Mayuki Shonaka

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民主主義の防波堤に

真っ白な雪をたたえた遠くの山脈がきわやかに映える信州の青空に、春の旋風に吹きあげられた桜の花が、ふわりふわりと円舞します。そのさまはまるで、晴天の空から優美に舞い落ちる、粉雪のよう。歌舞伎の壮大なスペクタクルに見紛う、浮世離れしたこの絶景は、しかし信州の春にとって、ごくありふれたものでしかありません。 この4月より私は、新聞記者になりました。勤める先は、長野県の地方紙・信濃毎日新聞社です。「県紙」の中での規模でいえば、静岡新聞に次ぐ2番目の発行部数約41万部。神戸新聞よりも

    • 【劇評】「團菊祭」五月大歌舞伎 初日

      「團菊祭」。それは、9代目市川團十郎と5代目尾上菊五郎の功績を顕彰する特別興行。ふたりは、明治期に歌舞伎の近代化を成し遂げた、偉大な歌舞伎役者でした。 本年5月2日は、3年ぶりに、歌舞伎座に「團菊祭」が帰ってくる吉日。そのためか、昼過ぎの銀座界隈には、こざっぱりと和服に身を包んだ男女が行き交い、あたかもハレの日を思わせるような賑々しさが漂っていました。 歌舞伎座・正面玄関の、瀟洒な紺地ののれんをくぐった私は、場内に立ち込める祝祭の熱気に、はっと息をのみました。 ――

    民主主義の防波堤に