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更なる恐怖の時代

平安時代の貴族にとってさらなる恐怖は地方で頻発する武士の反乱でした。
平将門しかり、藤原純友しかり。人を平気な顔して殺せる奴とか信じられないわけです。(もちろん平気ではないでしょうが、祟りが怖くないとかもう人間じゃない。)
さらにその向こう側にいる蝦夷の大酋長アテルイなんていうのは感覚としては鬼、獣、魔物に近いくらい。※1

ところが、この地方の脅威を感じつつも、近くの祟り(平安京に跋扈する怨霊)が怖くて、軍隊も警察も貴族からは成り手がいない。日本は国軍のない時代が長いのです。

で、手元に“犬“を使いはじめた。
傭兵と言ってもいい。源氏と平家ですね。特に源氏は源頼義、八幡太郎義家をはじめ代々優秀な棟梁が現れ、華麗な武勇伝を残しますが、結局扱いは、汚らわしい仕事をやる犬なわけで、それ以上ではない。この辺りは軍事を汚らわしい仕事と考える、現代の自衛隊の扱いまで続く日本人伝統の悪い癖でもありますが、ともかく上級貴族たちは毒をもって毒を制し、この「更なる恐怖の時代」にうまいこと対応したと思ったでしょう。
源氏・平家ら武家は都での栄達を望みつつ、仕方なく赴いた地方にその勢力基盤を固めはじめます。
結局それが、この「恐怖の時代」を終わらせる最大の力になるとは当初、誰も思わなかったでしょう。

何故ここのところ、こんなに熱心に古代~中世の部分だけ書いているかというと、もちろん「鎌倉殿の13人」などNHKの大河ドラマの影響もあるのですが、個人的に「平家物語」が好きというのが大きいのです。作者不詳ながら超大作、諸行無常というテーマもさることながら、主要登場人物のバラエティに富んだ千両役者ぶりと各々がもったコンプレックス、つまり「復讐者」であることがポイントです。
後白河法皇は完全にツキに見放された前半生を取り戻すべくどこで覚えたのか権謀術数の限りを尽くしますし、武家の平家は貴族の犬として何代にも渡って辛酸をなめてきた一族の借りを清盛が一手に返そうとします。彼らの望みはひとつ「人並みに扱われたい」です。「妖怪人間ベム」みたいなもので、これはせつない。泣けます。
辛酸をなめたのは源氏も一緒で、さらに平家に殺戮された末、潰されてますから、それはもう血に刻まれた復讐のDNAの物語で、この強烈な反動は頼朝、義経という歴史上の巨人を運命的に生むことになります。
その辺はまた書くかもしれませんが、「平家物語」いつか集中力のあるときに読んでみてください。
(2005.2.8初出)

※1 鬼、獣、魔物、ペプシ「桃太郎」から引用
  「桃太郎」時代の盗賊、異民族はまさにそれだったのだと思います。

【たんす屋の古代~中世考】
◆恐怖の時代
 https://note.com/mazetaro/n/necc41b776ca7

◆更なる恐怖の時代
https://note.com/mazetaro/n/n31e341e69e1f

◆いい加減と適当(1
https://note.com/mazetaro/n/n9064a5c9f8fb

◆いい加減と適当(2)
https://note.com/mazetaro/n/nc660bc6e93c3

◆将軍~GENERAL(前編)
https://note.com/mazetaro/n/nbba5de87d528

◆将軍〜GENERAL(後編)
https://note.com/mazetaro/n/n0e3dc3b8d351

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