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道案内

なぜだか知らないけど…。
ドイツで私はよく知らない人に道を尋ねられた。近所でも街中でも。

住んでいた時に限らず、帰国してから数年ぶりにドイツを訪れた時にも「中央駅に行きたいんだけど…」と声をかけられたことがあり可笑おかしくなった。私の方がずっと遠くから来た旅行者なのに!その街に着いたばかりだったのに!

ドイツの人は日本人より気軽に人に道を尋ねると思う。住んでいたのは10年以上前のことだから、ドイツでも今はスマホに頼ってるかもしれないけど。

…それにしても。
聞く人、間違えてませんか?
明らかに外国人ですよ!?
そもそも方向音痴だし。
知ってる土地を日本語で説明するのも下手なのに…それをドイツ語でなんて…。
私でいいの…?

と思いながら毎回対応していた。私の説明はとても簡単。だってそもそも難しいドイツ語はわからないし、話せないので。

「あー、そこ知ってる。あっち。まっすぐ。5分くらい。…徒歩で。右側。」

直訳したらこんな程度。指差して単語を並べてるだけ。本当に行き着けるのかは疑問だけどある程度の方角がわかればまたその先で誰かに聞いているのだろう。

聞くことは恥ずかしいことではなく、聞く相手も外国人だからとか区別もしないし、知らないと言われたら別の人に聞けばいいだけなんだ、きっと。

それならこちらもわかる範囲で教えて、知らなければわからないと答えればいいだけ。そう思ったら気が楽になった。

ある時のやり取りは超絶シンプル。

Daダー.(あっち)」
方角を指さしてこの一言を発しただけ。それなのに相手は、満足そうにDanke schönダンケシェーンと笑顔で礼を言って去って行った。

こういう日々の経験を、勝手に人の役に立てた!と良いように解釈し、カタコト過ぎるドイツ語で図々しく生活していた。

欲を言えばもう少しスマートに道案内できるくらいのドイツ語を話せるようになりたかったけど、まあそこは日本語でもできないんだから無理だろう。

でも…まだドイツ語会話で習ったこのフレーズはしっかり覚えている。

"Entschludigung,ich bin auch neu hier.エンシュルデイグン イッヒピンアウフノイヒア"
「すみません、私もここに慣れてないのでわかりません。」

一番得意なフレーズだったから。





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