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はばたけ、出版企画書!!      ~アイルランド絵本パック・三冊目~

『The Pooka Party』

はじめてこの本を手にした時、やはり目につくのは色彩豊かなイラスト。
「いやっ、この本めちゃめちゃ可愛いじゃん!!」
とおもわず興奮してしまいました。
もうページをめくって絵を見ているだけで楽しい。
プーカというのは、アイルランドの変幻自在な妖精の一種で、伝説では恐ろしい見た目を持ち、人間に悪さをするとも恩恵をもたらすとも言われています。そんなプーカですが、本書ではしばらく友達と会っていないのでさみしくなって、パーティを開くというかわいらしいストーリーに仕上がっています。
「アイルランド絵本パック」で二冊目にご紹介した絵本と同様、文字数も少ないので低年齢児童対象です。

以下、『The Pooka Party』の出版企画書です!


「The Pooka Party」 企画書
【原書情報】
原書名:The Pooka Party(プーカのパーティ)
出版社:The O’Brien Press
刊行日:2018年10月22日
ページ数:32ぺージ
ISBN-10: 1788490002 ISBN-13: 978-1788490009
 
【タイトル案】
プーカのパーティへようこそ
 
【書籍概要】
(あらすじ)変幻自在なアイルランドの妖精、プーカ。山の中でひとり楽しく暮らしていたけれど、ある日、友達が恋しくなってしまう。そこで、パーティを催すことを計画する。当日、準備万端で友達を待つが、いっこうに現れない。悲しくて眠ってしまった頃、みんなが到着する。プーカも起きてきてパーティが始まり、家はにぎやかになる。すると、いたずら好きの妖精、ゴブリンがケーキを取って行ってしまう。追いかけたプーカ達とゴブリンのケーキ投げ合戦が始まる。騒がしくしたので月に怒られ、ゴブリンが謝って一件落着、パーティ再開となる。パーティが終わって眠りにつくプーカは、もう寂しくない。
 
 本書を手に取った時、まず目を惹かれるのは色彩豊かな挿絵ではないでしょうか。淡い色調のイラストとタイプライター調のレタリングが美しく融合し、細部に至るまでユーモラスな怪獣たち、妖精たちがいきいきと描かれた作品です。2019年にCBI児童図書賞およびアイルランド図書館協会賞のショートリスト、2020年にIBBYオナーリスト、2019年にはブラチスラバ世界絵本原画展出展作品に選出されるなど、アイルランド国内外で高い評価をうけています。
 アイルランドではおなじみの、変身巧みな妖精、プーカが主人公です。伝説では恐ろしい容姿をもち、旅人に悪さをするなどむしろ邪悪なイメージで捉えられてきましたが、本作では一変してヤギの姿を基本に、かたつむりに変身したりして愛らしい姿で描かれています。普段は一人でいることを好みますが、突然友達が恋しくなってしまいパーティを催すことにするという、なんとも人間味のあるキャラクター設定がされています。パーティがおひらきになるとプーカの寂しい気持ちは癒され、次のパーティを楽しみにしながらまた一人暮らしの生活に戻るというところで話は終わります。本書でのプーカの姿をとおして居場所を得ることへの安心感を描写しつつ、一人時間を持つことを好意的に捉えており、現代人の価値観ともマッチしていて、読者が共感しやすいテーマとなっているのではないでしょうか。
 
【対象読者】
児童。対象年齢は未就学児から小学校低学年までを想定。

【仕様】
横220mm x 縦281mm。予価1500円。
 
【著者プロフィール】
Shona Shirley Macdonald(ショーナ・シャーリー・マクドナルド) 作・絵 
スコットランド出身、アイルランド・ウォーターフォード県在住。エジンバラ芸術大学でアニメーション制作を学ぶ。本作で絵本作家としてデビューし、現在は主に児童書の挿絵を手掛ける。本作が2020年IBBYオナーリストに選ばれたほか、挿絵を担当した「Girls Who Slay Monsters」(2022年)がKPMGアイルランド児童図書賞 の2023年ショートリストに、「An Féileacán agus an Rí (The Butterfly and the King)」(2019年)が2021年、アイルランド語児童文学賞およびアイルランド図書館協会賞(10-13歳部門)を受賞した。
 
【訳者プロフィール】
梁池真世(やなちまよ)
東京都出身。アイルランド在住。大学在学中に舞台女優をめざし、演劇養成所に入所。養成所卒業後、1999年に演劇の本場イギリスへ。ロンドンの演劇大学サーカス学科へ進学し、学士号取得。在学中の怪我によりサーカスの道を断念し、帰国。アイリッシュ音楽に興味を抱き、都内でアイリッシュフィドル(バイオリン)のレッスンを受け始める。2007年に渡愛。2009年、リムリック大学大学院伝統音楽演奏科に進学し、首席で卒業。以後、市内のパブでセッションリーダーを務めるかたわら、伝統音楽バンドGIRO-Galway International Retro Orchestraを主宰。韓国在住の知人よりYouTubeチャンネル内の日本語字幕の翻訳を依頼されたのきっかけに翻訳に興味をもつ。以来クラウドソーシング等を介してフリーランス翻訳家として働く。2人の子供をバイリンガルにするべく、絵本の読み聞かせを日々の生きがいにしていたこともあり、2021年より朝日カルチャーセンターの絵本翻訳入門講座を受講し、現在に至る。第28回いたばし国際絵本翻訳大賞にて最終選考まで残る。現在は海外で出版された絵本の中からアイルランドに関連する絵本を選出し翻訳した「アイルランド絵本パック」を作成中。

【類書】
「ジェイミー・オルークとなぞのプーカ」
 (トミー・デ・パオラ 作・絵 / 福本友美子 訳 / 光村教育図書 / 定価1500円)
「プーカの谷 アイルランドのこわい話」
(渡辺洋子 編・訳 / 野田智裕 絵 / こぐま社 / 定価1200円)
「メロウ」 (せなけいこ 再話・絵 / ポプラ社 / 定価1500円)
 
「ジェイミー・オルーク」と「プーカの谷」にはどちらもプーカが出てきます。「プーカの谷」には3つの話が収録されており、そのうちのひとつは「ジェイミー・オルーク」の話と似通っていて、プーカについて古くから伝わる話の中でもっとも頻出する話型です。生前悪行を働いたためプーカとなり、善行をして感謝されると魂が解放されるというあらすじです。本書のプーカは昔話から離れ、独自のストーリー体系を築いている点においてユニークといえます。「メロウ」もアイルランド伝承には欠かせない半魚人の精霊が登場します。こちらも昔話が元になっていて、メロウと人間との関わりを描く物語であるため本書との差別化を図ることができると考えます。

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