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タイパの追求はドーピングか_読書のススメ

量子革命、読了。

文字情報なら物理学でも哲学でも地下鉄の中刷広告でもなんでも読んでしまう人間なのだけれど、久しぶりに物理学関係の本を堪能した。

一言でいってとても面白い本で、この本とサイモン・シンの「宇宙創成」を読めば、難しい数式なしで20世紀初頭のビックバン宇宙論から量子力学の世界に浸ることができる。

数式を理解せずに宇宙論だとか量子力学だとかの本を読む時点でまとめサイトと同じレベルの要約版なんじゃないかという気もするけれど、「量子革命」で500ページ、「宇宙創成」で700ページ。それなりの時間を求められる。


量子革命を読み終わった後に妻に、本の要約を説明したら、「今までうまく理解できなかったことがよくわかった。ありがとう」と言われた。

私は読んだ本の内容をほとんど忘れてしまう。逆に妻は、本でも自分の経験でも言われたことでも、ほとんどすべてのことを覚えている。私がほとんど忘れてしまう本の内容の一部でも彼女が覚えていてくれるなら、きっとそれなりに意味があったのだと思う。



最近はまとめサイトとか、倍速視聴とか、タイムパフォーマンスをとにかく重視する風潮があるようだけれど、そんな風に情報を収集する習慣が一般的だと思う人たちが、読むのに何日もかかる本を読むことができるのか、心配になる。

読む価値のある本は、何週間でも何か月でもかけて読む価値がある。

たぶん、「量子革命」も「宇宙創成」もまとめサイトとか、倍速視聴しても全く理解できない。そして、世界はまとめサイトや倍速視聴では理解できないことがほとんどだ。だから、長い時間をかけて1冊の本を読むことになる。

一冊の本に書かれていることを何か月もかけて理解しようとする。その行為はタイパ的には無駄かもしれないけど、私はアラフィフになっても何百ページでも何千ページでも読み続けられる体力(読書力)を維持するほうがずっと大切だと思っている。タイパを重視して少ない時間で多くの情報を得ようとする若い人達は、私にはドーピングをして60本のホームランを打つメジャーリーガーの姿に重なる。

地道に愚直に、何十年も本を読む人間。タイパは悪いかもしれないけど、20年後にドーピングでボロボロの廃人になるより、まともに本を読める人間になったほうがいいと、私は真剣に思うのだけれど。


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