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かわいいやつめ。

私は子供のころからありきたりなこの名前が好きではなかった。

まゆみってよくあるでしょう?
何かに登録するときも、すでにこの名前は使用されていますってよくでるし。
クラスに必ず二人は同じ名前の子がいたし。

何だか平凡で。私の人生もこう平凡に過ぎますよって言われてるみたいで。


小学生の時に自己紹介を掲示することがあって、父親に名前の由来を聞いたことがある。
真実を見極められる自由な美しい心を持った子になってほしかったから。
父親はそう言った。

いいじゃないか。今そう思ってくれた人がきっといるだろう。

残念。

これは父親の嘘なのだ。
娘のキラキラした問いに後ろめたさを感じた父親のとっさの嘘。
今同じことを聞いても同じ答えは返ってこないだろう。

今となってはただの笑い話だ。

時は過ぎ中学生の時、母親に自慢げに話したとき真実を知ることになる。
何の話をして名前の話を自慢したかは覚えていない。
母親は「ほんとお父さんはよくそんなウソが言えるね。お母さんの隣のベットの人が真由美だったから真由美でいいんじゃないかってお父さんが言ったんよ。」と言った。

特に何のかかわりもない、たまたま隣にいただけの人。
何の良いエピソードもない。
せめてすごくキレイな人だったとか、とても優しくしてくれたとか・・。

そうは思ったが、さほどダメージはなかった。
子供ながらに人生そんなものだよな。と妙に悟ったのを覚えている。

あれから数十年。父親にこの話をしたことはない。
子供ながらに何だか父親をかわいいやつだと思ったからだ。

今でも父親に名前を呼ばれると、この話を思い出し笑いがでそうになる。
おかげでこの名前を少し好きになりかけている。


余談だが、姉の子供が生まれるときに何日も悩んで名前を考えていた父親。
娘が軽蔑の念をもって見ていたことは、内緒だ。

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