まつお

好きなものは、休日のコーヒー&お菓子、友達とのお喋り。 自分を励ますための文章…

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好きなものは、休日のコーヒー&お菓子、友達とのお喋り。 自分を励ますための文章を書いています。

最近の記事

自己嫌悪モンスターのたおしかた

行きたかった企業から不合格の通知をもらったその日、 転職エージェントのアドバイザーさんから頂いたメールの文面を、今でもずっと、覚えている。 他の企業から頂いていた内定は、すでに辞退してしまっていた。 加えて、それまで働いていた会社は、3月末で退職していた。 4月1日。私は、無職になった。 覚悟はしていたけど、いざ落ちてしまうと、どうしようもなく不安になった。 春風が心地よく吹き、 街角に新入社員が溢れ、 ネットのニュースは新しい年度の始まりを伝えていた。 -----

    • やさしさのありか

      一年前のこと。 私は、いつものように眠い目をこすりながら地下鉄に乗っていた。 深夜の業務に向かうためだ。 冬の夜勤は辛い。 だんだん冷えていく外の空気に急かされるように、人々は家路を急ぐ。 その流れに逆らって、ずんずん駅に向かうのだ。 同じく地下鉄に乗り合わせた他の乗客たちもまた、みな疲労をまとっているように見えた。 "次は、中野坂上、中野坂上、お降りの方は…" これから仕事と言えども、やっぱり、夜だから眠い。 うつらうつらする頭の中で、車内アナウンスがどんどん遠くな

      • 「仕事のテーマ曲」

        「ここは仕事っぽい曲でお願いします」 「はい、仕事っぽいやつですねー、わかりましたー」 …打ち合わせを終えていざ曲を選ぼうとしたとき、あまりにも簡単に終わらせてしまったことに気付いた。 さっぱり曲の方向性が分からなかったのだ。 …「仕事っぽい音楽」って、なんなの…? 「○○っぽい音楽」私は、映像に音楽をつける仕事をしている。 それは、「〇〇っぽさ」という曖昧なイメージを音楽で表す仕事でもある。 「スポーツっぽい曲」と言われれば、 その種目の展開するスピードに合わせてテ

        • キリギリスの親子はあの日、少女の心に一つの種を落としていった

          ギィィィイーーッチョン! ギィィィイーーーーーッチョン!!! 小学2年生の夏。 我が家では朝から晩まで、玄関の虫かごからキリギリスの声が鳴り響いていた。 勉強していても、ご飯を食べていても、弟と取っ組み合いの喧嘩をしていても、 BGMはいつも、キリギリスだった。 …気ままに揺れるスローなテンポ、鼓膜を揺らす尖ったサウンド、暑い夏をさらに熱くする、魂の歌声! 虫かごのメンバーはオスとメス一匹ずつ、 歌うのはオスだけだ。 だけど、メスの方が体が大きくて、強かった。立派

        自己嫌悪モンスターのたおしかた

          読書前感想文「音楽の根源にあるもの」

          去年の春、私は友人と伝統音楽のコンサートを聴きに行った。 ヨーロッパから西アジア、中央アジア〜そして日本を繋いだシルクロードを音で再現する、という趣旨のコンサートだった。 (ご興味ある方はこちら→https://www.lfj.jp/lfj_2019/about/article_02.html) 演奏を聴きながら、私はびっくりした。 こんなにもおもしろい音楽があったのか。 名前も知らない管楽器が描く、砂漠の地平線。 まだ見たこともない、大地の土埃のにおいがした。 草原を駆

          読書前感想文「音楽の根源にあるもの」

          一本の牛乳と松尾さん

          「もうさあ、困っちゃうよね。チューハイ一本だよ?毎日買ってくんだよ?」 店員さんは、目をしょぼしょぼさせながら愚痴る。 「…まとめて買ってけばいいじゃん?」 うんうんと頷くだけの松尾さん。 どうやら、毎日チューハイを1本ずつ買いに来るお客さんのことを怪訝に思っているみたいだ。 たしかにスーパーの店員さんとしては、まとめて箱で買ってくれた方が良いのだろう。 「彼は暇なのかね…?」 …松尾さんは、その「彼」に、大いなるシンパシーを感じていた。 かく言う松尾さんも、カゴに

