見出し画像

猿から紐解く心理学シリーズ2オラウータンと耐え難い孤独!!

猿から紐解く心理学シリーズ1ゴリラの漢らしさと人間のザコさ
前回、猿から紐解く心理学シリーズ1では、ゴリラの生態を詳しく解説しつつ、人間には原始本能とも呼ぶべき持って産まれた性格がある事を考察も交えてお伝えしました。

猿から紐解く心理学シリーズ1ゴリラの漢らしさと人間のザコさ|まつりちゃん (note.com)

今回は、人間からは一番遠いとされるヒト科の猿である「オラウータン」の生態を詳しく解説をしながら、オラウータンという種族から、なぜ進化の過程で分岐をしてしまったのか?という理由を考察してゆきます。


オラウータンの特徴

オラウータンは、我々人類の祖先ではありますが、ヒト科の猿としては約1400万年前と推定され一番はじめに分岐をした猿です。

私達人間はヒト科の猿が進化をしたものですが、この分岐から一番遠いという事は、すなわち、このオラウータンの特徴が一番人間とは特性が合わないという事でもあります。

では、そんなオラウータンの生態を知る事で、オラウータンから分岐した事で得た原始本能の世界を覗いてみましょう。

オラウータンは現在、インドネシア(スマトラ島北部、ボルネオ島)、マレーシア(ボルネオ島)にしか生息していません。

別名を森の哲学者や現地語でも森の住人と呼ばれています。
中国語では古くより猩々(ショウジョウ)とも呼ばれているとおり、元々はアジア圏(ユーラシア大陸の熱帯雨林)にも生息していましたが、人間による乱獲により自然に生息しているオラウータンは今ではアジアの島々にわずかに生息しているのみとなってしまいました。

その個体数の少なさと、生態が孤独過ぎるという特徴から他のヒト科の猿に比べ研究が進んでいないというのも大きな特徴です。
そもそも、群れを作らず男女は個別で生活をしているためフィールド調査があまりにも捗らない事も理由のひとつです。

実の生る木にたまたま集まるような事もありますが、そんな事は本当に稀です。

日本でも動物園などで飼育されているため、実際にその姿を見る事は出来ますが、野生下でのその生態は謎に包まれまくっています。

極め付けは、オラウータンの研究者にさえ
「こんなに孤独な動物があって良いのか」
「あまりにも孤独だ」
「食べて糞をしている以外、毎日何もしていない!」

など、オラウータンに興味があって研究をしている人にさえオラウータンの悪口を言われる程にソロプレイを極めし動物です。

孤高のソロプレイヤーでもあるオラウータンですが、なぜここまで孤独を極めているのかと言うと、それは食料にあるようです。
ヒト科の猿は、基本的に雑食ですがどちらかと言うと草食に近い傾向を示しています。

元々我々ヒト族は雑食ではありますが、どちらかと言えば草食の傾向が強いです。
ゴリラもほとんど草やフルーツと少量の虫や極小型の動物を少量食べる位で、ほとんど草食です。
※ゴリラは巨大な体を維持するために毎日大量の草木(成人で約30㎏)を食べる必要があり、その強靭な顎の筋肉を支えるために頭の上が筋肉で膨らんでいるのです。
とても硬い草木を咀嚼し続ける必要があるため、一日のうちの大半を食事に費やしています。
チンパンジーは小動物や共食いや小規模な狩りをしますが、それでも食事の割合としてはやはり草木が中心です。
他の猿もほとんど同じように草食に偏った食性を示しています。

猿から紐解く心理学シリーズ1ゴリラの漢らしさと人間のザコさ|まつりちゃん (note.com)

実はこのオラウータン、一番食料が豊富であろう森の木の上で主に暮らしています。かなり食料の豊富な熱帯雨林の森で、主にイチジク属・ドリアン・パンノキ・マンゴスチン・ライチ・ランブータンなどの果実を食べますが、植物の芽、葉、樹皮、昆虫、鳥類の卵、小型哺乳類なども食べています。
特に果実に至っては、人間が食べても美味しいものばかりです。

果実を中心とした草食であり、小さな昆虫や哺乳類なども取れれば食べているといったところでしょうか。

しかし、オラウータンは

オスで60-90㎏ メスで40-50㎏
身長オス97㎝ メス78㎝

と、身長こそ低いものの、我々人間の男女とあまり変わらない体重を有しており、森の中では比較的大きくて強い部類の生き物です。

その体を維持するためには、結構な量の食事が必要ですが、豊かな森にいるため美味しく栄養価の高い果実ばかりをメインに食べています。
果実はなる総量も決まっていますし、いくら豊かな熱帯雨林のジャングルとはいえ、どこにでも果実がなっている訳ではありません。

そのため、1頭のオラウータンが食事を取る為には、かなり広範囲の縄張りが必要になってくるのです。
争いや食料が枯渇して不足する事がないように、オラウータン達は分散し完全なるソロ生活を送っているという訳です。

そんなオラウータンにも少しだけ他者と関わっている時期があります。
それは、子育て中と交尾の時……のみです。

オラウータンの子育て オラウータンの赤ちゃんはなぜ人間の赤ちゃんのように泣かないのか

妊娠期間は260 - 270日。出産間隔は通常6年で、短くても3年。食物条件の良い環境では出産間隔が長くなる。授乳期間は3年。幼獣は母親と4 - 5年は一緒に生活するが生後3 - 7年で母親から離れて行動し始めるようになり、生後5 - 10年で思春期を迎えたり母親が次の幼獣を産むことがきっかけで独立することが多い。メスは生後12年で初産を迎える

オランウータン - Wikipedia

初産を迎える時期は人間と比較して少々早いとは言えますが、妊娠期間や授乳期間も人間とオラウータンのメスの特徴はさほど変わりがありません。
また人間と同じように発情期を隠しているというのは、オラウータンの大きな特徴のひとつです。

30歳~飼育下では最長58歳までの寿命の中で10年間位の間が唯一母親と一緒に生活をする期間であり、それ以外はソロプレイであるという人間から見れば非常にストイックな生活をしています。

オラウータンの育児は他の猿と比べた場合、育児期間が長く動物では最長の長さですが、ベットの作り方や食べられる果実と生っている時期や場所などを教えており、将来一人で生活をするための知恵を主に教えています。

オラウータンの孤児たちを保護している保護センターでも同様に、職員たちはオラウータンの子供達に果実の取り方や食べ方、そしてシロアリの食べ方などを実践形式で教えているそうです。

