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設計課題の取り組み方

はじめに

自身の設計事務所を立ち上げるとほぼ同時に設計演習のTAや非常勤講師を拝命し、これまで約7年間継続的にエスキスやクリティークを行ってきたが、「そもそも課題にどう取り組んだらいいのかわからない」という様相の学生を数多く目にしてきた。まぁ無理もない。思えば自分も母校の建築学科に進学して初年度(2年生)はまったく手の動かし方がわからなかった。しかし3年生になってから、プログラムから空間をつくるOMAのような建築家たちの作品集を読み込むことで、写真ばかりを追っていた目が、つくられ方や仕組みの記述へと向けられるようになり、以来評価の俎上に載る提案ができるようになった。

そんなことを思い出し、「自分が考えていること、いまエスキスで話していることが、案をつくるうえでどのフェイズ(段階)にあるのか」について意識させることを促すようになった。続いてその他の各フェイズを埋めていって流れをつくれば、“説明可能な案”が生まれる。逆に言えば部分的にフェイズの抜け落ちた案は“説明不可能な案”であり、評価側はもとより制作者自身も理解の及ばないものが建ち現れてしまう。
想像が及ばないものは見てみたい。しかし理解の及ばないものは、想像“に”及ばない。

ここで書かれていることを意識して取り組めば、少なくとも80点は取れる。僕は、僕だけでなく他の先生も観察すると、採点する側は80点までは案の良し悪しではなく、「0.課題を読み込み、1.コンセプトを立ち上げ、2.方法を提示して、3.かたちにできているか」という観点で評価している。その先は独自性であったり、美しさであったり、社会的意義であったり、評価側の人間性や思想によって振れ幅を持つ点数が加算される。つまり80点以上は「人間性と人間性のぶつかり合い」というステージになる。僕は学生たちとそのステージで話し合いたい。マジで。だからそのための技術をここで伝えたい。

改めて、課題を通して「評価を得る」ことが目的かどうかはまた別の話である。ただ、「評価を得る」ということは「話が通じる」ということである。ここでは「話が通じるための手段」を書いていると思っていただきたい。80点のその先で話し合うために。

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