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新郎の父と新郎の関係性を大量に見てきて気付いたことと『おかえりモネ』第22週

「それでは両家を代表して、新郎の父からごあいさつさせていただきます。」と司会として言ってから、新郎父と新郎をいつもじっと観察しています。

新郎父のあいさつが見事過ぎる、というか新郎父が「こりゃかなわねぇな」と思わされるタイプだと、新郎は自己肯定感が低い、という法則があるのです。

私は司会がそこそこ得意なので、大学時代に結婚した親友から始まって、友人の結婚披露宴の司会を10組以上務めてきました。新郎父のあいさつは、友人であるところの新郎をより深く理解するための最強の補助線でいつも楽しみなのです。

息子にとって父親は、いつか超えたい壁です。
そこまで明確に意識はしなくても、父親は一番身近な“男”としてのロールモデルなので、強烈な影響を受けざるをえません。

私の父親は、愛すべき絶妙なしょぼさを発揮するタイプで、中二の時のある事件をきっかけに、自分の中で明確に、自分は父親を超えたなと思ったものです。その結果というか、私が生まれ落ちた瞬間からずっと父親はそういう人であり続けたわけで、自己肯定感が過剰に強いという私の人格形成に強烈な影響を与えたと思われます。

自己肯定感には苦労していないというか、私と同じく過剰だなと思っていたタイプの友人の父親は、新郎の父としてあいさつする時に、お酒にちょっと飲まれすぎたり、微笑ましい感じで緊張が隠せなかったり、そんな感じで会場みんなで温かくお父さんを見守る感じになるのです。

一方で、猛烈に優秀なのに、この人はどうしてこうも自己肯定感が低いのだろうと不思議に思っていたタイプの友人の場合は、結婚披露宴で父親が、家庭人としても職業人としても猛烈に有能なのだろうなと匂い立つような内容の、ユーモアも交えたスピーチをかましてきて、ああ、こんな父親が立ちはだかっていたら、ずっとずっと「俺はまだまだだ」って突きつけられてしまうよなと納得させられるのです。

そんな父と息子との関係性のことを考えると、『おかえりモネ』第22週で強烈に示されたりょーちんの自己肯定感の低さは本当に気の毒になります。漁師のりょーちんのお父さんである新次さんは、漁師として猛烈に優秀で海の天候を誰よりも的確に読み取り、男としても島のマドンナだった美波さんを内藤聖陽演じるところの耕治と争って勝ち取るほどで、なんてったって見た目は浅野忠信です。この父親には敵わないなぁと突きつけられ続けて育った上に、そんな父親が震災で美波さんを喪ってしまったことをきっかけにボロボロになっていく様を見せつけられたわけです。

いつか自分が父親を超えたら、自分が育った家庭を更に超えるような幸せな家庭を築けるはずだと思って生きているんです。なのに、自分にはまだまだ超えられないスゴい父親なのに、家庭はボロボロという現実を叩きつけられたら、そりゃあ「自分には誰も幸せにできない」って思ってしまいますよ。

一方で、我らが菅波先生については、父親についてはここまでまったく描写がないですが、菅波先生の自己肯定感の過剰さからして、たぶんイイ感じにしょぼい父親なんだろうなと妄想しています。自己肯定感が過剰じゃないと、せっかくハートキャッチしたモネと離れ離れで心穏やかではいられないですから。

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