また、母親同士が森の中で偶然出会うと子供同士を遊ばせる行動が確認されています。
まるでママ友の様ですが、子供達が遊び終わるまで辛抱強く待ち、遊びが終われば解散します。
オラウータンにとって子供時代が唯一の他者と触れ合う時間です。
何度も繰り返しますが、オラウータンは子育ても偶然会ったママ友との交流を除いてほぼ完全ソロプレイです。

メスは妊娠してから、ほぼ付きっ切りで子供を育て上げ、また妊娠をして子育てをするという生活をしますが、人間であれば気が狂うであろう状態にも関わらず、オラウータンのメスは大丈夫なようです。

オラウータンの子供はとてつもなく大人しく、騒いだりワガママを言うような事がありません。とにかく愛らしいばかりで無害です。
どの程度に育てやすい子供かと言うと、フィールドワークをしている研究者のまだ子供を産んでいない女性が
「これなら私にも育てられるかも!」
という感想を持つ程です。

おそらく、お子さんをお持ちの方はご存じでしょう。

人間の育児はそんな甘いモンじゃねぇって事を。

私もオラウータンのようにひとりで子供を育てていますが、年頃の女性にフィールドワークで観察されていたら、子育てなんてしたくないと思われる程度には疲弊しています。
この文章ですら、子供が寝静まった後睡眠時間を削り制作意欲を満たすために趣味として書いている訳ですから……。

少し前にオラウータン孤児を保護する施設のドキュメンタリーを偶然テレビで見ていましたが、確かに育てるという点において、オラウータンの子供はとても育てやすそうでした。

子供だけで集まっている時にはキャツキャウフフと絡み合い、そんなに喧嘩をする事もなく、飼育員さんにはぴったりと寄り添い沢山の子供達がふにゃふにゃとしがみ付きながら抱っこっされていました。

つぶらな瞳に無邪気な姿、そしてフニャフニャした姿。
か、かわいい……‼

インドネシアの国際アニマルレスキューセンターで、毎日朝と夕方に森の学校へ運ばれるオラウータンの赤ちゃん達。

このドキュメンタリーを見ていた当時、私の子供は2歳でした。
保護されているオラウータンの子供達愛くるしさが、まるで自分の子供が持っている愛らしさと重なり、深夜食い入るようにそのドキュメンタリーを見た事を覚えています。

しかしそれと同時に
うちの子供の方が育てにくいな。
本音を言えば、オラウータンの子供の方が良い子じゃないか……。
という感想も抱いたため、強く印象に残っていたのです。

その当時人間の子供(私の息子)の様子はと言えば……。
写真でご紹介した手押し車にオラウータンの子供達ように大人しく乗って運ばれる事がまず不可能でした。

チャイルドシートからは幾度となく脱走をし、車の走行中は何度も事故になるのではないかと神経をすり減らし、チャイルドシートから脱走する度に路肩やコンビニで停車し、大暴れする子供をチャイルドシートに戻すという作業をしていたため、車でどこかに移動するというだけでも一大行事でした。
徒歩なんてとんでもない。
あまりにも周囲へ迷惑をかけてしまうタイプであったため、外出自体を控え用事は必要最低限にしなければいけない程でした。
このような状態でしたので、当然の如く外出先では常に頭を下げるという毎日でした。

保育園史上初の2歳にして保育園から脱走をするという、前代未聞の事件までをも起こし、息子の脱走事件以降、保育園の出入り口には子供の手が届かない位置に簡単な鍵が設置されました。
(保育園の方々には非常にご迷惑をお掛けし、今でも思い出すと申し訳ない気持ちが蘇ります。)

※念のために記載をしておきますが、息子は発達障害などの特性を持っている訳ではありません。
他の子供と比較してヤンチャで気が強い傾向が強いため、育てにくい部分は大いにありますが、魔の2歳児と言われるイヤイヤ期の男の子ですから、
(女の子はやはり、男の子と比較すると大人しいです。それでも持って産まれた気質が強くて大変な子もいますし、育てやすさにはかなりの個人差があります。)
育てやすさの違いはあれど、世間のお母さん達は多少なりとも、このような苦労を経験しているのではないでしょうか。

私の実体験ではありますが、人間の子供がチンパンジーの子供と比較した場合、いかに育てるのが大変かの一例として捉えて頂ければと思います。

手押し車に乗って森の学校へ大人しく運ばれているという事自体が、人間の子供と比較すれば奇跡的な大人しさです。

人間の子供であれば、調子に乗って何人かは突然奇声をあげながら脱走しますし、道路に飛び出すため危険です。

子供が育てやすい性質から、育てにくい性質へと変化しているというのは
そこになんらかの必要性や理由があっての事です。
では、なぜオラウータンの赤ちゃんは泣かず人間の赤ちゃんは泣くのでしょうか?

まず、人間はヒト科の猿と比較した場合最大の特徴は
知能が高く会話をするという事です。
そのため、かなり声帯を使う必要があります。

オラウータンは人間のように会話をしません。
(そもそも他者と会う事すら稀であり、主に声を使う場面と言えばオスが発情期にメスを呼ぶためとオス同士の威嚇などで使われる位です。親子であっても、その他のコミュニケーションは、ある程度の態度やジェスチャー、それに雰囲気で十分という事です。)

将来、言語を習得し話すためには泣いて声帯の使い方を色々と試したり、心肺機能を高めるといった行動が必要になります。
自身も子育てをする中で実感をした事ですが、人間の赤ちゃんは寝転がって時々機嫌よく遊び、泣いておっぱいを飲み寝ているだけではなく、
ああ見えて日々様々な事を発見しています。

まず、産まれて少し経つと自分の手や足の存在を発見して観察しますし、ものを掴めるようになれば、積木のようなおもちゃを何度も床に落とします。
一度ハマると、それこそ一日中一緒にいる母親の気が狂いそうになる程同じ事を繰り返します。
その様子は一見して奇妙ですが、まるで物理を学んでいるように感じました。

物を 掴んで 離すと 落ちて 音が鳴る

こういった単純な物理の法則を一日中繰り返し、プログラミングのように作業を分解してゆっくりと学んでいるのですが、こういった単純な事を繰り返す時間が非常に長いです。

また、泣くと周囲にどんな反応があるのかという?
という事も確認しています。

泣く事で、他者がどんな反応を示すのかというのは、コミュニケーションの始まりでもあり、機嫌が悪い、眠い、お腹が空いた、痛かった、甘えたいなど様々な感情を泣き声を変える事で伝えます。

