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ローカルこそ戦略を持たなくちゃ

私は神戸の端っこ、もう少しで三木市、という片田舎で育ちました。

故郷を愛してはいますが、その一方で、
地方の観光戦略に対してどうしようもない歯がゆさを感じることがあります。
それが、

自らを客観視できないままに発する
「ここは本当にいいところ」というセールストーク。

乱暴な言い方をすると(ごめんなさい)、
他方に正面から向き合うことなく(すみません)、
盲目的に自分たちのエリアを世界一だと思い込んでいる(許してください!)。

そんな疑問の視点を授けてくれたのは
長い東京暮らしの中で出会った、多くの地方出身のビジネスマンたちでした。

知人に、那須と東京、そして世界中の都市を、ちょうど3分の1ずつ行き来して暮らす人がいます。
彼の本来のベースは栃木県の那須。
那須を本拠地に、大人気のチーズケーキブランドをゼロから育て上げ、
会社を退いた今でも多くの人々からそのノウハウを請われ、伝え続けています。

ブランド成功の秘訣は多々あったでしょうし、もちろん彼の優れた経営センスが最たる勝因です。
が、私はこの方がよく口にする

ローカルの良さは旧態依然を守り抜くことではない

という言葉が真実ではないかと思っています。

近隣の人気エリアである軽井沢に追随しなかった那須。
広大な土地を擁する、野趣あふれる魅力的な風景。
ゆるキャラやB級グルメが介在出来ないような潮流。
……そんな雰囲気を、今や街の名士ともなった彼が牽引しているように思います。
商品のパッケージに雄大な那須の風景写真をシンプルにあしらったり、
世界的デザイナーと組み、
デザイン誌や建築サイトで紹介されるような店舗やオフィスを創るなどの手法は、
まさしくローカルを正しく“武器”にしている。
無意識のうちに那須人気を押し上げているように感じるのです。

そこにあるのは、時代に合ったローカル戦略です。

企業の企画系で働く人なら当然のことですが、
何か新たなプロジェクトを立ち上げる際には、

1. 誰をターゲットとするか
2. 最終目的地をどこに定めるか
3. 途中、どのようなタイミングで見直しを行うか

など、KPI(重要業績評価指標)を定めます。

分かりやすく恋愛に置き換えるなら、
「押して押して押しまくれ」的な昭和戦略ではなく、
「彼女(または彼)の趣味は? ファッションの好みは? 行きたそうなレストランは?」などと考えてから提案し攻めていく、あの感覚。

なのに、往々にして
地方観光経済の危機を憂う地元ラブなお役人様たちは、

・この地は、人情と優しさでは他に負けない
・空気が最高にいい
・伝統と歴史がある
・獲れたて新鮮な美味がある

と自信満々におっしゃる。
畏れながら申し上げます。
これらの言葉、主語をどの土地名にしても通じます。
日本だけでなく、おそらく世界中、ローカルの良さとはそういうものです。

今後、日本が観光国家を本気で推進していくときに、
「なんだか日本って、どこ行っても似てるよね」
とはるばる来日してくれる人々に言われないためにも、

自分たちの土地が持つ本当の魅力とは何か

について今、
死ぬ気で考えなくちゃいけないときなのではないでしょうか?

軽井沢の「星野リゾート」も
直島の「ベネッセ」も、
北欧ガストロノミーを世界のトレンドへと変えたレストラン「ノーマ」も、
土地愛は深いながらも、常に世界と自らを比較しながら成長しました。

お手本はすでに、たくさんあります。
新時代、私は世界を見て回ります。
ローカルの素敵な可能性を、たくさん感じたいと思います。

#ローカル再生 #ローカル戦略 #フード #令和元年にやりたいこと

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。