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書くことを学んだら書けなくなった

30代も半ばになり、食事には割と気を遣うようになった。

野菜とタンパク質を多めに、糖質と脂質は控えめに。間食はしない。そんな私が最近は毎日チョコレートを爆食いしている。

全部「さとゆみゼミ」のせいだ。


書くことを学ぶほど書けなくなる

1月から「さとゆみビジネスライティングゼミ」を受講しています。
講師はライター・コラムニストの佐藤友美さん、通称さとゆみさん。ライター、もしくはライターを目指す人ならご存知の方も多いでしょう。

著書「書く仕事がしたい」はライターの入門書とも言える一冊(のはず)です。

講義は全12回で、今6回目が終わったところ。

で、回が進むごとに全然書けなくなるんですよこれが。一回の講義の情報量はそんなに多くない。でも重い。さとゆみさんの20年以上の経験から導き出された、「書くことの真髄」を一粒ずつ受け取っている感じ。

それを学べば学ぶほど、書けなくなる。

順番はこれでいいか。この文章で映像がイメージできるか。もっとフィットする単語はないのか。誰かを傷つけていないか。読者の大切な時間やお金をいただく価値がこの原稿にはあるのか。

教わったことが疑問として次々に浮かんでくる。自信を持って"YES"と答えられず、2時間考えても一文字も書けない。脳がガス欠を起こしてチョコレートを食べずにはいられない。こんな生活をしていたらゼミが終わる頃には太っているに違いない。なんてこった。

あまりにも書けなくて考えるのが面倒になったときは、さとゆみさんからもらった言葉を思い出す。

結局何が言いたいの?と考え続ければ文章は「強く」なる

3回目の課題で、「気になった一文、"推し文"を400字で紹介する」というのがあった。

真っ先に思い浮かんだのは、映画『正欲』で新垣結衣さん演じる夏月(なつき)が言ったとあるセリフだった。ネタバレになるから書かないけれど、「この人わたしじゃん」と思う一言があった。たぶん10年後も覚えてる。それくらいのインパクトだった。

でもそういう直感的に"ぶっ刺さった"ものって言葉で説明するのはすごく難しい。それに、なぜそれを推すのか説明することはある種の社会批判になりそうだった。表に出るわけじゃないとはいえ、そんなもの書いていいのか?「おめえみたいな一般人が偉そうなこと書くな」とボロクソ言われるんじゃないか?(※さとゆみさんはそんな言葉遣いしません)

だから別の一文にしようとした。それならちょうど良いエピソードも引っ張ってこれそうだし、共感してもらえそうだし、完成形がイメージできる。

でもそれでいいんだろうか。

私の記事を読んだ人たちからは、こんなことを言ってもらったことがある。

キレイにまとまっている
分かりやすい
スラスラ読める

それは大事なことだし嬉しい話だ。(あなたが「はあ?どこがだよ」と思わないことを祈る)
でも面白いだろうか?心が動いただろうか?当たり障りのない、毒にも薬にもならない文章なんじゃないか?

なんてつまらないんだ。「ふっ、おもしれー女」って言われたい人生だったぜ。

だから私は「おもしれー女」に挑戦することにした。もしも添削の赤字だらけになったとしても失うものはない。むしろ得るものだらけだ。小さくまとまってしまう自分を蹴っ飛ばせ。

そう思って、ぶっ刺さったセリフを紹介することに決めた。400字の最後をどう締めくくるのか、そこに一番悩んだ。結局私は何が言いたいのか、3時間考えて最後の一文を書いた。

講評はこうだった。

とても勢いのある文章で一気に読みました。最後の一文が光っています。

予想外だった。会社での評価も含めて、「勢いがある」だなんて言われたことはない。気になっていた「これは社会批判にならないか?」という点を質問したら、こう教えてくださった。

これは批判というより社会の仕組みに対する問題提起じゃないかな。問題提起は読み手の思考を促すから、良いことだよ。

問題提起!そうなのか。そんな偉そうなことをできる立場ではないが、それでもひとつ壁を越えられた気がした。

講義後は感想を投稿する決まりになっていて、私はこんなことを書いた。

「『で、結局私は何が言いたいの?』と自分に問い続けて書きました」

さとゆみさんはゼミ生の感想に一人ずつ返信をしてくれる。

その経験をしてくれたことはとても嬉しくて、ここに真剣に向き合うことを続けていたら、本当に文章が「強く」なります。そして、そういう強い文章しか生き残っていかない時代になります。これからもぜひ頑張ってー

さとゆみさんはよくAIの話をする。だから、これから生き残っていくというのは「AIに取って代わられることはない」という意味を含んでいると解釈している。

文章が強くなる。

そうなるまであと何時間考え続ければいいんだろうか。普通に吐きそうだ。

でも、「強い」書き手になるために、今日もチョコレートを爆食いしながら課題と取っ組み合っている。

こんな記事を書いているということは、つまり課題が全然終わっていないということだ。

YABAI.


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