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つらつらと考えていたことが言葉になった

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#きのこ

ドクツルタケの物語

ドクツルタケの物語

日が暮れて、冷たい風がすーっと吹いた。落ち葉がかさこそと舞い上がった。

美しい女が、音もなく、そこに立っていた。真っ白な笠をかぶり真っ白な着物を着ている。足元には、6歳ぐらいの子どもが、まとわりついている。

子どもを連れて村に着いた女は、ある家の前に立ち、静かに戸をたたいた。

「ごめんくださいまし」

そこは村長の男の家。戸を開けた村長は、美しい女がそこにいるのを見て、目を見張った。

「旅

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お目当てのきのこが消えてて1日へこむ

お目当てのきのこが消えてて1日へこむ

9月半ば。朝外に出て「あ、空気が秋だ」と感じた最初の日。夏の寒い日とは違う、はっきりと秋、な日。この日にどかんと始まりました。きのこ祭り。

夏の間は暑さと晴れ続きで、全くきのこに出会わない日も多く、出会えても常連の地味めなきのこがちらほら程度。少し涼しくなって雨も時々降るようになって、だんだんときのこの種類が増えてきたなー、と思っていたら、いきなりやってきました。あっちもこっちも目立つきのこがぽ

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きのこに見る自分

きのこに見る自分

きのこに興味を持つ前は全く気づきませんでしたが、きのこファンは実に多い。17,000人を超える人が登録しているFacebookの「きのこ部」ではきのこ好きがきのこについて日々自由に投稿し、インスタにはきのこ写真をあげる世界各地のきのこ好きがわんさかといます。きのこが好きという気持ちをそれぞれが育みながら、きのこ好き同士が時には国境を越えてつながりあって互いに学びインスピレーションを与えている感じが

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あなたは、だれ?

あなたは、だれ?

PictureThisという草花の画像診断アプリ(有料)があります。中国杭州が本社のAI会社Glorify(2009年創業)の開発で、草花の写真をアップするとほとんど待つ時間なく、その草花の名前、性質、育てる場合のポイントなどの情報が得られます。「ポケットの中の植物学者」という名前の通り、非常に精度が高く、野生の草花が溢れる軽井沢生活にはなくてはならない相棒になっています。

きのこに興味を持ち始

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きのこ探索の洗礼:蚊

きのこ探索の洗礼:蚊

このところ、1日1度はきのこを見にいかないと落ち着かないようになってきました。

見つけた時の、わあ!という興奮の気持ちと、今日も出会えてよかった、という安堵の気持ちが混ざり合う感じ。恋のような、子供の成長を見守るような。どきどきとあったかな気持ちの両方がそこにある。これがファン心理というものなのかな。

今日出会ったタマゴダケ(たぶん)ファミリー

本業は花を扱う人なのですが、最近の正直な心は、

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きのことの出会い

きのことの出会い

軽井沢は山の中の町。天気が変わりやすく、雨が多く、前が見えなくなるような霧もしょっちゅう出ます。

住む前は、高原のようなさらっとした気候のイメージがありましたが、そういう日は少なく、ほとんどの日は水分たっぷりの空気を肌いっぱいに吸い込んでいる感じ。今年は梅雨がとても長いので、ことさらそう感じるのかもしれません。

雨が降り止んで、少し日が差してきたかな、と感じたら、「それっ、今だ!」とばかりに散

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