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映画のはなし:ブロードウェイ版も最高!『キンキーブーツ』

初めて見たブロードウェイ・ミュージカルは『RENT』なんですけど、愛する『RENT』はまた別の機会に語らせていただくとして、今回は『キンキーブーツ』。

映画(2005年)→2012年にカナダでミュージカル初演→2013年ブロードウェイ進出の作品。ブロードウェイ公演以外にワールドツアーもやってるし、各国版も上演されてます。もちろん日本でも(日本版のことを考えるとちょっと悲しい気持ちになってしまう)。

イギリスの田舎町。由緒ある靴メーカーの息子チャーリーは婚約者とロンドンに引越す予定だったが、父の死により家業を継ぐことに。しかし順風満帆と思っていた家業は、実は倒産寸前だった。廃業だけは避けたいチャーリーは、在庫処分を目的に訪れたロンドンでドラァグ・クイーンのローラに出会う。女性用のハイヒールをムリヤリ履いて毎夜ステージに立つローラは、しょっちゅうヒールを壊していた。
ある日工場社員から「家業の立て直しを目指すならニッチ市場を開拓しろ」と提言されたチャーリーは、ローラや仲間たちの協力を得て「男性用のハイヒール」開発に着手、ニッチ市場の開拓とミラノでの商品発表を目指す。ショーのランウェイを歩くのは、ローラやドラァグ・クイーンの仲間たち。
しかしチャーリーは焦りから従業員たちとすれ違ってしまい、さらに新作発表会を行うミラノに向かう直前、ローラとも激しい口論を繰り広げてしまう。モデルとなるローラたち不在のミラノで、チャーリーは自分がショーモデルとして舞台に上がるが……。

映画版もブロードウェイ版も基本的なストーリーは同じ。
そして後発のミュージカルは、映画のセリフを上手に取り込んでいます。

さらにさらに!この作品、驚くことに実話がベースなんです!!
本当にイギリスの老舗靴屋さんが、起死回生のためにドラァグ・クイーン用(とかオトナの世界で使うような)ブーツなどの製作にシフトして、経営を建て直したらしい。なんか、嘘みたいな話。

私が初めて映画『キンキー・ブーツ』を観たのは、まだこんなにLGBTQが叫ばれていなかった頃。先にミュージカル『RENT』を観ていたので、ドラァグ・クイーンという存在は知っていたけど(『RENT』はエンジェルという超絶キュートなドラァグ・クイーンが登場する)、まだまだ物語の中の存在でした。
「男らしくしろ」と言われても、本当はドレスを着てメイクアップし歌って踊りたい、という信念を貫くローラの姿に、理由はわからないけど、すごく勇気づけられた。変な意味ではないんだけど、肩幅とか超ゴツいのにスパンコールのミニドレスを着て、別人みたいなメイクをして堂々と「これが私なんで!」と言える力強さにすごく衝撃を受けました。
同時に、ノーメイクで地味な格好だと話しかけることもできない繊細さにも心を締め付けられました。
そして、ローラと一緒にショーを彩っている「エンジェルズ」たちがかわいい!ギラギラ衣装にバチバチメイク。
これを着こなせる才能よ。

何度観ても元気をもらえる、とても素敵な作品。
映画版でチャーリーを演じたのはジョエル・エドガートン、ローラはキウェテル・イジョフォー。
今では『スター・ウォーズ』のルークのおじさんと、『それでも夜は明ける』のオスカー俳優。ちなみにキウェテル・イジョフォー、歌も上手(吹替じゃないよね……?どうなんだろう?)。

ブロードウェイ版のオリジナルキャストは、チャーリーがスターク・サンズ(『ペンタゴン・ペーパーズ』のメリルの息子)、ローラはビリー・ポーター。ビリー・ポーターは少し前のアカデミー賞では「タキシード・ドレス」で注目されていましたね。2023年のゴールデングローブ賞も素敵なベルベットのタキシードドレスで出席。

そしてブロードウェイ版で忘れてはいけない人がもうひとり。

作詞/作曲:シンディ・ローパー!

シンディ・ローパーのしっとり聴かせるメロディも、底抜けに明るくて前を向かせる曲調もこの作品にぴったり!もうとにかくどの曲も楽しくて(しっとり系も2~3曲あり)、舞台はライブを観ているようなスピード感。
そらもう当然の如く、ミュージカル『キンキー・ブーツ』は、トニー賞13部門でノミネートされ、ミュージカル作品賞やオリジナル歌曲賞を含む6部門を受賞。

というわけで、2015年に旅友ちゃんとニューヨークに行った際、「観よう!」とチケットを確保。
ちゃんとイギリス英語でさまざまな曲調のナンバーがジェットコースターのように過ぎていきます。映画より少しコメディ色が強めで、舞台映えする。
そしてラストは客席も手拍子で参加したり歓声が上がったり、もうなんか「セリフ聞き取れなくても超楽しいんですけど!!!!」と大興奮。
舞台ならではの演出も相まって、思わず「Yeah!」と声が出てしまうくらい、感情が爆発。

終演後に速攻でお互いCDを購入し(お姉ちゃんに「別々に買うの?マジ?」と驚かれた。顔が似てるのでよく姉妹に間違われるからだと思う)、めっちゃ聞き込みました。

久しぶりにシンディ・ローパーの曲を聞いたけど、やっぱり元気になるし盛り上がるし、シンディ姐さんは『グーニーズ』だけじゃないね!
嘘です。
「タイム・アフター・タイム」と「トゥルー・カラーズ」は超絶名曲。
スルメが大好きで日本びいきのシンディ姉さん、とっても繊細で愛にあふれた人なんだろうな、と再認識した曲たちでした。

パンデミック中のニューヨーク・プライドの時も、シンディ姉さん+世界中の『キンキー・ブーツ』ファミリーで「Raise You Up」のリモート動画が上がっていました。
この動画、今でもたまに見返しちゃうくらい大好き。
こんなことある?ってくらい全員がキュートでたまらない!

映画でも舞台でも、機会があればぜひに!

靴屋を建て直そうと必死がゆえにカラまわってしまうチャーリー、由緒正しき靴製造工場で働き、「ローラ」という超絶個性的な存在をすんなり受け入れる人、人生で初めてのドラァグ・クイーンという存在を理解できなくて攻撃的になってしまう人など、主役のふたり以外のメンバーも超個性的。

でもそこに悪い人は誰一人いないのです。
底抜けに明るくて前向きになれる、ハッピーな作品なのです。

ありのままで!
自分が変われば世界が変わる!

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