安保徹氏の訃報、及び風説/陰謀論(前編)

 この原稿では去る12月6日に亡くなった安保徹氏について、発生しつつある風説の真偽、及びその形成過程を取り上げる。前編ではまず、以下の主張を検証する。

Q:12月6日に亡くなった安保徹氏の訃報は新聞に載っておらず、不自然ではないのか?(これは何かの陰謀でないのか?)

 無論、訃報は没後すぐ載るとは限らない。
 そのため私は、いわゆる四大紙の一定期間内の訃報を確認した。
 対象は12月7日の朝刊から14日(本日)の朝刊である。

 まず、結果は以下だ。

 ・読売新聞 掲載無し
 ・朝日新聞 掲載無し
 ・毎日新聞 掲載無し
 ・産経新聞 掲載無し

 当方の見落としでない限り、掲載が無いことは判明した。
 だが、結論を出すのは早い。
 まだ大きな問いが残っているからだ。
 すなわち、

Q:この非掲載は妥当なのだろうか?

 そこまで明確ではないが、ともあれ期間中100人近くの訃報に目を通すと、掲載基準は見えてくる。

・国会議員
・著名企業の創業者
・著名ミュージシャン、著名文学賞受賞クラスの小説家などの芸術家
・著名なスポーツ選手
・著名な大学教授

 著名な、との基準がくせ者だが、安保徹氏は現代の学問的には無名である。「世界的免疫学者」は単なる自称であり、00年代の一時期述べていた「「胃潰瘍=胃酸説」を覆す顆粒球説を発表し、世界に大きな衝撃を与え」も同様だ(これは胃潰瘍の一因であるピロリ菌が知られるにつれ、次第に主張されなくなっていったことも付け加えておこう)。

 また、生前の安保徹氏は「ズンズン運動」(赤子の首をひねる行為)に推薦を出し、団体代表と共著を出していたことも 知られている 
 複数の死者を出した団体代表は昨年、神戸地裁と新潟地裁で有罪が確定。本日12月14日にも、神戸地裁で5200万円の賠償を命じられてもいる。学問的に無名であることに加え、事件の影響を考えると、安保徹氏の訃報は掲載しないとの根拠は十分なのではないか。

・期間中(12月7日~14日)の訃報に、安保徹氏の名前はなかった。

新聞の訃報掲載基準からは、全国紙への非掲載は妥当と考えられる。

 調査以前の当方も含めて、訃報欄をまとまった量で読んだことがある方はほとんどいないのではないだろうか。陰謀論はそんな、よく知らない(あるいは知っているつもりの)ところに忍び込む、と言えるかも知れない。

 後編については、安保徹氏死去直後から発生している陰謀論について、仔細に追う予定である。

   ( 後編に続く……

付記:
その後の調査にて、新潟日報の朝刊(8日前後)に訃報が掲載されていることが判明しました。一切載ってないどころか実はちゃんと載ってたじゃん! 訃報の掲載自体は確定しておりますので、正確な日付を特定出来次第、あらためて追記いたします。

付記:
12月8日の新潟日報朝刊で確定しました。ご協力頂きありがとうございました。

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