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冷静と情熱のあいだで考える仕事論

新型コロナウイルスで世界がこんなことになるずっと以前から
出版業界の凋落っぷりは世間が知るところでしたが、
今回こそはもう、
ノロノロと状況を眺めつつ動けなかった出版社も、内外を取り巻く関連会社・関係者も、ハラをくくらなければならないんじゃないかなぁと感じています。

いい本だから売れる、いい企画だから売れるなんて、夢物語

になりつつあります。個人的な意見ですが、たぶんホントですよ。

伝え方を工夫し、時代を読み、あらゆる努力をしても存続が難しい。
そもそも、SNSやnote、YouTubeという個人メディアが勢いを増す中で
会社規模で多大な資金を投入して作り上げるコンテンツというものに
一般消費者がどれほど対価を払いたいだろうか、って思ったりします。

今もメディアのお仕事に関わることもありますが、作る側の意識として

どうよこんなコト、知らなかったでしょ?

的なニュアンスを出しちゃったら、アウトだと思います。
もう、制作の際にそう感じている時点で、アウト。
ならばどういう意識でモノを作るのかというと、難しい……。
正解はわかりませんが、ひとつの指針として「SNSと同じく、シェアする、共有するという意識」は大切ではないかと思っています。
なので、
SNSで検索すればこと足りる情報やムーブメントをドヤ顔で紹介する恥
だけは回避したいと思っています。無意識でやってたら……。恐怖ですね。

なかなか厳しい状況にある出版業界では、今、
長く働き続けてきた世代や、今後の出版業界に疑問をもつ人たちのパラレルシフトが始まっています。
40代でフリーになることを決断した私も、この部類に入ります。
私が在籍していた出版社だけでなく、友人知人の編集者が務める出版社でも
この動きは加速しているように思います。
中には、会社が提示する早期希望退職者制度に挙手しようか迷っていたり
その逆に、働き方だけじゃなく生きる場所も含めて変えようとする人も。

人生夢だらけの100年時代

が声高に叫ばれるようになった一方で、
40代以降でこれほど悩む人が多いというのは、あんまりだなーと思います。
辞めちゃった私は、当初はまごまごドキドキしていたものの、
その後は「言ってたって仕方ない」と開き直り、楽しく働いています。
しかし、決断に至るまでの迷いの時間を振り返ったり、
今、「やりたいことってなんだろう」「辞めた後に食べていけるだろうか」と悩む友人たちを見ていると、
なんで我々の世代って、将来に対してもっと能動的に動いてこれなかったんだろうと、逆に疑問が生じます。

以前通っていた「Communica」という英語塾では、半年のレッスンが終わる最終回には
「my commitment」と称して、
自分の過去、現在、未来の夢を、ビジネス的な観点から具体的にプレゼンするという課題があったのですが、
受講生はほぼ全員、30〜50代の男女ビジネスマンだというのに
この課題に挑む時は判でおしたように

世界旅行とか犬を飼うとか。リタイア後の老人か!

というくらい、ゆるい夢しか語れないのでした。私もそうだった……。
それはちょっと、自分で自分に屈辱を与える時間でもありました。
だって、これまでたくさんの人々をインタビューしたり記事を作ったりして

人生を充実させる技をお伝えします!

みたいな顔して、過ごしてきたというのに。
結局、具体的な将来ビジョンを持たずにやみくもに働いていただけでした。

村上龍さんのベストセラーで「13歳のハローワーク」という本がありますが
今必要なのは、「40代からのハローワーク」です。
いや、文字にするとガチの職業斡旋所「ハローワーク」みたいですが、そうではなくて
やりがいとか生きがいとか、そもそも私はなんのために働くのかとか、
いやもう、働くことにそれほどやりがいを感じないんだからせめて人のために生きるすべはないかなとか、
自分の人生と労働の関係を棚卸しするごとく、前向きに考える機会を持たなくちゃいけないんじゃないかなぁと思います。

ハローワークではなく、ハローreワーク

「re work」→働き直し、という感覚でリワークすることが容易になれば
人生が多少長くなろうとも、楽しく前向きに過ごしていけるのではと思うのです。

お金のことや住まいのこともあります。それから家族との関係も大切。
そこは冷静に考えなくてはなりません。
一方、「家族のためにやりたくない仕事をずっと続ける」「自信がないからこのままでもいい」というんじゃなく、
やっぱり、仕事(でも恋愛でも介護でも社会貢献でもなんでも)には情熱をもって取り組まない限り、惰性の作業にしかなりません。

そろばんも得意だけど、目の前のコトがおもしろくて叫びそう!

そんな20年後、30年後を、本気で目指していきたい。そう思っています。

#食の仕事 #働き方 #COMEMO

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。