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ブライダルチェック-後編

血液検査をして1週間後、私は検査結果を聞くために再び病院へ行った。検査結果を聞くためだけとはいえ、受付をしてすぐに呼ばれることはなく、30分ほど待合室で待った後、診察室へ呼び出された。

この日、診察室には威圧的な医者に加え、なんと3人の女性スタッフが同席していた。医者1人でも緊張してしまうのに、3人も女性を従えて、私にどんな圧をかけようというのだろう。女性陣の方はあまり見ないようにし、目の前の医者1人に集中しようとした。

医者は「あなた、タホウノウセイランソウショウコウグンだね」と、何やら画像と資料を取り出しながら説明を始めた。初めて聞いた"タホウノウセイ”なんとやら、というのは漢字で"多嚢胞性卵巣症候群"と書かれ、英語を略して”PCOS(ピーコス)”とも呼ばれると教えてもらった。

「同世代に比べて卵子の数が多くあり、画像でもネックレスサインと呼ばれる卵子がいくつか連なったものが見えているとPCOSの可能性が高い」のだそうだ。卵子がいっぱいあるっていいじゃないか、と素人考えに思ったが、排卵障害が起こっている可能性があり、排卵せずに生理が起きていることもあるそうだ。

つまり、私は卵子を蓄えているばかりで外に出せていない、ということである。画像には、卵子が7,8個連なったものが写されており、言い逃れのできない証拠を突きつけられているような感覚にもなった。おまけにAMHと表記される抗ミュラー管ホルモンの値は、同年齢の平均値の3倍以上の値であった。

先週の内診では異常なしと言われ、血液検査でもきっと問題ないさとタカをくくっていたところでこの結果である。私はショックを受け、ただでさえ聞き取りにくい医者の声がさらに遠くなる気がした。何を言っているのかもよくわからないので"はぁ"とか"へぇ"とか適当に気のない相槌をしていたからか、医者は突然励ましだした。

「常に排卵障害が起こっていると決まったわけじゃない」とか「ただね、PCOSの人は卵子は沢山もっているから、排卵を促す薬を使ってあげることで自然妊娠がうまくいくこともありますよ」とか。声や姿勢は変わらず威圧的だが、ショックを和らげてくれることを言ってくれた。

最終的には「PCOSは病気ってわけじゃないから、夫婦生活スタートして半年から1年で妊娠しないときに次のステップとしてどうやっていくのか、対処方法を考えましょう」と諭してもらい、病院を出る頃にはしっかり気を取り戻していた。

私は医者から聞いたことをそっくり夫に伝えた。夫も、子どもができないわけじゃないと知って安堵したようだ。

今回のブライダルチェックの成果は私自身の生理機能を知れたことではなく、それも含めて2人でどうしていこうか夫と話し合えたことだった。”あぁ、この人とだったらきっと大丈夫"と、一番確信できた瞬間だったように思う。

この検査結果の半年後、私は入籍するのだが夫婦生活が始まって子どもができるのはまだ先の話。

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