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ゲーム性とは「選択肢」にあり!

ゲームの面白さ

 ゲームの面白さとはどういう所にあるのだろうか。これは今までにも様々な要素から説明されてきた。リスクとリターンだったり、成長と報酬だったりなどである。

私はゲームの面白さとは、「選択肢を選ぶ事」だと説明する。

複数の選択肢から選ぶという工程を、人はゲーム性と呼んでいるのではないだろうか。

ゲームにおける選択肢という要素について考えてみたい。

▲選択肢を選ぶことがそのままメインの要素になっているゲームもある。

選択肢の役割

 簡単なRPGを作ってみようと考えたことがある。プレイ時間3分でRPGに必要な要素を全て楽しめるようなゲームだ。

制作するにあたって、まず買い物は必要だろうと思った。しかし手持ちのお金でただ最強の武器を買うだけでは面白くない。使えるお金の範囲から、武器と防具のどちらを強くするか選ばせた方が良い。

次に探索だ。これも「探索」を選んだだけで終わりだとつまらない。探索する場所を選ばせて、選んだ結果で内容を変えたい。

最後に戦闘だ。始まった後は攻撃をひたすら選ぶだけだと味気ない。攻撃するか魔法を使うか道具で傷を治すか、選べる方が面白い。

という流れでゲームを作っていったらファミコンの「ドラゴンクエスト」とプレイ感覚がそっくりになって驚いた記憶がある。

この制作で、私はRPGの全ての要素にはプレイヤーへの選択肢が必要なのだと気が付いた。

RPGとは選択肢を選ぶゲームなのだ。

ただ要素があるだけではゲーム性は生まれず、プレイヤーが選択肢を選び、介入した結果が出る事でゲーム性が生まれるのだ。

選択肢を選ぶという行為そのものが面白いとも言える。


仮に、選択肢が全くないゲームはゲームと呼べるのだろうか。例えば、物語の頭から終わりまで全く選択肢は無く、プレイヤーができる事は物語を読み進めるのみのゲームを考える。

このゲームにゲーム性はあるだろうか。

私はこれのゲーム性を説明するのは難しいと思う。

だが、このゲームに選択肢があり、それによって物語が変化していくなら確かにゲーム性があると考えられるだろう。


ゲームのムービーシーンが長すぎる事が批判されやすいのも、ゲーム性が感じられないからだ。

ゲーム性が感じられないのは、ムービー中はプレイヤーが操作できるものが無く、選択肢が極端に少なくなってしまうからだ。

QTEはやらない事によるメリットが無ければ、常にやる以外の選択肢が無いので、特に選択肢が増えていない。

よって長すぎるムービーにゲーム性は生まれにくいと説明できる。


選択肢とゲーム性は密接に関わっているようだ。


ゲームのバランス調整について考えてみる。

色々な攻撃を選ぶ事ができるゲームでも、特定の攻撃だけが強すぎると、プレイヤーの選択肢は無くなる。

とにかく強い攻撃を連打して、敵を倒していくだけの作業感を与えてしまう。

プレイヤー同士で対戦するゲームの場合はもっと大変で、特定の強すぎるキャラクターしか対戦の場に存在していないという事すらありえる。

弱いキャラクターは対戦の場に参加すらできず、選択肢が無くなってしまうのだ。

だから、バランスの悪いゲームは面白くなりにくい。


バランスさえ良ければ面白いという訳では無い。プレイヤーキャラクターが一種類しかいない対戦格闘ゲームは確かに最高のバランスがあるが、選択肢が無くて面白くない。「空手道」を悪く言いたい訳では無いが……


弱体化のバランス調整が批判されやすいのは、今までできていた選択肢が減ってしまい、結果として面白さが減ってしまうためだと考えられる。


ゲームの面白さの構造を、選択肢という観点から説明できる事がわかる。

選択肢は、それそのものが面白く、プレイヤーが関与する方法を作る役割があるのだ。

選択肢という視点でゲームの面白さを分析する

 選択肢がゲーム性を生み出しているのなら、既存のゲームの面白さの仕組みを選択肢で説明することもできるはずだ。

コンボ系格闘ゲーム(以下、コンボゲー)が一時期とても流行っていた理由を考えてみたい。

コンボゲーとは技から技を繋いでコンボを作り、非常に長い時間攻撃をし続ける対戦アクションゲームの事だ。

コンボゲーの面白さとはどのような点にあるのだろうか。


それは攻撃側の選択肢の多さである。

コンボゲーは多くの技を繋いでいく性質上、行える攻撃のレパートリーが幅広い。

攻撃終了時の位置関係や相手に与えるダメージから、状況に応じて適切なコンボを選ぶ必要がある。

コンボの難易度などの考慮する点が多く、数多くの選択肢を選ぶ楽しさを味わえる。

コンボをする事そのものも楽しい。

非常に短い時間に次々と技を選んでいく行為なので、その忙しさからハイになるような興奮感を与えてくれるのだ。


逆に、コンボゲーが面白くない理由も説明できる。

防御側の選択肢の少なさだ。

攻撃を受けている最中は「やられモーション」になっていて操作ができないため、選択肢が極端に少なくなってしまう。

長いコンボを受けている側はまったく面白くない。

これを解決するためにコンボ中に反撃できる「バースト」のようなシステムもあるが、使用回数が少ないため選択肢を得られる機会は限られている。

この点に関してはむしろ防御方法の選択肢を広くし、コンボをされるまでの時間を面白くすることで対処しているゲームが多い。


このように、ゲームの面白さは選択肢という視点から分析する事ができる。

プレイヤーが得られる選択肢の多さは、そのままゲームプレイの面白さに関わっているのだ。

▲多様な技を高速で選んでいくのは面白い。©ARC SYSTEM WORKS

ゲーム性と選択肢

 ゲームの要素を作る際には、必ず「プレイヤー側に選択肢があるか」を考えなければならない。

対処法が一つしかないアクションゲームのボスは、対処をさせられている印象をプレイヤーに与えてしまう。

その要素に対して、プレイヤーにどのように攻略させるのかを幅広く考えていきたい。


また、選択肢が多すぎる事は必ずしも良い事ではない。ゲームに慣れていない初心者に最初から選択肢を与えすぎると、どうしていいのかわからなくなってしまう。

あまりに選択肢が多いゲームは敷居が高く、プレイヤーが面白い所までたどり着くのが大変になってしまうかもしれない。

プレイヤーの練度に応じて、あえて選択肢を制限するのも大事な事である。


 ゲームの面白さを考えるにあたって、リスクとリターンなどの様々な観点から分析が行われてきた。それらは面白さの共通項であり、ゲームを分析する際の助けになる。

そして人によってゲームの面白さはさまざまに説明されていくのである。

私は選択肢という面白さをゲームから見つけ出してみた。ゲームを眺めてみた時に、それが面白い理由を説明する一つの方法になると思う。