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冬雷震震

雪の降った翌朝は底冷えがして、暖房を入れてもなかなか部屋が暖まりません。
水道の水も切れそうに冷たくて、やかんをかけようとして注ぎ口からはねた水に、心臓がきゅっと縮こまります。
カーテンを開けると向かいの三角空き地も真っ白。午後にはここで子どもたちが遊んだりするのかな。


昨夜は雷でした。
ぶあつい布を裂くような、そんな音がしばらく続いて驚かされました。

冬の雷。
とくれば、「上邪じょうや」の「冬雷震震とうらいしんしんとして、夏に雪ふり…」という一節が頭に浮かびます。

読み下しがうろ覚えなのですが(本を処分してしまったせいです… 泣)、全文はこんな感じ。

上邪(じょうや)
我君と相知り(われ きみとあいしり)
長命に絶え衰ふること無からんと欲す
(とこしえに たえおとろうること なからんとほっす)

山に陵無く(やまにみねなく)
江水竭くることを為し(こうすい つくることをなし)

冬雷震震として(とうらい しんしんとして)
夏に雪雨り(なつにゆきふり)
天地合すれば(てんちがっすれば)

乃ち敢て君と絶たん(すなわちあえて きみとたたん)

山が崩れ大河の水が尽き、
冬に雷が鳴って夏に雪が降り、
天地が合わさってしまうような、そんな大異変が起きたなら、そのときこそはあなたとお別れします… 

情熱的、と言うには激しすぎるくらいの言葉の連なり。

私にはちょっと重いかな。
自分が男性でこんなことを言われたら、及び腰になって逃げ出してしまうかも(笑)
けれど、過ぎた季節を思い返してもそこまでのことはなかった身には、この熱さ、強さが眩しくも思えたのでした。


雪は午後には溶けだし、夕方までにほぼすっかり消えて、三角空き地は元通りの焦茶色の地面を見せていました。
子どもたちの歓声を聞くこともないまま、東京の雪はあっという間に去っていきました。

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