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People Driven Transformation 人が起点の、社会の変え方

今年は多くを経験した年だった。

1月にニューヨーク、4月にロンドンとパリ、9月にはアムステルダムに出張の機会があり、小売や食品、アパレル業界などの「すでに始まっている変革」を目にした。

日本に戻り、気候変動緩和にフォーカスした全社目標(OKR)を策定・公表。6月には主に小売業界のカーボンニュートラルについて調査したホワイトペーパーを公開した。

そんなことをしていると色々と声をかけてもらえるようになり、大小様々なイベントに登壇させてもらった。6月にはClimate Tech Day 2023(東京大学)、8月にはGXリーグ(経済産業省)、12月にはFarmnote Summit 2023(ファームノート)があった。

ハルモニアとしては2月にローンチした「Harmoniaロスフリー」をきっかけにし、スーパーマーケットの食品ロス問題に向き合う毎日となった。

ひとつひとつの機会が自分のなかに新たな気付きと問いをもたらし、それを1つのキーワードに束ねて整理したのが、10月に公開した『行動変容 自分と世界を変える技術』というスライドだ。1ヶ月で1万人以上の方に読まれ、そこから勉強会やワークショップへと発展。現在進行中のムーブメントになっている。

サステナビリティやGreen Transformationといったテーマに向き合い始めてまだ日が浅い自分だが、今年、文字通り”産官学”の皆さんと議論を重ね、「変えたい」「何とかしたい」という気持ちのある方は多いことを知った。

一方で、とかくこの問題は「入り組んでいて、解きづらい」ということも知る。

部分や一過性の取り組みでは解決できず、システム全体が「せーの」で変わらないといけないが、三すくみの関係で国からも、企業からも、個人からも動きづらい。

国の立場からは、EUほどの強い規制は出しづらく、アメリカほどの強いメッセージや資金投下もやりづらい。
企業の立場からは、ビジネスを大きく作り変えるような余力はなく、善いことをしても消費者が応えてくれる確信がない。

まるで凪いでしまったような日本で、本当に大きな変化を起こすことはできるのだろうか。

それとも、いつまでも変化を先送りにし、できる限り現状を延命した結果、誰も望まない残念な未来へと向かっていくしかないのだろうか。

自分は今年、ここを打破するかもしれない可能性を感じ始めた。

ひとつは、人々の行動やマインドセットは、本人が望むなら変わり得るということ。

もうひとつは、意欲のある人々が方法論を身につければ、変化をデザインしていけるということ。

この国や各産業に必要なトランスフォーメーションを、国や企業主導だけでなく、人々の変化からドライブしていく。言うなれば、People Driven Transformationだ。

人々のライフスタイルが変われば、企業も動きやすくなり、国も動かされていく。食品を買うときに持続可能な生産や流通方式に商品を重視する人が増えれば、企業も積極的にMSC認証の魚や代替肉などに投資していける。ガソリン車からEVや自転車、カーシェア等に移行する人が増えれば、国もエネルギー政策を前に進めていける。

People Driven Transformationを起こしていくための要点は3つあると思う。

まずは、社会課題や変革を、難易度が高すぎて思考停止するパニックゾーンから、何とか解けるかもしれないと感じるフローゾーン(ラーニングゾーンとも)へと移すこと。

行動変容のワークショップでも取り組んだが、課題構造の解像度を上げて、ひとつひとつの取り扱える要素に整理していく。その際にはシステム思考や、トランジションセオリーが役にたつ。

次に必要なのが、心が折れないための仲間。トライブ感と学び合いによる相互サポートだ。これも、有志たちによって様々なコミュニティ、勉強会、メディアなどが立ち上がりつつある。
自分が言い出しっぺの行動変容プロジェクトのコミュニティにも、非常に学習と挑戦意欲の高い仲間が集まってくれている。(そのおかげで自分も走り続けていける)

最後に重要なのが、アジェンダ設定だ。今年無理なく実施できて合意形成しやすいことを考えるフォーキャストの議論ではない。食品、エネルギー、交通、都市などのシステムを捉え、持続可能な(形容詞はサーキュラーでもリジェネラティブでもいい)新しいシステムを共に描くこと。そして、現状からそこへと至るための実現可能なトランジションに論点を向けていくことがいま最も足りていないと思う。

2024年は「立ちすくむ個人」が「立ち上がり、学び合い、行動する個人」に変わっていける年にできる。今年はそんなPeople Driven Transformationの兆しが感じられ、ひとつひとつのドットが繋がって見えた一年になった。

未来は僕らの手の中。

今年お会いした皆さん、ブログなどを読んで応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました。

来年も、楽しくハードに、そして平和な年にしていきましょう。

今回の思考に合わせて、簡単なスライドも作ってみています。併せてどうぞ。


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