脱走劇

美しくきらめく会場から
今抜け出そうとする一つの影
穴の空いた外套を纏いソールの薄い靴を履く
気を抜くと振り返ってしまう
シャンデリアの光が鋭く瞳孔に刺さる
輝きが私を絡めとる前に前に駆け抜けろ
お前が目指すのは誰も寄り付かぬ陰鬱な森
足首に濡れた草が小さな切り傷を生むのを
柔らかな声すらもことごとく無視をして
茨が行手を遮ろうとも目的地まで走り抜けろ

ここまでこれば追手など来るはずもない
そもそも追われてなどもいないのだから
確かなものは足首で燃える生まれたての痛みだけ
過去に反芻された幾重の影
お前が目指したのは光の差さぬ静かな森
着慣れた外套と履き慣れた靴さえあればいい
お前が欲しかったのは自由

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