相生まつり

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    21世紀からの岸田賞受賞作を読んでいくエッセイ

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プロフィール

相生まつり 舞台 と 執筆 2001年生まれ。三重県津市出身、2020年上京。 立教大学文学部に在学中。哲学と文芸を学んでいます。 現在は主に劇評・書評・戯曲等の執筆を行っています。なにかしらイベントをするときもあります。ときどき役者もします。 美術館と古本屋さんがすき。知らない街を散歩するのがすき。さめがすき。特技はうどん打ち。 東京芸術祭2021 Young Farmers Forum メンバー 東京芸術祭2022 アシスタントライター 主な出演歴 【第七劇場『

    • 立ち上がるための戯曲/三谷幸喜『オケピ!』(2001)

       ひきこもりながら戯曲を読もうと手にとったひとつめの作品は、まったくもってひきこもるための本ではなかった。  戯曲という文学(?)は、とても不安定なものだとおもう。そもそも、台本となにが違うのかわからない。完成とされるのはいつなのかもわからない。読み上げられてはじめて戯曲なのか?しかし、稽古中、上演のためにすこしでも書き換えられたときにはもう、すでにそれは劇作家の手を離れているだろう。  わたしは、再演を望まれるものが戯曲なのではないかと思っている。たとえ舞台として上演さ

      • R-1ぐらんぷりをみる布団のなかで

         休学している。自分をまもるためにやすんでいたら、めぐるましく周囲が変わりはじめた。友人たちはみな相当に優秀であり、そんななか生きて、それが普通になってしまって、気がついたらぐらぐらしていた。  働く、には向かないとか何度言われたかわからない。根を詰めて何かやるとか、人と協力するとかできた試しがない。そういうくらい予感を抱いて4年を過ごし、いざ目の前にせまると、「それ」が持つ効果やざらつき、がありこのままでは生きていけないとわかるようになる。  そういう夜にはR-1ぐらんぷ

        • それをぬくな

           血液検査がこわい。針もこわいがそれよりも、からだから液体をぬかれる、ということがこわい。想像するだけでたえられないから、ここ10年ほど言い訳を重ね避けて避けてきた。しかし、いよいよ突きつけられる機会があり、大暴れしながら病院へ向かった。こればっかりは、ほめてほしい。  ながれるもののなかから何か抽出されて、それが自分だと呼ばれると気がくるいそうになる。わたしはどこにもいなくて、ただよっているだけなのに、むりやり、「あるぞ!」と叫ばれているようで。  じぶんから身体が「ある

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          3/24,25 深夜喫茶について

          おなじ場所でひとりの夜をすごすための喫茶です。 ぜひ、本や作業道具などお持ちの上お越しください。 Wi-Fi、すこし電源もございます。 時 3/24 20:00〜3/25 06:00 場 〒130-0002 東京都墨田区業平5丁目10-2 【menu】 ○コーヒー ¥500- ○あつやき たまご さんど ¥500- etc. お時間によって、提供するコーヒーの豆が異なります

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          かいたものたち(東京芸術祭ファーム)

          東京芸術祭ファーム東京芸術祭ファーム2022に、アシスタントライターとして参加していました。 いくつか記事を書いたのでまとめました。よろしければご一読ください。 ・東京芸術祭ファーム特集(ステージナタリー)より 長島確氏インタビュー 東京芸術祭ファームが何のために、どのように行われているのか詳しくまとめられた記事。長島さんに直接インタビューしました。 ・プログラム共通レクチャー レポート ミシェル・フーコーの「傾き」、クィア・スタディーズを基礎としたコラボレーションのため

          かいたものたち(東京芸術祭ファーム)

          とける/とかす

           珈琲を仕事として淹れるようになって、数ヶ月が経った。いまではひとりで店に立つことも多い。  並べられた数種類の豆。味わいのいくつかを、説明してはひとつ、選んでもらう。いくら言葉で表しても、そのとき共有できる部分はすくない。ある程度の指標や記号は、同じ世界にいるひとにはよく伝わるものだろう。しかし、口もとも鼻の形も知らないはじめて会った目の前のひとに、のぞむものを渡せるだろうか。  少しの温度の差、抽出の方法で簡単に味わいは変化してしまうようだった。カウンターを隔てたこちら

          とける/とかす

          『no plan in duty』─ ここにいて、たたずむ

          「no plan in duty」は、2015年に初演された「非劇」を原作とした展示パフォーマンスである。2022年5月12日から23日まで開催された。作は齋藤恵汰、補綴は岸井大輔、構成・演出は篠田千明。3人のパフォーマー(荒木知佳、矢野昌幸、稲継美保)と3人の展示アーティスト(いしいこうた、うしお鶏、大和田俊)による。会場は補綴・岸井が主催するPARAであり、本公演は拠点クロージング前の最終公演であった。  PARAは、一軒の古い民家である。砂利が敷かれた庭があり、そこ

