創作怪談 『シミ』

天井のシミがなんだか顔に見える。
シミュラクラ現象とか言うやつだ。

私はソファーに横になって、昼寝をしていた。
ソファーに寝転がると丁度シミが見える。
特に気にもとめず、休みの日は毎回ここで昼寝をしている。

だが、ここ最近シミが段々と大きくなっているような気がしていた。
最初は、10円玉ぐらいの大きさの楕円形のシミが3つ並んでいたはずだ。
それが一回りほど大きくなっている気がする。
 気のせいだとは思うが、なんだかそうは思えなくなってきた。
というか、元々もこんなシミあっただろうか?
それさえも曖昧だ。

ピピピッというスマホのアラームで目が覚めた。
昼寝をしすぎると夜寝れなくなるので、毎回アラームをつけている。

アラームを止めて欠伸をしながら伸びをしながらシミを見ると、やっぱり寝る前より少しだけ大きくなっている気がする。
ほんの少しだが、目の部分に見える二つの楕円が、少し縦長になっているような気がした。
 
きっと気のせいだろうが、気になってしょうがない。
寝転がったままの体制で、スマホで天井を撮って見る。
 記録しておけば、気のせいかそうでは無いかはっきりするだろう。
そう思っていたのだか、次の休みにはすっかり忘れていた。
 休日の度にそのソファーで寝ていたし、そのシミもしっかりとみていたのだが、写真を撮っていたことを思い出したのは、それから随分と経った頃だった。
ふと見上げた天井のシミがかなり大きくなっている。
これは気のせいではないと確信があった。
一応、撮っていた写真と比べてみる。
明らかに大きくなっている。
5階建ての2階なので雨漏りでは無いとは思うが、水道管か上の階の人の水漏れとかだろか?
後で管理会社に連絡するかと思いながら一旦寝る。疲れているせいか、すぐに眠ってしまった。

アラームが鳴る前に目が覚めた。
狭いソファーで寝返りも打たず、横向きに寝ていたせいか、かなり身体が強ばっている。

仰向けになり伸びをすると、例のシミが目に入った。
あ〜、そうだ連絡しなきゃな。

シミがさらに大きくなっている気がする。
少しぼーっと眺めていると、何だか段々とこちらに浮き出てきているように感じた。
まるでこちらに迫って来るかのように……
 見間違いかと思い、目を擦る。

それでもやはり、顔の様な3点のシミがじわりじわりとこちらへやってくる。
異様な顔がこちらへと迫って来ている。
 
その顔はもう目前に顔があった。

その顔は私の顔と重なる直前に、霧の様に消えていった。
驚き動けず、ソファーで仰向けになったまま天井を見つめていた。

天井にあったはずの顔のようなシミは、もうそこには無かった。










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