時代の波に乗る検索サービスとは何か議論してみた

ソクシル(https://sokusiru.com)という検索エンジンをやっている株式会社Rerightの松田です。元グノシー福島さんの言う「確実に来る未来に晴れているのか」「スケールできるビジネスなのか」の答えが見えない日々が続いていた中で、知見のある皆さんと議論させていただき、作るべきものの解像度が上がったのでnoteに残しておきました。

やや議事録的な内容にはなりますが、情報収集や情報検索、toCサービスの時代の流れについての深い考察だと思うので読んでいただけますと幸いです!

もともと解決したい課題

検索エンジンやチャットボットを作りたいのではなくて、アフィリエイトや企業メディアの台頭によって商品やサービスの評判をすぐに知れなくなった今のWebを変えたくて今の会社を始めました。

例えば次のようなストーリーにおいて感じる課題です。

「ニキビ跡にずっと悩んでいてTikTokでホリカホリカというアロエの化粧水が良いらしいと知る。コメ欄を見てもホントに良さそうか分からなかったが、Amazonで1,000円くらいで買えることは分かった。Amazonアプリで検索すると無香料と有香料があるらしく、レビューを見ても香りについてのコメントが多く本当にニキビ跡に効くのか分かんない。Googleアプリでググるけど他サイトの投稿の引用だらけのサイトとかが上位に来て信用できないし、結局は調べるのがめんどくさくなってやめる。この無駄な時間や思考をなくしたい」

これが原体験の一例であり、この課題に取り組み始めてからも、自分自身が10日に1度はこれを経験します(ただ書いててこの発生頻度はビジネスにするには少ないのではとも思いました‥)。

現状の検索エンジンの問題点

* 各情報を順序立てて整理できていない
* まずグルーピングをできていない
* 人気順に出てきちゃうだけ
* 現在は1個1個の記事に対して検索をかけているがそれだと価値が薄まっている。人は塊で捉えたい場合がある。
* キュレーションを一回ばらしてから整理する

PGCとUGC

* UGCが生きるのは情報が腐っていく分野(プログラミング言語や商品情報など)

PGC(Professionally Generated Contents)とUGC(User Generated Contents)。昔はプロの発信が多かったが、ブログやSNSの台頭でUGCが増えて情報の質が下がってしまった(というか大量の情報に検索エンジンが対応できなくなった)からPGCに戻っているという議論。

料理動画アプリのクラシルは(料理人が取っている訳ではなかったはずですが)PGCに近いと思います。

一方で、PGCだけではネットによる情報伝達は十分でなく、更新の激しいプログラミング言語の学習コンテンツや新着商品のレビューなどは情報の鮮度が大事です。だからこそQiitaや@コスメ、TwitterなどのUGCが必要でもあったということです。

しかしUGC(ブログなど)の情報は断片的でしかなく体系的に整理されておらず、またWikipediaのように修正もできないので、これをうまくまとめることにはチャンスがあるかもしれません。

ソーシャルコマースの可能性

* Shopifyのプラグインやアプリを研究したほうが良い
* newn社のhoursはソーシャルコマース
* Amazonでできていないのに‥

ソーシャルコマースというのはインスタグラムのようなSNSとECがくっついたもの(雑すぎ?)で、「企業のECサイト対消費者」という構図で買い物をするのではなくて「友達やフォローしているインフルエンサーが使っている商品・おすすめしている商品をアプリからダイレクトに買える」感じです。

InstagramだけでなくTikTokもShopifyと提携してEC機能の本格導入したし、ファッション領域のPARTE、ライブコマースもこの分野に入るという認識です。

商品レビューを信頼するかしないかは、その発信者の権威性や専門性の証明も要因の一つだと思いますが、自分が知っている人(友達やフォローしているインフルエンサー)からの情報かどうかも大きな要因だと痛感しています。

検索エンジンにしろECサイトにしろ、自身の繋がりをベースにした情報収集ができるソリューションができればそりゃいいのですが、例えば「自分のつながっている人&その商品を購入した&その商品のレビューをしている場合に、その人のレビュー上位に持ってくる」という仕組みだとマッチする率が極めて低いよねという判断でボツになりました。

newn社のhoursに関しては「友達と一緒に安く買おう」というグルーポン的なものなので「過去に誰々が買ったかわかる」というものではないのですが、これもソーシャルコマースに入るようです。

