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ACLS EP 体験記

研修医2年目も残り少しとなった時にAHAのACLS EPを受講してきました。
ACLSは研修医や看護師、循環器や麻酔科の医師など受講する人も多く、実態は掴みやすいですがACLS EPになると受講する人が少ない。そしてネットで調べても今一つ何をやっているか掴みにくいです。
今後ACLS EPを受講しようかどうか考えている人に向けて参考になればと思い記させてもらいました。


ACLS EPとは?


ACLS EPコースは,ACLS コースを拡張し,批判的思考法や意思決定戦略を奨励することにより,複雑な心血管,呼吸器,代謝,毒物学およびその他のエマージェンシーにおける転帰の改善を意図しています。指導と症例に基づくシナリオへの積極的な参加を通じ,受講者は,心停止前,心停止,および心停止後の患者の鑑別診断のスキルを高めます。(https://international.heart.org/ja/our-courses/acls-ep/ , AHAのホームページより)

簡単に言えば、ACLSは心肺停止、呼吸停止、重症不整脈、脳卒中を扱っていましたが、ACLS EPは加えて心血管系、呼吸不全、代謝性疾患、中毒、アレルギー、脳血管といった心停止前の症例も扱うコースとなっています。

ACLS EPの受講料や当日のタイムスケジュール、必要なものなどは?


調べると出てきます。ACLS EPを行っているトレーニングセンターのHPのリンクを貼っておくので参考にしてみてください。
https://acls.or.jp/course/acls-ep/ (日本ACLS協会ガイド)

ACLS EPの難易度は?


初期研修1年目終えた後であればついていける内容だと思います。
医学生も意識高い5、6年生であればもしかしたらついていけるかもしれません。ただし、ACLS受講して精一杯であればやめておいた方が良いです。
看護師であれば救急外来や集中治療で2−3年働けばついていけるのではないかと思います。急性期で働いている人もいけるかもしれませんが、必ずしも全ての疾患を扱うとは限らないと思うので自分の経験したことのある症例との兼ね合いで判断されたら良いと思います。

ACLS EPの予習について


ACLSの予習として以下のサイトに記されている受講前評価を行いました。
https://acls.or.jp/dictionary/acls-selfevaluation-2020/ (日本ACLS協会ガイド)
ACLS EP マニュアル&リソーステキストの通読を行いました。
ただ、量が多く文章も英語テキストと翻訳したものなのですごく読みづらかったです。正直言ってどれだけ頭の中に入ったのか怪しいところがあります。

当日の参加者


当日は研修医は私一人、看護師が4人の合計5人でした。
看護師さんはみなさん10年目前後の方達で、救急外来や急性期病棟、循環器病棟で働いているとのことでした。

コースの内容(ACLSの復習)


コースの最初はACLSの復習からでした。ACLSのメガコードテストからでした。みんなぎこちなかったですがインストラクターの天の声でなんとかみんな通ることができました。
その後筆記試験があったのですが、私が受けたところはテキスト持ち込み可であったので難なく通ることが出来ました。

コースの内容(ACLS EP 〜イントロダクション・ショック〜)


ACLSの筆記試験が終わるといよいよEPのセクションです。
最初はEPについての説明とショックについての説明がありました。
ショックについては国家試験の勉強で一度は学んだことのある内容なので苦労はしないと思います。

コースの内容(ACLS EP〜症例検討について〜)


その後、8つの症例を元にディスカッションしていく形になります。
具体的には
「患者の年齢・性別、主訴、現病歴」が与えられ次に何をするか考える。
「ABCアプローチの結果、バイタルサイン」が与えられ次に何をするかを考える。
「検査結果」が与えられ鑑別を考え次に何をするかを考える。
「追加の検査結果」が与えられ鑑別を考え次に何をするかを考える。
今回の病態についての講義が行われ、これを踏まえて診断や治療を考える。

具体的な症例の例を挙げてみます(当日の内容とは全然異なるあくまでも例です)
「60歳男性が胸を痛めてやってきました。まず何をしますか?」
「ABCアプローチではA,B異常ありません。胸を押さえながら受け答えは可能です。バイタルはBP ○○、HR ○○、RR ○○、SpO2 ○○、BT ○○です。身体所見は○○です。バイタルサインの 検証です。意識障害や呼吸不全はありますか?ショックはありますか?この患者の病態はなんですか?」
「心電図結果と血液ガス分析の結果です。診断は何ですか?この後どうしますか?」
「CT検査で明らかな異常はありませんでした。この後どうしますか?」
急性冠症候群のレクチャーが行われた後に、「治療はどうしますか?」
とこのような感じで進めます。昔あった、ドクターGみたいな進め方ですね。

当日の症例は循環器系、呼吸器系、代謝系、アレルギー系、脳血管系、中毒から出題されました。1症例15〜40分程度と時間のバラツキはあります。

ACLS EPを受講した感想(良い点)


普段重症疾患を「一人」で考えて診療・治療する機会はないのでディスカッション形式で考えながら勉強できたのは良かったです。
自分の研修病院ではレクチャー・講義はほとんど行われておらず(少なくとも2年目になってからは一度もなく)、人からレクチャー・講義を久々に受けて良い刺激・勉強となりました。
双方向的な講義・勉強は中々経験できないので良かったです。
中毒なんかは自分の病院には滅多に来ないため勉強するきっかけ・機会を得られたのは良かったと思います。

ACLS EPを受講した感想(気になった点)

このコースを受講しないと得られない知識と言うのは少ないです。今の時代、研修医向けの本やホームページ(スライド)が充実していることもあり勉強はしやすいと思います。このコースで学ぶ内容の多くは他の本にも記載されていることが多いです。
テキスト代(約2万円)と受講料が高く、私の場合病院からいくらか補助が出ましたがそれでも高いです。正直言って、そのテキスト代があれば同じ内容でもっと分かりやすい内容の本が買えるのではないかと思います。
アメリカの学会が作っているコースなため薬などの治療法もアメリカ基準です。コース中にインストラクターがアメリカと日本で異なるところは適宜教えてくれますが。

ACLS EPをおすすめする対象

救急や重症疾患が苦手な人
初期研修では救急や重症疾患を診る機会が少ないのに修了後は診る機会が増える人
本やテキストで勉強するのが苦手な人

初期研修医1年目後半〜2年目、看護師3年目以降やNP目指す人は取得しても損はないと思います。

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