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不真面目に真面目、まだちょっぴり反抗しつつ。

帰り道、車内に湿っぽい熱がこもっていたので、久しぶりに窓を開けて走る。最初はぬるく、徐々に爽やかな風が車内を通り抜けていく。こういうのを小春日和というのだろうか、なんて呑気に考えていたら、いよいよ本物の春が来るみたいだ。

あたたかい。あたたかいのはいいことだ、とても。だけど、いつまでもぬるま湯に浸かっているのはよくないことらしい。


今週末で、働きはじめて一年が経つ。一年間、私はそれはもうのんびりゆったりと働いてきた。苦労を重ねる23卒の皆様に顔向けできないくらい、いたって平和に、なんなら軽く息抜きまでしつつ。

仕事にはプライドを持っていない。大した専門性もなく、慣れれば無意識にでもできる事務の仕事だ。最初からプライベート重視で就活していたから、お給料さえもらえたらそれでよかった。つまり、向上心がない。し、必要もないと思っていた。半年も経てば引き継がれた仕事にはすっかり慣れ、暇を持て余すようになった。休憩時間はみっちり休み、定時になればすぐに帰る。

ところが、そうは問屋が卸さない。暇を貪る私に社長が気がつき、私は単なる営業事務の範囲を飛び越えた業務を次々と任されはじめた。この会社は大きくないし、大卒でさらに国立卒はかなり珍しいから、なんだか重宝されている実感はある。でもそれだけのことだ。学歴がどうであれ私自身の能力が高いかどうかは、また別の話だ。

なーんて、ちょっと面倒くさくなってきた私。社会に出たくない、働きたくないと駄々をこねていた頃の私はどうやら健在らしい。


それからは、知らないことの連続だった。
某就活サイトの管理人になり、会社の製造部門のシステムの使い方を教わり、Excelマクロの講習に放り込まれ、私は再び入社当初の頃のようにもみくちゃにされた。

悔しいことに、これがちょっと楽しいのだ。わからないことを追究するうちにあっという間に時間が過ぎていくことが、私の整えたデータで誰かが助けられることが、あまり使いたくない言葉だけど、やりがいを感じてしまう。

所詮小さな会社だ。所詮しがない事務員だ。所詮、社会の歯車だ。そう思ってやってきたのに、私は何も知らなかったんだな、と思う。今になってようやく、会社全体のことが見えてきた。歯車が次の歯車を回す先が、わかってきたのだ。
そうすれば、今何が足りないのか、次に何をすべきか、が自ずと見えてくる。0から始めた入社当初とは違って、今身につけているのは10を100にする仕事、なんだと思う。

私の歯車は、再び回りだした。この先当分は働くことになるであろう会社に、私ごときでも貢献できるかもしれない。そんな希望を持つことになろうとは、少し前の自分には想像すらつかなかっただろう。


この会社と正規の契約を結んだ以上、一員としてやるべきことは最大限やらねばならないのだと思う。それに、どうせ何もなくても暇なのだ。せっかくなら意味のあることを、何かのためになることをしてお給料をもらおうと、思えるようになった。

責任感というか、使命感のようなものがようやく、一年がかりで芽生えてきた。労働は面倒で、単なるお金稼ぎのための義務であることには変わりないけれど、何かしらの思いを抱きながら仕事をする、ができるようになってきた。
今は正直、わくわくしている。正真正銘初心者マークを取っ払って、さあ、次の一年は何ができるだろう。


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(4/25追記)noteのお題企画 #会社員でよかったこと にて受賞いたしました。ありがとうございます。

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