またEC分野はShopifyが「ECサイトを簡単に作れる」以外のソリューションを昔から色々提供しているらしく、想定するソリューションがないか後ほど調べてみる予定です。

無思考型サービス

* アットコスメを使うのは絞り込みして能動的に解決したい世代、LIPSを使いたいのは受動的な情報収集(いわゆるザッピング)のみをする世代
* ずぼら旅トラベルナウなどの無思考型サービスの台頭
* 時代の流れは無思考型サービス+レコメンド
* 飛行機が出てきてるのに列車や徒歩向けのサービスを作ってもスケールしたり世界は変えられない(列車や徒歩がなくなるわけでもないし、そこでマネタイズできないわけでもないけど)
* 情報収集における飛行機はTikTok

アグリゲーターの価値は下がっている

情報を集めることを生業にする人たちのことをコンテンツ・アグリゲーターと言うそうです。Google検索もこのアグリゲーターにあたります。

しかしこのアグリゲーターの価値は時代の流れとして下がっていて、今は各プラットフォームの中で検索するユーザーが増えているとのことでした。

要は、オンライン予約のスタート地点が、従来の検索エンジンから、特定の専門分野に絞って掘り下げていくバーティカル(垂直型の)サーチエンジン、いわゆるメタサーチへと移動しているのだhttps://www.travelvoice.jp/20180610-112120

ちなみにメタサーチとは、複数のサイトに掲載されている内容を一度に検索・比較できる検索のこと。LINEトラベルjpやトラベルコなどが代表的で、検索結果に出てきたプランを押すと外部の旅行サイトに飛びます。

なので良い検索エンジン(アグリゲーター)を作ろうとするのではなく、人々の情報収集行動にあったサービスを作らねばなりません。

時代の流れにあったサービスにする意義

冒頭でも触れましたが、今のソクシルのソリューションは「時代の流れに合う」「既存のソリューションを代替する」「市場を一気に独占したり、市場を創り出す」にはなり得ていないと感じております。だからこそ、未来に張れるアイデアを求めています。

おそらく今のソクシルでも磨き込んでいけば、ある程度のユーザーさんがついてくれて、物販アフィリエイトによりマネタイズも可能だとは思います(先行するノイズレスサーチなどは結構コアなファンがいらっしゃいます)。

しかしそれでは急成長し世の中を変えるような、いわゆるスタートアップ的な成功は望めないのです。このあたりの話はYJキャピタルの堀さんの書籍にも書いてあります。

今の時代の流れはD2C

* 情報伝達自体や単発の情報が価値を持つ時代ではなくっている
* 情報(というか商品)が信頼できるかどうか分からないし、判断するのが面倒だから自分たちでブランド作って商品つくって直販しようよ
* D2C=信頼できる情報のパッキング手段のひとつ

能動的な検索からレコメンドへ

* Z世代は検索しようとか、絞り込みたいという考えがない
* ドキュメントを探す時代からブロックを探す時代になる

人々は再びブランドを信頼するようになってきている

* そのブランドには主にインスタやTikTokなどのレコメンドで出会う
* 一部は能動的にGoogleで探しに行く
* そもそも信頼ってすぐに生まれないもの
* 短時間で信頼できる情報を取得するというのが、原理的に矛盾している

各ブランドへのナビにはマーケットがない

過去にWhereToSearch(https://wheretosearch.love)という「どのサイトで検索すれば良い情報に出会えるかに気付けるサイト」を作ったのは、検索におけるナビゲーションクエリ(自分の求めるサイトに辿り着きたい)に対応するニーズに答えるものでした。

しかしこのナビゲーションだけでは人は月額でお金を払ってくれませんし、一度ナビしてもらえば2回目以降は多くの人が自身で辿り着けます(「あのサイトなんだっけ‥」というニーズはあるにはあるのですが)。

とにかくこれも同じく、単体ではスケールできるビジネスにはならないというのが今の所の見解です。

結論

* パッキングする方法を考えるべき
* ブランドとして育てていくべき
* 信頼性の高いまとめサイト(真のキュレーション)

普段はTwitterで発信してます


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