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#017: アンケート設計では「もてたいですか?」とか「痩せたいですか?」みたいな質問はやめよう

プロダクトを開発しようとした時に、まず最初にすべきことは「誰にどういった価値を提供したいのかを明確にする」ということを以前の記事で書いたことがあります。

ただそう言っても、「誰に」「どういった価値を」提供するのかを決めるのは簡単ではありません。


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シリコンバレー方式は「観察する」

シリコンバレーではとりあえずプロダクトマネージャーがもつ肌感覚を基本にしたり、あるいは小規模なインタビューからとりあえず最初のプロトタイプを作り、そのプロトタイプに対するフィードバックをもとに製品を磨き上げていくという方法がよく取られます。

この方法のよいところは、想定するユーザーの方法を見ながらプロダクトを改良することが出来るということです。「完成品ではない」という意味で使われるβ版という言葉はかなり一般的になってきましたが、β版ともよべない状態、例えばプロトタイプと呼ばれるレベルのものでも反応を見ることができます。

一方で欠点の一つとしてよくあげられるのが、反応が「本当に典型的な反応である」ということが田ぽされていないということです。検討段階においてはターゲットとなるような人を集めてきているので、結果として「事前バイアスがかかった人たち」のみの反応を見てしまっている可能性があるということです。

もう一つ、実際に反応を見た人でないと、ユーザーのダイレクトな反応を理解することが難しいということも欠点としてあげられることが多いです。日本のように資料の作成 → 上司への報告 → 合意/承認、といったプロセスを踏むような場合、この生の反応を見ることができないというのは、評価をしづらいものとするでしょう。


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アンケート調査の力

企業の調査で消費者理解のためによく利用されるのはアンケートです。調査設計や実施をしてくれる専門業者もたくさんいますので、予算さえあれば誰でも実施できるところが魅力です。

企業がアンケート調査を好む理由の一つは、データを定量的に取り扱うことが可能だからです。ユーザーの観察を行うという方法では、どうしても物理的に対象の数が限られます。アンケート調査であれば、統計的に十分な量を簡単に集めることが出来ます。

二つ目の理由は、アンケート調査は客観的なデータを取得できる、と信じられているからです。観察はどうしても対象者と調査実施者のやり取りが発生することがあるので、バイアスが発生してしまう可能性があります。
また、単純に「あいつがやった調査は信用できない」という意見が出ることもあるでしょう。

3つ目の理由としては、やや後ろ向きな理由ですが、誰がやってもそれなりの結果が出るということが挙げられます。対象ユーザーを正確に描き、ユーザーの反応を観察し、意見を引き出すというのは専門的なスキルが必要となります。
アンケート調査であれば、サービスを提供している会社もたくさんありますし、そういったスキルがない企業でも簡単に実施することができます(それでいい結果が出るかどうかは別の話ですが・・・)


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誰もが反対できない内容をアンケートで聞くのはやめよう

うまく使えば有効なアンケートですが、世の中にあるアンケートを見ていると、意思決定にはあまり良いとは言えない使い方をされていることも多いです。

調査マーケティングの参考書を読むと、例えば「母集団の偏りの考慮」とか「誘導するような質問は行わない」といった例が書かれていますが、こういったことを考慮しきって調査を設計するのはかなり難しいでしょう。

今回お伝えしたいのは、そういった専門的な内容ではなく、気をつければ誰でもすぐに実現することが可能な内容です。
それは「誰もが反対できないような内容をアンケートの回答項目に入れるのはやめよう」ということです。

例えば、健康に関する質問。
「健康が大切であると答えた人はXX%!」みたいなデータをよく見るのですが、落ち着いて考えれば、意識して「健康は大切ではない」と答える人というのはあまり多くないということにすぐに気がつくでしょう。

あるいは「他人によく見られたいという人はYY%!」みたいなデータも同じです。普通に考えれば、人からよく見られるのを嫌う人というのは少数派でしょうから、これもあまり意味があるデータとはいえません。


上にあげたのは流石に当たり前だろう・・・と想う方も多いでしょうが、例えば金融機関が作った資料を見ると、「お金の知識を知りたいという人はXX%(複数回答可)」みたいなデータは普通にあります。

これも複数回答可能な場合には、わざわざ「お金は関係ない」という人は少数でしょうから、あまり意味のあるデータとは言えないですね。でも、結構普通に意思決定のデータとして使われていたりします。


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重要なのは順位とコスト負担の意思

このように、誰もが賛成しがちな項目を含んだアンケートというのを意思決定に使う時には注意が必要です。

例えば、複数回答を許す場合には、優先順位をつけてもらうというのが一つの方法となります。上位3つを選んでください、とか、最も重要なものを選んでくださいという質問を追加することで、ユーザーニーズの強度を理解することが出来ます。

もう一つには、いくらまでなら払うことが出来るか、と金銭に換算する方法があります。この「払っても良い金額」と「実際に払ってくれる金額」というのは差があるものですが、それでも少なくとも、どの程度のコスト感覚を持っているかを把握することができます。

誰も反対しないような意見には何もインサイト(洞察、新たな発見)がないということは、ユーザー調査の基本としておさえておくべきポイントです。

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