創作怪談 『憑いている者』


私には霊感がある。
どうやら母方の家系にそのような仕事をしていた人がいたらしい。
結構はっきり見えるタイプで、子どもの頃に家族や友達に話しても嘘つき扱いをされ、これは言ってはいけないものなのだなと理解した。

唯一、母方の祖父は理解してくれていた。
祖父は霊感がある訳ではなかったのだが、祖父の母、私にとっての曾祖母にはそれがあったらしいく、曾祖母から色々と聞いていて、祖父は対処方法を知っていた。

それなりに怖い思いもしてきたのだが、祖父の助けもあり、それなりに対処できるようになっていた。
基本は無視、これが一番だ。

大学時代の友人Aには、明らかに霊が憑いていた。
少し年配の女性がAの後ろに立ち、Aの両肩に手を置くようにいる。
最初は所謂、守護霊的なものかと思った。

Aのことを随分大事にしているというのはわかるのだが、何故だろう?
その女性の霊がとても怖い。

Aが最初に話しかけてくれた時、品定めをするようにこちらを見ていた。
他の学友達に対してもそうだ。
入学してすぐの頃、同じ学部の数人でずっと一緒に行動していたのだが、
一人、特に気に入らない友人がいるようで、睨みつけている。
その子Bは、Aと高校の頃からの付き合いだそうで、一見仲は良さそうだったのだが、BはAに嫌味を言うことが多く、AもBに対して少し苦手意識があるようだった。

そういう事なんだろうなぁと思いつつ、基本的に霊感があるなんて話はしないようにしているし、友人同士の関係に首を突っ込む気にもなれず、Aに憑いている女性の事も、AとBの関係についても、口を出さずにいた。
時間が合えば友人たちと遊びに行くのだが、Aは実家住まいで門限があるらしい。
大学生にしては早い時間だったため、Aだけ先に帰宅する様なことが多くなり、Aはグループか少し距離を置かれはじめていた。

Aの後ろに憑いている女性は少し怖かったが、昔から霊を視ているわたしにとって、その女性より、Aが居なくなった途端に悪口を言い出すBや他の友人たちの方が怖かった。

私はAと2人で行動することが増えた。
大学にはそのグループの他にも色んな人がいる。
新しく仲の良い友人たちもできた。
前の時とは違い常に一緒にいる訳では無かったのだが、Aとはずっと一緒にいた。
後ろの女性の霊は変わらず品定めするような目で見ては来るのだが、A本人と一緒にいるのは居心地が良かった。

試験期間の少し前、2人してやばいねぇと言いながら、数日間、私の家に泊まりの勉強会をしようということになった。
私は一人暮らしで、大学に近いアパートを借りていたが、Aは実家住まいで大学からは少し遠いので、私の家で勉強会を行う事に決めたのだが、直前になって、やっぱり私の家じゃダメだろうか?
Aはそんなことを言い出した。

どうしてなのか聞くと、家庭の話をしてくれた。
今まで聞いたことが無かったのだが、Aは母子家庭らしく、母親は随分と過保護なタイプらしい。
門限が厳しい理由がわかった。

結局、Aの家にお世話になることになった。
Aの家は少し古い一軒家だった。
彼女の亡くなった祖父母の家らしい。

母親はまだ仕事だったらしく、家には誰もいなかったので、とりあえず勉強しようと、彼女の部屋で参考書や先輩から貰った過去問なんかを使い勉強をしていた。

 日も暮れ始めた頃、トントンと、彼女の部屋の戸を叩く音がした。

部屋の戸が開くと、私は愕然とした。

Aの母は、よろしくねぇ〜なんて声をかけてくれて、コンビニのだけどと、スイーツも買ってきてくれた。
すぐに、夕飯を作るねと言って、笑いかけてくれる。
すごく優しそうないい人の様に見えた。
だけど私は少し怖かった。

 何故なら、Aの母親はAの後ろにずっと憑いている女性だったから。





 




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