先にも書いた通り、赤ちゃんはこういった単純な事を繰り返して学習をする時間が非常に長いので、訳もなく泣いているような時間もかなり長期に及ぶのです。このように、子供が持って産まれた性格にもよりますが少し言葉が話せるようになる1歳半位までは年中泣いています。

他にも、泣く事で注意を引いて、自分が健康である事を伝えたり、寂しさや不安を感じれば構ってもらうために泣き、世話の要求のために泣きます。
泣く事位でしか感情が伝えられないという事もありますが、総じてコミュニケーションや社会性の獲得とその学習のために泣いているのです。
人間のコミュニケーションはとても複雑ですし、言語の習得をしなければなりませんからその道のりが長いのです。

人間の子供の場合、3~4歳位で、ある程度の意思の疎通が出来る程度には会話が出来るようになりますから、むしろ言語の習得までの時間はかなり短いと言えるのかもしれません。

一方のオラウータンは孤独な生き物と言われる程、成人以降のコミュニケーションを必要としていませんので、そもそも泣く必要もなければ何種類かの鳴き声を組み合わせるだけで生きるために必要なコミュニケーションが完結します。
また、オラウータンの生息域にはウンピョウやアカオオカミ、ワニをはじめとした肉食獣が生息し、これらの天敵に成熟したオスの強いオラウータンであっても狩られてしまう事がある程、日常の中に危険が潜んでいます。
そのため、無暗やたらと泣くのは命取りです。

子供の頃から静かに息を殺して完全なるソロサバイバル生活を送る事を目標として育つ必要があるため、オラウータン子供は静かなのです。

また、人間には天敵がいなくなりましたから、戦争中などの緊急事態下でもない限り赤ちゃんが泣いても大丈夫という事になります。
野生動物の中に、ここまで手がかかり成人までの育成期間が長い動物はいません。
辛辣な表現をすれば、人類は赤ちゃんからして平和ボケをしており、赤ちゃんと言う存在自体がそれ程までに自然環境下よりも安全な環境を手に入れたという証明でもあるのです。

こうして、オラウータンの母親は人間を除いて最長、約7年間の育成期間中に
どこで何の果物が取れるか、果物が取れない時に食べられる草や木、ベットの作り方など完全なるソロ生活が出来るよう森の知識を徹底的に教えてゆきます。

それにしたって、孤独ですが……。
オラウータンは大丈夫……らしいです。

人間にこんな生活は耐えられないという証明


我々人類は、ヒト科の猿として進化をして来ました。その分岐のはじまりがオラウータンです。
オラウータンもヒト科の猿の特徴でもあるように、アリ釣りのために細い枝(道具)を使い、その知能も大変高いです。

ヒト科の猿は脳の重量がオラウータンからチンパンジー、ボノボ、初期人類位まではさほどの差がありません。強いて言えばゴリラが100g程重い程度で賢さ(元々の脳の重量)にはあまり違いがありません。

生き延びるという点において、オラウータンの生き方というのはある種サバイバルと食事、そして子育と繁殖行動に全振りしており

生きるという事だけを考えれば無駄がありません。

そして次の項目で詳しく解説をしますが、明確なボスこそいないものの強いオスと弱いオスの子供の数も同じくらいであり、弱いオスがめちゃくちゃ性的に抑圧(欲求不満)されているのか?
と言えば、そういう訳でもありません。

第1回のゴリラの回でもご紹介しましたが、オラウータンはゴリラのように強いオスしか繁殖できないシステムではありません。
弱いオスにも交尾をするチャンスが十分ありますし、その結果もきちんと出ています。
つまりオラウータンのオスはゴリラやチンパンジーとは比較にならない程、弱いオスであっても性的にはそこそこ満たされており

性欲が強く進化しているヒト科において、オスの性欲をどうするのか?
という
ヒト科にとってかなり重要な要素もクリアしているという事です。

それでも一番初めにオラウータンが分岐をし、別のヒト科の猿から進化を遂げた理由は耐え難い孤独以外に他なりません。
そして、オラウータンの性質を知れば知る程
これ以外の理由が見当たりません。

人間は基本的に一人では生きられません。
ゴリラやチンパンジー、そしてボノボも群れを作って生活しています。
一人で生きているのは群れを放逐されたオス位でしょう。

ひとりになりたくない、孤独には耐えられないというのはかなり強い原始本能なのです。

オラウータン以降の分岐で、ソロ生活を主体とする猿が存在しない事も、その証明です。
どんなに過酷な環境であっても、人間は群れという社会性を放棄する事がありませんでした。

どの時代であっても例外はありますが、一人森の中で自給自足で暮らしたとしても、家族がいなければそこで死を待つのみであり、町へ出て交流をするなど他社との交流が無ければ、亡くなった事や存在すらも長い間気が付かれず、存在の自体があやふやな物へと変化します。

これが孤独死ですが、介護職やよく他人とコミュニケーションをとる職業の方程老人の孤独がどれ程強いものかを知っています。

身体が丈夫なうちは良いのですが、人間も動物ですので寿命や老いがあります。体がうまく動かなくなってくると、人間は強い孤独を感じるのです。
そしてこの、強い孤独が死への恐怖にも繋がります。
孤独とは恐怖なのです。

ひとりでいる事が平気な人は、
かなり強い精神力を持っているとも言えます。人間はひとりでいる事に不安を感じ、寂しくなってしまうのは当たり前に備わった原始本能なのですから、恥じる事はありません。
どんな立場や状況にあっても、寂しい時は寂しいと素直に言って良いのです。

キリスト教の教えの中に
“人はパンのみにて生きるにあらず”
という言葉がありますが、この一節は言い得て妙ですね。
ほとんどパン(食事)のみにて生きているのがオラウータンです。

むしろ人間は、パンだけだとさみしくて生きていけません。
孤独な生活を続けていれば、よほど精神力の強い人でもない限り孤独死するか気が狂ってしいます。

少々煩わしいと思っても、他人との関わりを持った方が、健全な精神を保ったまま老いる事が出来ると思いますので、なるべく家族をはじめとした関わりは大切にして欲しいと心から願っております。

オラウータン本当は木の上嫌かもよ?

一見して孤独と言う生活以外に欠点は無さそうなオラウータンですが、
どうも木の上には不都合があるのではないか?
と言う研究結果があります。[2]

まず、オラウータンが生活している樹上とは、一体どんな所なのでしょうか?

