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問題は高齢化よりも少子化~「令和5年版厚生労働白書 資料編」をよむ②

「令和5年度厚生労働白書 資料編」の冒頭には、日本の人口の推移が、古語2070年までの未来の予測も含めてひとつのグラフにまとまっています。

このグラフにはたくさんの数字があります。
総人口、生産年齢人口、高齢化率、合計特殊出生率。
高齢化率というのは、総人口に占める65歳以上人口の割合のこと。
2070年の高齢化率は、8700万人の総人口に対して、3347万人、ほぼ3人にひとり以上は65歳以上になるということです。

しかもこのグラフは、合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)が今と変わらない想定でできています。

ですが、今後さらに出生率が下がる可能性もあるので、2070年の「3人にひとり以上は65歳以上」という目安は、もっと65歳以上が多くなる可能性もあるわけです。

令和5年版厚生労働白書 資料編
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/22-2/dl/07.pdf

65歳というのは、「高齢化率」で使われるだけに、いまは「高齢者」として扱われます。
老齢年金をもらい始めることができるのも、いまは65歳から。
なぜ65歳から年金がもらえるかというと、65歳で「老齢」という保険事故が起こるということになっているからです。

保険制度は原則として、国の社会保険制度も、一般の生命保険制度等も、普段から保険料を納めておき、一定の困った状況になったとき(これを保険事故といいます)に、保険金をもらうという仕組みになっています。

厚生労働省の「年金のしおり」にもこのように載っていますが、この「年老いたとき」というのが保険事故になります。

厚生労働省「年金のしおり」
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/seido-shikumi.files/LN13.pdf

保険制度というのは、保険事故が起きた人にわたす保険金よりも、納められる保険料のほうが多いからこそ成り立つ制度です。

ざっくりとした話にすると、100人が1万円ずつ保険料を納めているとき、10人に保険事故が起こって10万円ずつ支払うときはとんとんですが、11人に保険事故が起こったら、もう払う保険金の原資はない、ということです。

つまり、これまでは65歳になるというのは少数派だったから成り立つことで、65歳以上が多数派になったら、それはもう「保険事故」ではないわけです。
結果、いまは65歳以上がもらえる年金も、見直さざるを得ないときがくる、というのが、このグラフからはわかります。

「昔の人は65歳から年金がもらえたのに、自分たちがもらえないのはずるい」という人もいるでしょう。

ですが、ずるい、ずるくないではなくて、日本の人口の構成と、保険制度という仕組みからすると、年金をもらえる年齢を引き上げざるを得ないのは、仕方がないことなのです。

ですが、これは相対的な問題なので、出生率があがり、人口が増え、65歳以上が少数派になれば、また状況は変わるわけです。

国が四苦八苦している出生率をあげるという大問題を、かんたんに解決することができませんが、私たちにもできることはあります。

それは子どもに優しい、子育てをしている人に優しい世の中に少しでも近づけること。

厚生労働白書の資料編には、保育所等の数の推移がわかる資料もあります。
これを見ると、子どもの人口は減ってきていますが、待機児童解消のために、保育所は確実に増えてきているのがわかります。

私も娘ふたりを育てて来ましたが、ひとり目の子を産んだばかりのころは、どうすればいいかわからず、出産したことに前向きになれなかった時期もありました。

それが楽しめるようになったのは、保育園のサポートや、保育園で知り合った人々とのご縁があったからです。

年金がもらえなくなる、医療費が高くなる、という現状に文句を言っても、この未来のグラフを変える力にはなりません。
そのかわり、今の状況を変えられることが、少しでもできたらいいなと思います。

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