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『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだら、一人旅に行きたくなった

いつかは絶対に読まなきゃならんな~と思っていた村上春樹氏の本を読みました。どうして村上春樹氏の中でもこの本を選んだかっちゅうと、単純にタイトルが気になったから。
ラノベとかだとよくあるやんか、この長ったらしいタイトル。でも純文学系でこういう長いタイトル珍しくない? ほんで、長いタイトルって、タイトル読んだだけで大概のストーリーを想像できてしまうもんやと思っててんけど、こいつは一味違うぜ。タイトルを読んだところで、何一つ情報が入ってこない。主人公の名前くらいしか情報が無い。
一体どういう内容なんや、と思って手に取りました。

簡単にあらすじだけ説明。
主人公は、「多崎つくる」。彼は高校時代、仲良し5人組に所属していた。つくるを入れて男が3人、女が2人。とっても理想的な5人組。唯一つくるが気にしていたのは、『つくる以外の4人全員の名前に、色に関係する漢字が入っていたこと』。色彩を持たない多崎つくるくんは、そこだけは気にしながらも、「もう二度とこんなに気の合う仲間には出会えないだろう」とまで考えていた。
しかしある日、突然、多崎つくるは、そのグループから距離を取られるようになってしまう。つくるは大変落ち込み、失意のどん底を経験したものの、なんとかかんとか這い上がってくる。
そして時は経ち、つくるくん、36歳。出会ったちょっと年上の女性『沙羅』と結婚したいと考えている。しかし沙羅は、「あなたは過去の出来事を清算する必要がある」と言い始める。
沙羅の言葉に促されて、多崎つくるは、なぜ自分があの素晴らしい5人組から排除されなければいけなかったのかを突き止めるため、当時の4人の元を訪ねていく……
みたいなお話です。

あらすじ、完璧すぎるくらい面白い。
一体あの日何が起こったのか? っていうのを、主人公と一緒に追いかけていくスタイルは嫌いじゃない。むしろ好き。読み進めていくうちに、なんとなくぼんやり見えてくる輪郭も面白い。

でもな~!!!!! 言いたいことは山ほどあるんだよな~!!!!!
とにかく、あらすじとストーリーの進行具合はめっちゃ面白いです。読んだら私の言っている意味も分かると思う。読んで損はない。と、思う、多分。


▼▼▼以下、読んだことがある人にしか分からない話をします。まだの人は読んでからこの下を見ることをオススメします。ネタバレ注意!!!▼▼▼








さっき散々言ったように、あらすじはま~じで面白い。
ただな~!!!!
言っちゃダメなんだけど、めっっっっっちゃムカつくんだよな~!!!!!!

え、村上春樹氏好きな人って、この文体イライラせずに読めるってこと? あまりにも温厚すぎないか? 私一文一文にめっちゃキレ散らかしちゃったんやけど。
詩的表現が嫌なわけじゃない。私だって装飾マシマシ、キラキラゴテゴテ派手派手文章大好きだし。だから、一個の現象を説明するのに遠回りしたり、急に回想入ったり、大袈裟なくらいの長い文章になったりするのも結構大好物ではある。問題はそこじゃない。

村上春樹氏、あなた絶対ミソジニストだろ。なんか知らんがめっちゃ女性のこと嫌いでしょ。知らんけど。
なんか選んでる言葉の端々から、女性嫌いっていうか、女性をバカにした感じがふわっと香ってきてめちゃくちゃ嫌やったんですけど。これ皆さん耐えれてるんすか? マジか。みんな寺で修業とかしてきたの?

別に私自身めちゃくちゃフェミニストなわけじゃない。別に女性も男性も同じ人間なんやから勝手に生きとけやって感じのタイプ。でも、この文体はなんかすごい、嫌いだったな。だって、読者が女性である可能性を微塵も考えてなさそうな書き方してない???  
なんか、男性登場人物を褒める時は、その人の人柄とか内に秘めたものとかを褒めるのにさ。女性登場人物を褒める時は絶対身体的特徴を入れてくるよね。意味の分からん性描写も多いし。いや、意味はあるんやけど。意味はあるんやけど、そこまで生々しい描写は要らんくないか。夢で見ました、それで済む話じゃん。なんでそんな、あんたの、主人公の夢の内容と、その後の体の状態なんかを知らなきゃならないんだ。その描写は確かにストーリーに深みを持たせてはいたけど、でもストーリーに直接関係あるかって聞かれたら、無いだろ、絶対に。ていうか主人公も、女性の体のことばっか言うな。内面を見ろ内面を。男にできるんだから、女にもできるはずだろ!!!

まあ色々言いましたけれども。
読んでよかったかと聞かれると、まあ、よかったに一票を入れます、私は。ストーリーは面白かったしね。ラストの感じは好き嫌い分かれると思うけど。まあ文体の時点でがっつり好き嫌い分かれるし、もうラストの好き嫌いなんか問題にはならないと思いますけどもね。ラストなんか途中からどうでもよくなってきちゃったし。

ただ、今回のタイトルにもしている通り、読んだ後は本当に一人旅に行きたくなった。自分を見つめ直す旅。スマホとかインターネットとか仕事とか人間関係とか全部ほっぽりだして、自分を見つめ直すためだけの旅。
ぼーっと電車に揺られながら、窓の外を眺めて、ぽつぽつ見える家の窓の向こうの人達の生活を想像したりする。自分の生活をどう改善しようか、と考えてみたりする。旅先でちょっといいお店に入って、数個の小鉢が並んだ品のいい定食を食べてみたりする。厨房で、丁寧に菜箸で料理を盛り付ける女将さんの手先を想像して、自分も家であんな風にしてみようか、と考えたりして、綺麗な料理を出した時に輝く家族の顔を想像してみたりする。
ゆっくり流れる時間が、ゆっくり自分の中に溶けていって、自分の一部になっていく感覚。もやもやしていた気持ちが、なんとなく落ち着いて、自分なりの答えになっていく感覚。
そういう感覚を味わいたいな、とふと思ったりする。ちょっと騒がしいダイナー、息が凍る北国の冬景色、人が行き交う駅のホームなんかの描写は、やっぱりちゃんと美しくて、『思いを馳せる』みたいな言葉がぴったり合う。

せっかく情景描写は美しいのに、そこに集中できないのは誠に遺憾ではありますがね!!!!!(再燃)
これって『色彩をもたない~』だけなんかな。他の本はここまでイラつかなかったりする? なんかちょろっとTwitterで情報収集した感じ、全部の小説がこんな感じらしいんやけど。だとしたらもう二度と読まねえぞ私は。

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