ず行きたい目的地はなかったのだけれど、最終日ということで台湾らしい雰囲気を少しでも味わいたいと思い地元民向けの朝市へと足が向かった。

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到着したのはまず観光客は来ないであろう朝市だった。メインとなる大通りがあってそこを背骨として魚の骨のように細い路地が何本も伸び、個人の商店がところ狭しと連なっていた。

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バイクの排気ガスの匂いと線香の香り、そして至るところから立ち上る屋台飯の美味しそうな匂いに囲まれながらふらふらと歩きまわる。

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気になるお店を見つけた。牡蠣とモツの入った暖かい素麺のお店だった。地元の方たちだろうか、多くの人が店前に並んでいるところからして期待が高まる。購入した素麺をホカホカの気持ちで大切に抱えながら、腰をかけられそうな場所を探す。メインストリートの中心に花壇がありそこに座りながら買ったものを食べている人たちがいた。私も彼らに倣って花壇に腰かける。野菜が詰まった買い物袋を抱えたおばちゃんや短パン、タンクトップでうろついているおっちゃんを眺めながら、出汁の効いた素麺を朝の胃袋へと落とし込む。これまでの台湾の旅の思い出と帰りの飛行機までの時間を考えながら最後の食事を満喫した。

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数日ぶりに帰った自分の部屋はどこか新鮮だ。こんな匂いだったっけ、こんなに散らかしたまま出てきたっけと思いながら旅の荷物の片付けに取りかかる。
スーツケースを開いたときのわずかな線香の匂いを嗅いだとき、今回の台湾の旅の終わりを実感した。

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