熱帯雨林のオラウータンが主に生息している森はとても豊かです。
日本人にはあまり馴染みの無いパンノキやドリアンのようなフルーツをオラウータンは食べていますが、これら大型果実の生る木はその樹高も高く、大きな実を支えるため巨木である事も多いのです。
基本的に地表から大体20-30メートル位のかなり高い位置で、オラウータンは生活をしていると言われています。

しかしどうも、強いオスが一番頻度は高いのですが、年齢性別をあまり問わずオラウータンは結構地上に降りて来ているらしいという事が近頃の研究によって解ってきたようです。

これは個人的にも、オラウータンの資料を調べていて疑問に思った事ですが、資料を見る限り、どうもオラウータンはウンピョウなどの肉食獣に結構襲われています。

我が家でも猫を飼ってはいますが、しかし、いくら身体能力の高いネコ科の動物であっても、ウンピョウは1メートル程の大型種です。
20-30メートルも垂直に生える熱帯雨林の巨木に登れるのだろうか?と少し疑問に思っていました。

イエネコもそこそこ高い木などに登る事は出来ますが、せいぜい10メートル位であまりに高いと降りられなくなります。
熱帯雨林に生える巨木は垂直に生えるヤシの木のような形状をした木が多いのも特徴です。
ネコも高い所は好きですが、杉やヒノキのような垂直の木の頂上
(しかも熱帯の木は日本の杉やヒノキと比較して、倍は高い木です。)
そんな所まで登るか?という事です。

ましてや、イエネコよりも体の重いウンピョウ(最大で23㎏)がここまでの高さを登れるとは思いませんし、獲物を仕留めて30mも飛び降りて来るのはかなりリスキーなのではないでしょうか?
傷つけた獲物を地面に落とすとしても、他の動物に奪われる可能性もありますし、ウンピョウとオラウータンの体重差を考えると樹上でオラウータンを仕留めるよりは、地表になるべく近い場所で待ち伏せをした方が、狩りの効率は良さそうです。

そしてアカオオカミやワニにも襲われているという事も考えると、思ったよりも地上に降りてきているというのが正しい説だという事が伺えます。

オラウータンにとって、樹上は圧倒的に安全です。そのため、オラウータンは寝床であるベットをかなり高い位置に毎晩作るそうです。

ではオラウータンは一体なんのために地上に降りて来るのでしょうか?
サイエンティフィック・リポート[2]によると

地上に降りて来たオラウータンは、
多肉植物の新芽、シロアリ、鉱物粘土を摂取しているようです。
つまり、ミネラルとタンパク質と塩です。

どれも樹上では得難いものばかりですし、樹上で取れるであろう
植物やフルーツにはほとんど塩分が含まれていません。

特に塩(ナトリウム)は生き物にとって欠かす事の出来ない栄養素ですが、内陸部に住む動物は塩分の摂取が難しく多くの動物が塩分の含まれる土を食べたり舐める事で補っています。

オラウータンは汗こそかきませんが、汗をかかない動物であってもナトリウムは神経伝達、筋肉の収縮、体液のバランス、血圧の調整など、多くの生体機能に関与しており摂取する必要があるのです。
オラウータンはそれなりに大きな動物ですから、定期的に一定量の塩分を摂取する必要があります。

また、チンパンジーやボノボも基本的には樹上生活をしていますが、暑い日には地上に降りて涼をとっています。
地表から20-30mも上の樹上です。炎天下にはさぞ暑い事でしょう。
地球の大規模な気候変動によって人類の祖先は地表に降りて来た可能性も否めません。

最終的に私達人間は、現在地表に作った家の中で暮らしていますが、その進化の過程では

オラウータン(樹上)→ゴリラ(地表)→チンパンジー・ボノボ(半樹上)→人間(地表)

と、その進化の中で地表生活と樹上生活を繰り返しています。これは、天敵の有無にも大いに関係しており、特にどの地域のヒト科の猿も霊長類になる何十、何百万年前と相当な期間、ネコ科の大形肉食獣に狩られていたという問題が根底にあります。

我々人類は道具の力を得て強くなりました。
ネコ科の大型肉食獣が脅威では無くなった頃には、樹上で生活をするための握力を失い、足も木に登るには適さない足に進化をしました。

進化の過程で、何度か樹上と地表を行き来している人類ですが、2足歩行というのは人類が手に入れた数少ない成功体験のひとつでもありますから、これを再び手放し樹上生活に戻る事は……。

おそらく無いでしょう。

もし、そうなる様な事が起こった時は現代文明が崩壊し、人類の危機とも言える状況になっているはずです。

また、必須栄養素やタンパク質の問題を考えた時にも、地上で生活をした方が人類にとって都合は良さそうです。

オスの性欲と特徴 

人間が属するヒト科の猿達の特徴の違いは主にオスの特徴の違いにあります。
メスにも排卵を隠したり逆に発情期を教えたりするなど、各猿による特徴もありますが、子供を産んで育てるというのはメスとその生物にとって命題と言って良い程重要な仕事ですから、メスの性格的な特徴と言うのはそこまで変わらないという事です。

もっと言ってしまえば、性欲をどう処理しているのか?というのがヒト科の猿にとって、その種を決定付ける特徴だと言っても過言では無い程、オスの性欲というのは重要です。

では、さっそくオラウータンの性的な特徴を見てゆきましょう。

最大の特徴はオスのフランジ

オラウータンのオス、最大の特徴的な部分は何と言ってもフランジです。

オラウータンの顔にある、この奇妙な横に広がる皮のようなものがフランジです。

フランジの発達したオラウータンのオス

動物園などの飼育下以外のオラウータンは単独で生活をしているため、基本的に群れを統率するような明確なボスは自然界には存在しません。
(飼育下ですと、動物園のような狭い敷地の中で暮らす事になるためボスに近い存在が発生しますし、敷地の関係上地上で生活をします。)

そのため、オスは偶然森の中で出会ったオスと喧嘩をする事になりますが、基本的に喧嘩をするのは、このフランジのあるオス同士だけです。
フランジは強いオスの象徴ですが、このフランジ……。

