【全文】ベガルタ仙台 渡邉晋監督 退任会見 前編

「12月7日の広島戦が終わり、仙台に戻りました。戻ってから、クラブから連絡を頂き、クラブの事務所にて話し合いがありました。そこでクラブの決断を通知され、それを私は受け入れるという形になりました。現役時代を含めれば19年、本当にこう長い間様々な経験をこのクラブでさせてもらいました。感謝の気持ちでいっぱいです。まぁ、こういう世界なので、常にこういう覚悟は持ってやってきたつもりです。この今持っている気持ちを、次の自分自身のステージへつなげていって、また『ナベ、面白いサッカーやっているな』っていうのを見せることができるように、私自身、また精進していきたいと思います。本当に長い時間、お世話になりました。ありがとうございました」

―就任6年、どのような思いで、どのようなものを築き上げたいと思っていましたか。

「ピッチで行われていることがすべてだと思います。もちろん、頭の中でいろいろ理想があったり、そこに届かない現実があったり。そういうものでのジレンマや積み上げていくところでの喜びとか、たくさん感じましたけど、我々はプロなのでプロセスを評価されるものではないと。すべてはピッチの上で起こっているものが、我々表現者としてのすべてなので、それを皆さんがどう感じるか。それだけだと思います。もちろんそこに結果を伴わせなければならないですし、私が6年間やってきたことを選手が思い切って表現してくれた、それがすべてだと思います」

―選手時代から長年過ごしたベガルタですが、どのような思いがありますか。

「これを話し出すと、ものすごく長い時間がかかってしまうのですが、簡潔に言わせていただくと、ありきたりですが感謝だけです。現役の時も怪我で苦しんだり、チームとしてもJ1昇格、J2降格、いろんなものをピッチの上で味わって、様々な経験をさせて頂きました。その後も、幸運なことにクラブに残って仕事を与えてくれた。それもクラブ。最後は監督にまでならせてもらった。逆に言うと、僕がクラブにどれだけ恩返しができたかというと物足りなかったと思うので、もっともっとクラブにいい恩返しができればよかったなと思います。でもそれも含めて、私の力不足だと思いますし、それでも期待してくれたクラブという存在があった。それに対しては感謝、このひと言しかありません」

―「クラブの決断を通知され、受け入れた」とおっしゃいました。どういう言葉で決断を伝え聞き、どう答えたのでしょうか。

「クラブの決断があって、それを受け入れた。それだけです」

―具体的に何か説明があったわけではないと?

「説明はありました。それはもう、私とクラブの関係の話になるので、それ以上のことはお伝えできません」

―「次の自分のステージ」について。現段階で思い描いていること、決まっていることがありましたら教えて下さい。

「まだ、本当にこの話があって1、2日なので正直私の下に、何か話があるというのはないです。次に何をしようかというのも、正直考えられないですし。これからゆったり考えようかなと思っている程度ですね。でも結局やっぱり僕もサッカーが好きだし、ピッチで選手を鍛え上げる、トレーニングしていくことが僕は好きだなぁというのが、この1日2日で感じることができたので、まぁ、おそらくどこかで球蹴りしていると思います(笑顔)」

―選手たちにはどう伝えましたか。

「まず、今年一年間のみんなへの感謝の気持ちと彼らを理想のところに引き上げることができなかったものの申し訳なさや悔しさを伝えました。後は、先ほど申し上げたように、僕もまた同じサッカー界でやっていくことになると思うので、その時は縁があれば同じチームで仕事ができるかもしれないし、その時はもし俺が誘ったら、『嫌と言わずに来てくれ(笑)』と。そんな話をしました」

―ホーム最終戦の後のあいさつで、ベガルタの次の25年に向けてという話もありました。ベガルタ仙台がどういうチームであってほしいと感じていますか?

「いや、それはもう、僕は去る者なのでそれを言う資格はないと思っています。ただ本当にお世話になったクラブなので、これから素晴らしい発展を遂げて欲しいと思いますし、そうなることを心から願っています」

―14年に緊急登板した時は、「Jクラブの中で一番経験がない監督だということは自覚している」という話をされていました。それから仙台で6シーズンやってきたからこそ得た経験は?

「まぁ、酸いも甘いも…。数多くの経験があったと思います。それでも恐らくこんなに長く辛抱してくれたのはクラブの方だと思うので。それに対して、僕が何か応えなければいけない立場だったと思います。なので、僕自身のことを言わせてもらえばものすごく大きな経験を、たくさんの経験を、貴重な経験をさせてもらった。でもそれに対して何か恩返しができたかなと思うと、僕の中ではやっぱり足りなかったかなという思いがあるので、どちらかというと何か経験させてもらった達成感よりは、そういった悔しさ。クラブに対して何かもっとできなかったかなという申し訳なさ。その方が多いのかなと思います。でもそれはけしてネガティブなものではなくて、これまで現役生活も含めて悔しさとか、自分自身の不甲斐なさをエネルギーにしてここまで歩んできた自負はあるのでまたどこかで『あ、あいつ。ベガルタのあの悔しさを糧に頑張っているんだな』という姿を見せられるようにしていきたいと思います」

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