マツモトユリ

読書感想を残したいと思い、note始めました。 読むジャンルは様々ですが、振り返ってみ…

マツモトユリ

読書感想を残したいと思い、note始めました。 読むジャンルは様々ですが、振り返ってみると何かしら共通のものが見えてくるかなと思っています。 他には、趣味の美術館や博物館にいった時の感想なども投稿するかもしれません。1ヶ月に一回以上の投稿が目標です。

最近の記事

人類の起源の最新研究

日進月歩で進んでいる学問分野の一つが、進化人類学ではないでしょうか。 そこで最新の研究成果を知りたいと思い、国立科学博物館館長の篠田謙一著『人類の起源』(中公新書)を手に取りました。 2022年2月に初版が出版されましたが、私が読んだのは第6刷、出版の一年後くらいでしょうか。すぐに通読したものの、たくさん出てくる人類名や地名に圧倒され、ほぼ流し読みでした。それではいかんと、意を決して再読しました。 十分に理解できたとは言えませんが、備忘録として感想を残しておきます。 人類史

    • 和歌と暮らすってどんなかな

      11月のNHK『100分de名著』は古今和歌集でした。研究者の方のお話を聞くと、深く味わえるのがいいですね。 さて、以前読んだ『古今和歌集の創造力』が、その題名の通り古今和歌集にフォーカスしていたのに対して『和歌と暮らした日本人』(浅田徹著)は、そこからグッと視点を引いて、万葉集の時代から江戸時代まで「和歌」という文化の全体像を、俯瞰することができます。 和歌って最初は歌だったのか! この本を読み、恥ずかしながら初めて思い至ったのが、平安時代より前、和歌は声に出して贈り

      • 映画「福田村事件」 感想

        映画を観てきました。 観たい気持ちと、観なきゃいけないなあという気持ちと、しんどいなあという気持ちの間で揺れましたが、えいやっと、仕事終わりに行ってきました。 テーマがテーマなので、劇映画とは言いながらドキュメンタリー色が強い作品かなあと想像していましたが、まったくそんなことはなく、どんどん引き込まれていきました。 これは、役者さんたちが素晴らしかったことも大きいだろうなあ。特に、村の外れものの間男を演じた東出昌大はすごくよかった。クズさ加減が絶妙というか。はっきり言って、

        • テート美術館展

          国立新美術館で開催中のテート美術館展に、閉幕間近に駆け込みで行ってきました。 魅力は、引用の通り、ターナーから現代美術まで、一気に観ることができる点ですね。ちょっと不思議な鑑賞体験でした。 気に入った作品のうち何点か、ご紹介したいと思います。 ここは押さえておこうよということで、まずはターナー。 すべてがあいまいに。でも絵の前にずっといたくなるような… この展覧会のキービジュアルにもなっている作品です。穏やかな波、差し込む光。近くで観ると筆使いがよくわかって面白い。 ラ

        人類の起源の最新研究

          ナチスは「良いこと」もしたのか 感想

          話題の岩波ブックレットを読んだ。一言でいうと勉強になった。 ナチスとは何だったのかを大掴みで理解することができるし、巻末にブックガイドが付いているので、もっと深めたい人にとっても、価値ある一冊だと思う。 ナチスとは何か…を考えるきっかけは高校生の頃、もう何十年も前のことだが、「ナチスって社会主義でしょ」と、同級生に言われたことがある。どんな会話をしていたかは、すっかり忘れてしまったのだけど、えっ…と思っただけで、何の反応もできなかった。ただこの言葉だけが宙に浮いたまま、折に

          ナチスは「良いこと」もしたのか 感想

          人の心を種として よろづの言の葉とぞなれりける

          やまと歌は 人の心を種として よろづの言の葉とぞなれりける      紀貫之 『古今和歌集』仮名序より 古今和歌集に興味を持ったものの… 「言葉」ということばは、不思議な言葉だな。 どうして「言」に「葉」がついているんだろうか。 調べていくうちに冒頭の紀貫之の文に出会いました。仮名序とは、今風にいうと前書きと言ったところでしょうか。日本語の柔らかさ、心象を表す豊かさを言い表しているように感じられ、『古今和歌集』への興味がにわかに湧いてきました。 とは言っても『古今