バトルに勝つと肥大します。
しかし、バトルをしなくても雰囲気でも肥大しますし、なんか俺って強いんじゃね?とオラウータン自身が思い込む事でも肥大化します。

大変興味深い例として、動物園で飼育下にいた元々フランジの無かった弱いオスが飼育員さんが退職したら急速にフランジを肥大化させたという事例があるそうです。

元飼育担当者は体格が良く、どちらかと言えば高圧的なタイプであった事と、新しく来た飼育員さんがかなり瘦せ型でスマートな男性であった事から、自分の方が強いと思い込み、フランジを肥大化させたようです。

人間と同じ位の体重で樹上生活を営んでいるオラウータンは、その体を強靭な腕力と脚力で支えており、その握力たるや300㎏はあるそうです。

飼育員さんを同じ種類の猿であると思い込み、勝負をしていないのに勝手に負けた気分になり、マッシブな前飼育員さんが居なくなった瞬間に思い込みや雰囲気で勝った気分になっためフランジを肥大化させたという大変面白いエピソードです。

そもそも、普通の人間ではフランジが無いオスにも勝てない程、オラウータンはめちゃくちゃ強いです。
おそらく格闘家であっても、掴まれたら粉砕骨折して終わりです。

昔から、態度の大きい者や横柄な人物に対して「デカい顔しやがって」などと言いますが、オラウータンの場合顔がデカいと本当に強いです。
ゴリラもボスになると背中の毛が白くなる、シルバーバックが有名ですがオラウータンのフランジやシルバーバックのように強いオスの見た目が変わるという形質は人間には受け継がれなかった特徴です。
このような所からも我々人間は争いに負けた猿の子孫であるという事が読み取れます。

また、フランジは思い込みで大きくなるためボスのように1頭ではなくそれなりの数が発生しますし、一度フランジが肥大すると元に戻りません。
そしてフランジのあるオス同士が出会うと、かなり激しい喧嘩をしますが、時に命を賭けた戦いにもなります。

ゴリラ・チンパンジー・ボノボなどのオラウータンよりも後に分岐したヒト科の猿達は、メンチの切り合い(睨み合い)や大きい石を投げて力を示すなどのマウント行動をとり、同族のオス同士の喧嘩を回避しようとする性質があります。

本気のバトルを回避する事と、マウント行動は人間にも備わった原始本能のひとつですが、本気の勝負をして命を張るのは種の繁栄にも悪影響しかありません。

オラウータンの死因は、骨折起因したものが多いです。
いかにオラウータンが強いとはいえ、300㎏の握力で掴まれたり30mはある高い木から落ちれば軽い怪我では済みません。

フランジを持ち顔をデカくするというのは、メスにモテる要因でもありますがそれだけリスキーな変化でもあるのです。

フランジは、思い込みなどでも大きくなりますがバトルに勝つと確実に肥大化します。
そのため歴戦の猛者程フランジは肥大化しますが、一度大きくなったフランジは元に戻りません。
つまり、加齢や怪我などでヨボヨボになった場合でも戻りませんから、

ある程度の歳になれば歴戦の猛者達も若者に殺されてしまうという事です。

強いオラウータン同士の喧嘩は容赦がありません。
オスにはなかなか厳しい世界……かと思えば、そうでもない一面も持ち合わせています。


アンフランジの生存戦略

フランジのある強いオスがいる一方で、フランジの無いオラウータンをアンフランジと呼びます。

フランジのあるオスと無いオスの顔の違い 出典京都大学[3]

写真を見て頂ければ一目瞭然で、フランジのあるオスと無いオスの外見は人間が見ても認識できる程の違いがあります。

激しい争いを繰り広げるオラウータンのオスですが、フランジのあるオスは無いオスに対しては、かなり寛容です。
どの位寛容かと言えば、同じ餌場で餌を食べていても何もしない程度に寛容です。
フランジのあるオス同士が命の取り合いまでしている一方で、フランジの無いオスの事は男だとは思っていないと言った所でしょうか。

フランジのあるオスは、フランジの肥大化と共に、首の下にあるのど袋という器官を発展させます。こののど袋を使ってロングコールと呼ばれる独特の音声を発し、発情したメスがやってくるのを待ちます。
「強いオスはここですよー!交尾したかったら来て下さーい!」
と言った具合ですが、アンフランジのオスは強いオスとは真逆の生存戦略をとっています。

もちろん、メスは基本的には強いオスの子孫を残したい訳ですから、妊娠が可能な状況であれば、ロングコールに誘われてフランジのあるオスの元へと向かいます。

しかし、弱いオスの元にメスは来ません。
のど袋が無いためメスを呼び寄せられませんし、体格もさほど良くない場合が多いので外見的にもメスとそんなに変わりません。

そこでアンフランジが取る行動がストーカー及び暴行です。

ヒト科の猿は人間も含めて全ての種族でレイプがあります。ゴリラにはほとんど例が報告されていませんが、そんなゴリラであってもする事です。
これは、悲しいかな人間にも備わった強い原始本能のひとつです。
原始本能のひとつなので、根絶する事は難しいですが
元々備わった本能であると認知が広がる事でその数を少なくしていく事は可能でしょう。

アンフランジのオスは、強いオスのロングコールで誘われてくるであろうメスを付け狙い、交尾を試みます。

メスは当然嫌がって抵抗をするのですが、オラウータンのメスの中には、極少数ではありますが、このアンフランジのオスと嫌がらず積極的に交尾をするメスもいるのです。

その結果、DNAを用いた父子判定の結果からは、フランジもアンフランジも同程度子を残しているという事です。

つまり、基本的には強いオスと交尾をしたいけれど、強いオスの子は男の子であった場合戦いで死ぬリスクが高いし、弱いオスの子供であれば生き延びる確率は高いのです。
その上、条件やきっかけが揃えばアンフランジのオスがフランジを持つ事も可能です。

※オラウータン本当は木の上嫌かもよ?でもご紹介したように、オラウータンは理由があって特定の場所に降りて来る事(特に塩分補給)がある以上、一定範囲内の強いオス同士が出会ってしまうのは必然です。

しかし、産まれた子供の性別がメスであった場合はアンフランジの子供であっても特にデメリットはありません。
それであれば、積極的に弱いオスと子を設ける事で子孫を残したいと思うメスが存在しているという事です。
これが、メスが選択した多様性と言う名の原始本能です。

このような形質はそのままゴリラ以降の類人猿や人間にも受け継がれていますが
強いのはカッコ良いけれど、荒くれ者過ぎてすぐに命を落とす無鉄砲なオスはメスも嫌いですし、オス同士もメスや餌場をめぐる争いで命を落としたくないという事です。

人間はその性質が思いの外受け継がれており、女性の好みのタイプというのはかなりバラバラに分かれます。
※正しイケメンに限るなどという表現が使われる事がありますが、もちろん顔の良い男性は一定数モテます。
しかし実はこの女性がイケメンだと思う顔やタイプ自体が男性が思う以上にバラバラです。
男性の場合は付き合えるかどうかは別として、クラスや学年のマドンナ的な存在の女性達に人気が集中します
「あの子は可愛いいなぁ」という好意的な感情を少なからず抱きます。

しかし、女性の場合は例えイケメンがいたとしても、殆どの女性が
「好き!」というような状態にはなりません。
「どこが良いのかわからない」男性芸能人が持て囃されていたり、
カッコ良いと持て囃されている芸能人が同じ子に何度も振られてしまったという類のエピソードの理由はここにあります。

※イケメンや美女の基準とは何なのか?

