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『祝福のために』


空がぱかんと割れて、歓びや楽しみや何かあたらしいことが降ってくることを信じているからいつも、空を見上げることをやめないでいたい。南中の陽射しに目がくらみ、星あかり乏しい夜は暗闇に沈み、雨に視界はぼやけてついに目を落とす足もと、はね返るものをすくい取るには立ってはいられない、手にしようと膝をついては前に進めない。
空がぱかんと割れて降ってくるものを目いっぱいに手にしたいからいつも、空を見上げることをやめないでいたい。その無限の高さの先を想像し、漂う雲に意味づけをして、月の形に夢を映したい。
両手をおおきく拡げて、降ってくるものをのこらず手にしたい。足もとに目を落とし、降ってくるものにあなたが気づけないときは、さあ顔を上げてと伝えたい。それが今は難しいのならわたしは両手をもっとおおきく拡げてあなたの分までそれを手にしたい、あなたが顔を上げるそのときに、虹色の祝福のようにそれを手渡したい。それがしばらく難しいのなら、わたしは両手をできる限りおおきく拡げて、わたしの分とあなたの分の、歓びや楽しみや何かあたらしいことがこぼれ落ちないようにつとめていたい。いつかあなたが顔を上げたとき、受けとめきれないほどのおおきな祝福として手渡すために、わたしはそれを、両手いっぱいに抱えていたい。だから、高くなった空を見上げることを、これからも忘れることの、ないようにしたい。


『祝福のために』






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