          一本の牛乳と松尾さん

          えんげき×ジャグリングのコラボを観てきた話

          昨日、友人が衣装を担当している演劇の公演を観に行きました。 公演があっている明日までには書いておきたいと思い、急いで書いています。 "違うジャンルをコラボしたところで、おもしろくなるとは限らないよなあ。 たしかに、一見おもしろそうに見えるけど。" 演劇初心者の割に、かなり失礼なことをかんがえながら会場に向かいました。 『aube版 銀河鉄道の夜』 この劇団の大きな特長は、ジャグリングと演劇のコラボレーション。 気付いたことをメモするために、ノートとボールペンを持って開演

          えんげき×ジャグリングのコラボを観てきた話

          2ヶ月間で何を学んだ?演劇で見つけた「ありたい姿」

          一月とは思えない、ぽかぽか陽気にまったりする今日このごろ。 溜まっていた洗濯物をぜんぶ片付けてその勢いで部屋の隅に溜まっていたホコリもぜんぶ掃除機で吸い取って、とても嬉しい気分! 晴れの日最高だ…! ◇ ずっとnoteに書きたかった、去年参加した天狼院書店の「演じるコミュニケーション・ゼミ」。 なぜ今さら記事を書くのかというと、年末に一年の振り返りをしていたら、この出来事が去年で一番、わたしの今の日常にインパクトを与えた出来事の一つだったから。 参加を決めたとき、達成し

          2ヶ月間で何を学んだ?演劇で見つけた「ありたい姿」

          手帳をめくって三千里

          ♪サーーンタクロースis coming to town! ♪サーーンタクロースis coming to town!! ♪サーンタークロースis... 一年で一番、にぎやかな渋谷のロフトで、松尾さんは真剣に手帳を選んでいる。 「次の年の手帳を買う」 毎年12月、彼女は並々ならぬ気合いを入れて、そのミッションに挑む。 いい手帳を手に入れなければ、次の年が良い年になる気がしないのだ。 来年はもっと、 良い年になりますように。 楽しい予定を、たくさん書けますように。 切実な

          手帳をめくって三千里

          松尾さん嵐をかばう

          「軽量感が否めない」 …嵐が好きな松尾さんは、ネット記事の見出しに少し、いらっとした。 先週月曜日に行われた「天皇陛下のご即位をお祝いする国民祭典」で嵐が歌を披露していた「Ray of Water」。 (演奏のURLはこちら。嵐の歌は8’11”から。→https://www.youtube.com/watch?v=HGSpZibJcYc) 仕事の合間にテレビから流れてきて目に入ってしまったのだが、少し緊張していながらも、音程も外していないし、いつもよりちゃんと歌えている。

          松尾さん嵐をかばう

          松尾さんの日常 2.銭湯にて

          チャポンッ…ぽこぽこぽこ… 銭湯の露天風呂で松尾さんは、今日何度目になるか分からない大きなため息をついた。 なんだか、落ち込むことの多い日だった。 楽しそうに連れ立って歩く人たちを、横目で眺めることしかできなかった。 …私は、前に進んでいるのだろうか。 その鬱々とした気持ちを晴らしたくて、松尾さんは今銭湯にいるのである。 植木の影のスピーカーから、音楽が聴こえていた。 「もっと他にやりようがあるんじゃないの…?」 テレビに音楽を付ける仕事をしている松尾さんは、お店の

          松尾さんの日常 2.銭湯にて

          松尾さんの日常 1. ブログをはじめる

          松尾さんはずっと、ブログが書いてみたいと思っていた。 でも、なかなか書けなかった。 書いてみたいことは次々と頭に浮かぶのだが、書いている間に、自分は何が言いたいのかさっぱり分からなくなってくるのだ。(いつもの私の話のようだ、と松尾さんは思った。) …だがついに今日、彼女は気付いたのだ! 主語を"わたし"じゃなく"松尾さん"にすれば、文章がスラスラ出てくるということに。 おお、なんというひらめき! 近所の銭湯でぼーっとお湯に浸かっていた松尾さんの頭の中は、次第に、文

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