よく言われているのは、平均的な顔はモテる(美男美女)という事です。
平均的な顔を持つというのは、人間の進化の過程において様々な性質を持っているという事を表しています。
平均顔であるという事は、そうでない人と比較した場合何代も多くの子孫を残し様々な多様性持っている可能性が高いという事です。
例を挙げるとすれば代々20歳で出産をしてきた一族の子孫と、30歳で出産をしてきた一族の子孫では、子孫の代に差が生じるという事です。
何百年、何千年と経てば、それはもの凄い差になってゆきます。

この場合、代々20代で子孫を残してきた一族の方が当然、平均顔になりますし、それだけの魅力を持って代々続いてきた一族とその末裔であるという事の証明でもあります。
世界的に見ても、様々な人種が混じった人は美男美女である傾向が強いとされています。

また、美男美女に必須であろう美しい肌は皮膚病や内臓疾患が無い事を示しています。
現代はこれにプラスしてマスコミに作られてしまった流行りの顔というのがありますから、美男美女というものを定義するのがやや難しくなっているという側面もありますが
人間(特に男性は)顔からも遺伝的な性質を読み取っているという事です。

男性は、本能として子供を作りたいという原始本能が強いため、その過程である抱きたいという欲求が非常に高く健康的で性的魅力のある女性に人気が集中します。
これに対して、女性は性欲よりも子供を生き延びさせたいという最も強い原始本能でもある母性の方が基本的には優先されます。
これは、メスは自身が多少弱くても子供は持てた事と、様々な性質を持った可能性に賭けた事で人類が成功したという進化の歴史にも直結しています。

ですから、人間の場合
男性が若い(子供を産める適齢)の女性に魅力や価値を感じやすいのは当然なのですが、女性はマッチョであるとかイケメンであるといったヒト科の猿が好むであろう強い性質とは真逆であったり、野生を生き延びるにはあまり役に立たないであろう性質を好む比率が男性と比べて高いのです。

例えば極端に痩せている、または太っている、年上好き、目が細い、毛深い、背が小さい、金持ち、家柄、賢さ、外国人、人格、職業など多岐に渡りますが、進化の過程で猿として必ずしも強い条件や一般的に言われるようなイケメンの条件とは外れているものや、男性が後天的な努力で手に入れられるお金や仕事といった性質であっても好きになるという事が大きな特徴です。
そのため、女性と比較すれば男性の方が容姿に関係なく努力や人格によって好まれる事があるという事です。

そして、こんなに良い子がなぜ…こんな男と?
という実例を実際に見たり聞いたりした事があると思いますが、悪い人が好きであったりDVをする男性ばかりを求めてしまう女性が一定数存在する事も原始本能が成す悲劇ですので、人間(特に女性)には多様性獲得のために、こういった性質を持って産まれてしまうという事があるという事を知識として知っていただければ、一人でも多くの方が不幸になる事を回避する事が出来るかもしれません。

また、同じ性質が女性と比較すると少ないとはいえ男性にも備わっています。

そしてこのような異性の好みが多様化するという性質は、種の保存という観点から見た場合男女共にとても合理的で良い作用をしているという事です。

身近な例で言えば、女性の好みが全く被らない男性同士は仲良くなりやすい(喧嘩に発展する確率が極めて低い)という例が挙げられます。

これは、男性がチンパンジー~狩猟採取時代、そして現代まで徒党を組んで狩りや戦争をして来た歴史とも関係があり、仲間の多さは強さと豊かさに直結する原始本能です。そのため、男性は同性の仲間を非常に大切にする傾向が強いと言えます。
現代でも男同士の友情というのがそれに当たりますが、この男同士の友情というのが壊れる大きな原因の一つとして挙げられるのが
「同じ女性を好きになる事」です。

また、オラウータンの性質を通してもご紹介している通り、男同士の戦いは出来るだけ避けたいというのもオラウータンから分岐して以降も、ヒト科の猿が持ち続けた原始本能のひとつです。

現代人は進化の過程で、コミュニケーションを通してかなり争いをなくしてきた事は確かです。
自分と女性の好みが被るというのは、致命的な喧嘩に発展しかねない重要な要素ですから、男性はこのような好みを聞き出し自分とは違う好みを持っている事を確認すると、この男はライバルではないから傍にいても大丈夫だと安心します。

例えば少々変わった性的趣向のある男性は無害ですから、男性の集団に受け入れられやすいのです。
(※人間の性的趣向は多岐にわたるため、あまり極端な性的趣向を持った男性は女性や子供にとって有害であるため、極端に嫌われ排除される傾向もあります。)

わかりやすい事例としては、熟女好きなどのがそれに当たりますが
(性的趣向としては少数派であり、大多数の男性にとってはライバルになり得ない)
「お前って趣味悪いな~」
などとマウントを取りつつも仲間として笑って受け入れられるのです。

ですから、男性同士が集まった時にしがちな下品な話や、どんな女性が好みかを語り合うというのは男同士の熾烈な戦いを回避するための探り合いでもあり、仲間を増やすための確認行動でもあり、マウント行動でもあるという、とても重要な原始的本能でもあるのです。

また、同じ好みの男性の場合は、彼女、妻、娘などがいる場合はその場に誘いませんし、女性と出会える場に遊びに行く場合は、その場所へは誘いません。この回避行動も原始本能のひとつですが、これが欠落している場合もあれば、強く持ち合わせている場合は守ってくれる男性となるのです。