          『no plan in duty』─ ここにいて、たたずむ

          久坂葉子『愛撫』とパフォーマンスの皮肉

           久坂葉子は小説、詩、戯曲など数多くの作品を残した作家である。1931年神戸市生まれ。19歳の若さで芥川賞候補。そして21歳の大晦日、特急電車に飛び込み自らの命を絶った。  彼女が自殺する直前に書き上げた作品『幾度目かの最期』では、小説としてではなく、久坂の心情がありのままに描かれている。幾人かの男性の間で揺らぎつつ、相手の感情を取りこぼすまいと思案する姿。自分の愛をどこに所在させるか悩み、自らを「みにくい女」だともこぼしてしまう。  恋によって死を選ぶこと。  たったそ

          久坂葉子『愛撫』とパフォーマンスの皮肉

          20歳の国『ホテル』より「マジック」おぼえがき

           ひだりくすりゆびへの羨望、について考えている。結婚がどう、とかじゃなく、彼らはみんな確かなものを抱いているようにみえて。名前がさほど意味をなさないことなんか分かってはいるのに、すがりついてしまう。  ホテルの一室を模した舞台。ベッド上にバスローブ姿の男女。初対面らしい。関係性を象徴するように、ふたりのくすりゆびには指輪があった。  情事のあとのよう。猥談が繰り広げられ、次第にそれぞれの過去、学生時代のエピソードへと移る。互いのことはほとんど知らないまま、それでも感情のど

          20歳の国『ホテル』より「マジック」おぼえがき

          作品としての「作者」への愛【のあんじーまつり『恥』上演に際して】

           「恥」は、1942年1月婦人画報に発表された短編小説である。全編を通じ書簡の形式をとり、その中で書き手である「和子」はその友人「菊子」に向けて大恥をかいた顛末を語る。精神的に安定し明るく透明感のある作品群が目立つ、太宰中期の作品である。 太宰治『恥』青空文庫より  和子は菊子に対し、小説家である戸田とのエピソードを語る。彼女は作者と作品を混同し、新作小説の主人公のモデルは自分であると思い込む。戸田へ手紙を出し、自宅へと訪問した挙句、最終的には自分の勘違いをつきつけられ

          作品としての「作者」への愛【のあんじーまつり『恥』上演に際して】

          つかる/ふれる

           少年に会いたいときがある。家から数秒歩けばたどり着く。日が落ちるぐらいになると、その銭湯に暖簾がかかる。マフラーをぐるぐる巻いて、財布と着替えを持って、サンダルを鳴らして行く。  いつも、三十代ぐらいの夫婦のどちらかが出迎えてくれる。家族経営のよう。近所の人、常連との会話も聞こえる。  湯船からあがり服を着て、入り口付近に戻った。ソファに座ってひとり、瓶の牛乳に口をつける。以前、そうしていたときに出会ったのが、小学校に入るか入らないかぐらいの、少年だった。この銭湯の一人息子

          つかる/ふれる

          基調講演レポ(劇場は可能か シーズン0)

          企画司会:岸井大輔 横山義志 優れた活動をしている多くの劇場が存続の危機に晒されている中、今日も新しい劇場が開く。しかしそもそも日本で劇場をやるというのはどういうことか? コロナが続きオリンピック終了したこのタイミングで考え直してみたい。 まずは、インタビュー8本と2回の対話の場。 インタビュイー:石神夏希、木ノ下裕一、佐藤信、白神ももこ、長島確、橋本裕介、横堀ふみ、吉本有輝子。 ゲストインタビュアー:和田ながら (敬称略)  会場はPARA、住宅地にある古民家であ

          基調講演レポ(劇場は可能か シーズン0)

          講義のレポート(太宰について)

          桜桃忌直前に提出していた哲学系講義のレポート(約2000字)です。エッセイめいた形が許されていたので、文章が多少くだけています。 稽古と稽古の合間に全力で書き上げたものであり、誤字や表現の重複、言い回しの間違い等見られますが、勢いがあっておもしろかったのでそのまま載せます。 すぐ恥ずかしくなってこの記事は消すと思います。 テーマ:これまでの人生において最も自己の「現実認識を揺さぶった経験」について  見えている世界はただそのような現象なのではなく、自分は世界に存在してい

          講義のレポート(太宰について)

          中園孔二 個展『すべての面がこっちを向いている』をみる

           ANB tokyoにて開催されている個展。YO-KINGさんのレヴューで知り、足を運んだ。 中園孔二は1989年神奈川生まれ。2015年、25歳という若さで夭逝するまでに、絵画を中心に彫刻、インスタレーションも含め700点以上にわたる作品を制作しています。生前、東京オペラシティアートギャラリーグループ展「絵画の在りか」に出品、逝去後も、埼玉県立近代美術館でのグループ展(2016年)のほか、パリのポンピドーセンター・メス(2017年)や、モスクワビエンナーレ(2017年)、

          中園孔二 個展『すべての面がこっちを向いている』をみる