          人の心を種として よろづの言の葉とぞなれりける

          ヒロシマのまちを歩く

          仕事で広島に行ったときに、市内をあちこち歩いてみました。 アレフレド・ジャー展第11回ヒロシマ賞を受賞したアルフレド・ジャー展を観に、広島市現代美術館へ。 今年3月に亡くなった大江健三郎氏へのオマージュとして、英語版と日本語版の両方を展示することになったそうです。 「生ましめんかな」は、広島で被爆し、生涯を通じて反核を訴えた詩人、栗原貞子の詩の題名です。(解説より) 白と黒、光と暗がり、静謐な空間に身を浸し、ゆっくり鑑賞することができました。 アレフレド・ジャー展は、

          ヒロシマのまちを歩く

          #Barbenheimerのネットミームに思うこと

          #Barbenheimer というハッシュタグが、「バービー」と「オッペンハイマー」の映画同時公開を機に生まれ、話題になっているのを知った。 原爆投下をネタにした画像=ネットミームに対し、映画「バービー」公式アカウントが「思い出に残る夏になる」と返信。これに対して様々な批判や意見が、旧Twitter上でも出されているが、私も自分の考えをまとめておきたいと思い、noteを書きます。 きっかけは、米連邦最高裁が人種考慮は違憲と判断したという報道に対して、家族とこの判決をどう考え

          #Barbenheimerのネットミームに思うこと

          星降る中部高地の縄文世界へ

          山梨県立考古博物館の開館40年記念特別展「星降る中部高地の縄文世界ー黒曜石ネットワークによる物流と人流ー」に行ってきました。 渋滞で高速バスが1時間近く遅れたため、まずは博物館のすぐ近くのカフェで腹ごしらえ。 満足したところで…さあ!「星降る中部高地の縄文世界」へ! この特別展は、八ヶ岳で採掘される黒曜石の物流と人流を背景に、中部高地の精神世界が広く共有されたものであったことを示す、豊富な展示品が見どころです。 今回初めてこちらの博物館を訪れましたが、派手さのない堅実な博物

          星降る中部高地の縄文世界へ

          言語の本質に挑む

          『言語の本質』(今井むつみ、秋田喜美著)がおもしろい! 著者のお一人である今井むつみさんのお話を、YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」でお聞きしました。 今まで感じたことや考えてきたこと、疑問に思ってきたことを、解明する道が見つかるのではと興奮してしまう内容で、もっと勉強したいと本書を手に取りました。 そんな私の興奮を、少しでもお伝えできればと思います。 オノマトペは、超ホットな研究テーマ 1990年代前半、言語は身体から切り離された抽象的な記号であり、論理的に

          言語の本質に挑む

          土偶を読むを読むを読む

          『土偶を読む』(竹倉史人著)が話題です。「イコノロジー」の観点から、土偶の正体は植物をかたどったものとしたこの本は、各界の著名人が絶賛、学術的な賞も受賞し、多くの読者を獲得しました。ところが、考古学界ではほとんど評価されていないという、ややこしいことになっているそうです。 今回取り上げた『土偶を読むを読む』は、『土偶を読む』を批判的に検証したものですが、単なる検証にとどまらず、縄文研究の今を知る上でも、とても勉強になりました。 そこで、縄文に関して「知っているようでほとん

          土偶を読むを読むを読む

          人類文明発祥の地ー古代オリエントに想いを馳せる

          古代オリエント博物館に行ってきました。サンシャインシティ文化会館ビル7階のエレベーターをおりるとすぐ、博物館の入り口です。池袋は人で溢れていましたが、こちらの博物館の人口密度はそれほど高くなく、じっくりと鑑賞することができました。 今春、山梨県立博物館で開催された企画展「印章」に、古代オリエント博物館の収蔵品が展示してあり、面白そうな博物館だなあ、そのうち行ってみたいなあ、と気になっていたのでした。 オリエントとはラテン語で、「日の出」「東方の地」という意味博物館のリーフレ

          人類文明発祥の地ー古代オリエントに想いを馳せる

          図書館の魔女に導かれ

          note始めました。 一本目の投稿に、高田大介さんの『図書館の魔女』の感想を選びました。なぜなら、この本を読んだことをきっかけに、ブログの開設を思いたったからです。 『図書館の魔女』は、「高い塔」と呼ばれる史上最古の図書館を舞台に、鍛冶の里から来た炭焼きの少年と図書館の魔女と恐れられる少女の出会いの物語であり、政争あり権謀術数ありの世界を、領土を奪い合う国盗りではなく政治と外交で切り開いていくファンタジー小説です。 と言っても、図書館の魔女と呼ばれる少女は、ファンタジーの

          図書館の魔女に導かれ