オラウータンは生息域がバラバラであるため、絶妙にそのバランスを取ってはいますが、出会う強いオスの全てと命のやり取りレベルの大喧嘩をしていたら、人類はおろかヒト科の猿は種の保存と言う生物としての命題すらも危うくなってしまいます。

これは、我々人類をはじめとした多くのヒト科が捨てた原始本能であり、孤独やあまりにも好戦的なオラウータンの性質は以降分岐をした猿達には戒めのように避けなければいけない原始本能として、刻み込まれているのでしょう。

また、このアンフランジと呼ばれるオスが残した子孫は、メスにとっての第一子である事が多いのです。

オラウータンという生き物は熟女好きである

オラウータンのメスの特徴のひとつに、ずっと排卵をするため、死ぬまで子供が産めるという特徴があります。

ですので、オラウータンのオスは生粋の熟女好きです。
その理由は単純明快で、森の知識がある=生存率が高いからに他なりません。

いくら熱帯のジャングルとはいえ、オラウータンの主に食べている果物は木に成る果実ですから、日本でも秋は柿、夏は桃が実るように果物が成る時期や木の種類とその場所を知っていなければ生存が出来ません。
こういった知識は男女関係なく親から子へと受け継がれますが、熟女の方が年齢を重ねているため圧倒的に知識が豊富ですし、この成熟したメスから産まれる子供たちが成人して独り立ちをする確率は驚く程高く、80%~90%以上と言われています。

強いフランジのあるオラウータンは、のど袋を使ってロングコールをしてメスを呼び寄せますが、弱いオスはそれを利用して若く出産経験の無いメスを付け狙います。

オラウータン基本的に単独行動をしていますので、若いメスもどんな男が強いオスかという事を知らない場合もあるでしょう。
つまり、弱いオスは何も知らない無知なメスを付け狙ってレイプするロリコンだという事です。

生存戦略を考えた時、フランジのあるオスとメスの好みも被りませんし、強いオスと弱いオスが喧嘩にならない理由でもありますが、このような形質は人間にも受け継がれており、弱いオス程適齢や同年代に相手にされないため若すぎる子供に手を掛けようとしたり、幼児性やロリコンと言った傾向を強めていきます。

そのうえ人間は卵子の質を上げるために、一生で放出する卵子の個数を制限するように進化しているため、オスが全体として子供を産める年齢のメスを好むようになりました。

これにより、人間の男性が子供を産める年齢の女性を手に入れる争いというのはなかなかに厳しい戦いでもあるという事です。

これもロリコンに拍車をかける要因となっており、我々人間が持つ原始本能のひとつですが、それと同時にあまりに若いメスが出産によって命を落としやすい事を知っていますし、自分や周囲の子供達が被害に遭えば到底許せる事ではありません。
強いオスから見れば、強いオスを欺き、正々堂々と勝負もせずに無知なメスを青田刈りをした卑怯者な訳ですから、強いオス程このような行いに強い嫌悪感を示すのです。
そしてヒト科の人類には、ほぼボスという群れを統率するリーダー達が存在しましたから、強いものには巻かれますし、強い者の命令にはあっさりと従い残虐行為も厭わない。というのも人間が持った原始本能のひとつです。

その最たる例が、刑務所内でのいじめです。

単純に強い者(凶悪犯罪者)が刑務所内でのカースト上位なのはもちろんですが、ロリコンなどの小児性愛者や子殺しをした者は自分の犯した犯罪がバレると、カーストの最底辺へと落ち、刑務所の中で苛烈ないじめに遭います。
不思議な事にロリコンへの刑務所内での苛烈ないじめ行動は、世界的に共通した事例で、実例を多く伴った原始本能のひとつだと言えます。

それにしても、人まで殺めてしまったレベルの物理的に強い男達と、アンフランジのように弱い性質を持った男が同じ柵の中に閉じ込められるというのは皮肉なものです。

オラウータンの強いオスは、卑怯な弱いオスを気にもかけません。
強いオラウータンのオスが抱きたいのは、経験を積んだ熟女ですのでその他のメスがどうなっても良いという事です。
(その熟女が、昔は若い娘であったという事もオラウータンは気にしないようです。)
これは、オラウータンのオスが子育てには参加しない事などから見て取れますが、オラウータンのオスは交尾にしか興味がないという事です。

そして、現在の人間の女性は、生涯を通しての排卵をしていませんし、人間の女性は妊娠出産をするにあたって、適齢期というものがあるため、男性が適齢期の女性を好むというのは原始本能のひとつであるため当然の事なのです。
人間も動物である以上、頭では考えていなくともこういった本能に突き動かされて生きています。

しかしオラウータンのメスは生涯を通して排卵をしますから、アンフランジといった弱いオスも、本当は熟女の方が好きなのです。
ですから、弱いオスは真正のロリコンではなく妥協して若いオラウータンを付け狙っているのです。
しかしこれが許されるのは、彼らオラウータンが総じて熟女好きであるからという理由でしかありません。

オラウータン以降のヒト科の分岐を見るに、強いボス制であったり、弱いオスともある程度の折り合いを付けて生活していますが、刑務所の例が示すよう女性や子供の損失というのは種の保存という観点から見てもマイナスですし、将来的の男性と群れの不利益になるような事柄です。
ですからタダでは生かしてはおけないと、例え獄中であっても集団から排除もしくは抹殺しようとするのです。

異端すぎる者や実害のある者の排除と強い嫌悪感も原始本能のひとつです。自浄作用のように、ひと昔前であれば良い面へ働く事もあったでしょうが、法律がある現在において、暴力を振るいたくなる程の強い嫌悪感や怒りを感じる事は、身の破滅に繋がりかねません。
この他者への排除と暴力性、そして群や弱い者を守る父性を強い男ほど原始本能として同時に持ち合わせていますから、刑務所内でのいじめは苛烈を極めるのです。

現在は人間の免疫細胞と同じく、強い攻撃力と排他性が自分自身や罪の無い同族などに向けられた場合、精神的な混乱や無益な争い、そして差別をも産み出してしまいますので、このような本能があると心にとめておくだけでも、自分の感情に乱れがあった時の支えになるかもしれません。

人間も含めたほとんどのヒト科の猿にボスがいる事を考えれば、アンフランジのオスが強い飼育員さんが居なくなった途端フランジを持ったように、弱い者の集団の中から必ずボスを排出するというシステムが受け継がれているのでしょう。

性的行動や交尾など様々な特徴を見るに、オラウータンが我々の兄弟や先祖の一角として遺伝子を残したであろう事は確かな事です。

オラウータンの交尾

ヒト科よりも単純なサル目(霊長目)の猿は殆どが、後背位、いわゆるバックの体制で交尾をします。
また、霊長目以外の動物も後背位で交尾をする動物がほとんどです。

ですが、我々人間に近いとされるボノボとオラウータンだけは後背位ではなく、対面で交尾をします。

古代では(古代にはボノボやオラウータンの存在や詳しい生態がわかっていなかったため)
人間しか対面で交尾をしないと、かなり長い間考えられていました。
そのため、正上位や対面で交尾をする事が、愛や知能を持つ人間の特徴であると信じられてきたのです。

元々アジア大陸にも存在していたこともあり、オラウータンの存在自体は広く中国まで知られていました。
しかし、定点カメラのような便利な道具が普及するまでオラウータンの交尾までは詳しく観察出来なかったという事でしょう。
つい最近、そして現在でもオラウータンの観察は困難を極めるため、現地のスタッフ達は1分毎に何もしなかったという項目に日々〇印を付けているようです。

しかし、ボノボやオラウータンは対面での交尾をします。
それは愛情やさみしさを満たすため等の感情が、相手をもっと知りたいという行動として現れるためですが
そもそも野生環境下において交尾は、糞をする、小さな子供を育てる、出産するといった行動と同じく隙が出来る為、かなり危険な行動だと言えるのです。
そのため、ほとんどの動物は最低限前方が見え、他の動物に襲われる危険があった時には逃げる事が出来るよう後背位で交尾をしますし、交尾自体の時間をなるべく短くする事で危険を回避しています。
種の保存だけを考えれば、危険をすぐに察知できる体位で交尾をして早く終わらせた方がお互いのためなのです。

しかし、オラウータンの交尾は我々が考える対面交尾とは思えない、なかなかアクロバットな交尾を展開します。
木にぶら下がったまま、4センチのペニスを差し込み40分にも及ぶ長時間交尾をするのです。そしてあまり動かず時々体位を変えながらゆっくりと時間を過ごすという、ある意味でかなり人間に近い交尾をするのです。

人間も繁殖行動以外の理由で、コミュニケーションとしてのセックスを行います。
オラウータンも繁殖行動が前提ではありますが、排卵とは関係なくコミュニケーションとしての交尾を行うのです。

しかし、その後の分岐と言われるゴリラやチンパンジーの交尾時間は短く、体位も後背位のみに戻っていますし、ボノボに関しては正上位を行い完全なるコミュニケーションのツールとして性行為を行います。

いずれにせよ、オラウータンは人間とは真逆と言って良いほどのソロ生活を送りながらも、男女共に野生生物としては異常とも言える長時間の交尾によって、その孤独を満たしています。

種の保存だけを考えた時、生存というのは第一に優先される行動ですが、生存と言う観点から見れば長時間の交尾は無駄です

そこに理由を見出そうとした時、オラウータンのオスは野生下において子育てに参加をしない事を考えると、やはり寂しさを満たすために長時間の交尾をするようになったのではないでしょうか。

鳥類などは特に交尾の時間が短く、ペニスもなるべく小さくするような性質に進化しています。また、哺乳類で言えば草食動物のような天敵が存在する種の方が傾向として交尾時間は短いです。
メスの命題が出産と育児にあるように、オスの命題は交尾です。
弱い動物の方が傾向として短くなりがちではありますが、性質はあれど、強い動物だからといって、交尾の時間が長くなるという訳でもなければ、ネズミのように例外もある(※ネズミの交尾時間は30分)
という所は動物達の面白いところです。

長い時間を孤独に過ごすというのは普通の人間に耐えられる事ではありません。
いずれにせよ、性欲を解消するというストレス発散方法だけでは、孤独を満たす事は出来ないという事です。


まとめ

オラウータンの特徴や生態をで突出しているのは、やはり孤独でしょう。
生き延びるという事だけを考えた時、オラウータンという動物はかなり孤独でオスは特に利己的な生き方をしています。

子育てや授乳といった行動をメスがとる時点で、愛、特に母性は原始本能として備わっています。
オラウータンは孤独を満たすために長時間に及ぶ交尾をしますが、そこには一時的に好きという感情はあっても、メスや子孫に幸せになってほしいというような感情は希薄なようです。

動物として、ある程度完成されていると言っても過言では無いオラウータンから進化の過程で分岐をするという事は、そこに耐え難い理由があるのです。

繰り返しにはなりますが、ヒト科の猿は皆群れやボスを持っています。
私達人間も、ほとんどの場合幼い頃には家族や親といった家族の中で家長というボスに守られながら暮らします。また、ひとり立ちをしても社会性があり他者となんらかの繋がりを持ちます。学校へ行けば先生というボスが、会社へ行けば上司や雇用主といったボスが存在しています。

現代というのは場所にもよりますが、比較的平和ですし、人生の各ステージでボスに守られていればそれなりに安定した暮らしを送る事ができます。
また、性別に関係なく起業や職業としてのボスになるという選択も自分の意志で出来るのです。

原始本能は時に人生の邪魔にもなってしまうような性質のものもありますが、人類はオラウータンとして孤独を知った事で
愛、排他性、共感性、結束力、ボスと言った社会性など様々な原始本能を獲得してゆきました。


孤独は耐え難く、強い苦痛であるからこそ、そこから豊かな感情や原始本能が発生したのだと言えるのではないでしょうか。

最後に


ヒト科の猿の性行動はクロスオーバーをしている部分も多く、人間に至ってはその特徴や形質が少しずつ受け継がれたまま進化をしているので、その考察もかなり複雑なものになってゆきます。
考えや理解が及ばないまま解釈をしてしまう事もあるかと思います。
もしも気になる点や疑問があれば、お気軽にコメントを頂ければ幸いです。

【参考資料・出典】

[1]
オランウータン - Wikipedia

オランウータン - Wikipedia

[2]
サイエンティフィック・リポートによる論文
木から降りてくる:ボルネオオランウータンの陸生活動は自然ですか、それとも撹乱によるものですか?

https://rdcu.be/dzvU2

[3]
2018年2月1日午前0時に霊長類学の国際学術誌「Primates」オンライン発表論文
弱いオランウータンの雄は第一子の父親になる -父子DNA鑑定で判明した弱い雄の繁殖戦術-

弱いオランウータンの雄は第一子の父親になる -父子DNA鑑定で判明した弱い雄の繁殖戦術- | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)




この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?