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【クリティカル・シンキング/議論】② 仮説を立てるとはどういうことか

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、

ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回の記事では、前回に引き続き、

「科学的思考」「議論」に関する考え方や手法を見ていきます!


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


なお、全て無料で読めますが、

「良い記事だったなあ」

と思っていただけるようでしたら、記事代をいただけると励みになります!


非演繹的推論と演繹的推論

さて、前回の記事では、『「科学的思考」のレッスン』の、

科学とは、新しくて正しいことを言おうとする営みだ

という紹介を引用しました。


では、新しい理論や仮説を立てるにはどのような方法があるのでしょうか。


同書では、

○非演繹的推論の4つの方法
○演繹的推論

が紹介されていました。


漢字を見るだけだと、思わず「むむむ……」とうなりたくなる字面です。

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ここからは、『「科学的思考」のレッスン』で紹介されていた具体的な内容を見ていきましょう。


非演繹的推論① 帰納法(インダクション)

「非演繹的推論」ということは、「演繹的ではない」ということです。

というわけで、まずは、「演繹法」と対を成す代表的な存在の、

「帰納法」が紹介されています。


帰納法とは、「個別の例から一般性を導く推論」のことです。


例えば、ある小学校の生徒一人ひとりに、

「ウソをつくのは良くないことか?」

とインタビューしていき、全員が「良くない!」と答えれば、

(根拠)インタビューした子どもはみんな「良くない」と答えた

(主張)
あらゆる小学生は、「ウソをつくのは良くないことか?」と尋ねると、
「良くない!」と答える

という推論が得られます。

純粋な子どもたちですね


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非演繹的推論② 投射(プロジェクション)

ここからは、あまり聞きなれない名前が続くかもしれません。

まずは、「投射」

これは、帰納法の派生とも言われているそうです。

「投射」
個別の例から、「次の事例もそうだろう」と推論する


「二度あることは三度ある」といった具合でしょうか。

例を挙げてみましょう。

(根拠)
ある若手マンガ家の生徒のAさん、Bさん、Cさん……Yさんは、
「潜在能力は、自分が一番だ」
と考えている

(主張)
だから、Zさんも「自分が一番だ」と考えているだろう


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非演繹的推論③ 類比(アナロジー)

「類比(アナロジー)」とは、

ある共通点を持つ2つは、別の共通点も持っているのでは

という考えです。


『「科学的思考」のレッスン』では、

(根拠)
ラットと人間は、哺乳類という点で似ている。

(主張)
ならば、ラットも人間も、同じ化学物質で発ガンするのではないか。

という事例が紹介されていました。

新薬の動物実験はまさに、この「類比(アナロジー)」の考えが根底にありますね。


非演繹的推論④ アブダクション


「非演繹的推論」の最後の1つは、「アブダクション」です。

ある事象に対し、仮説を用意することで説明する

と紹介されています。


「帰納法」の小学生の事例では、

(根拠)インタビューした子どもはみんな「良くない」と答えた

(主張)
あらゆる小学生は、「ウソをつくのは良くないことか?」と尋ねると、
「良くない!」と答える

という推論が得られました。


これに対し、アブダクションでは、

小学生が次々と「ウソはよくない!」と答えることから、

(根拠)インタビューした子どもはみんな「良くない」と答えた

(主張)
「ウソをつくのは良くない」と答えるよう、
多くの大人は小学生に教育しているのではないか?

という仮説を立てることができます。


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「多くの人が同じことをしている」→「みんなそうなのだろう」

という、「多く」→「みんな」の一般化が、「帰納法」なのに対し、


想像力やひらめきで仮説を立てるのがアブダクションというわけですね。


「非演繹的推論」の共通点

ここまで、

①帰納法
②投射
③類似
④アブダクション

の、4つの「非演繹的推論」をご紹介してきました。


これらには、2つの共通点があると、『「科学的思考」のレッスン』では指摘されています。


①主張(=結論)が必ずしも正しいとは限らない

「根拠⇒主張」の形式で、4つの「非演繹的推論」を追ってきましたが、

いずれの「主張」も、それが必ずしも正しいとは限りません。


インタビューした子どもがみんな「ウソは良くない!」と答えても、

「いや、じゃんじゃんウソをつきましょうよ」と答える子どもは、

どこかにいるかもしれません。


08_01_驚き


②主張(=結論)において情報量が増える

上述したように、「非演繹的推論」から導かれる結論は必ずしも正しいとは限りません。

一方で、正しいかどうかは別としても、

目の前の事象を観察していただけのときと比べて、新しい情報が生まれているのも事実です。


「良くない!」と答える「ウソをつくのは良くない」と答えるよう、
多くの大人は小学生に教育しているのではないか?

という仮説は、間違っているかもしれませんが、

こういう仮説を設定することで、子どもの教育に関する新しい情報が生まれたのもまた事実です。


「空・雨・傘」のフレームワーク

このような「非演繹的推論」の特徴は、

「空・雨・傘」というフレームワークとよく似ています。


「空・雨・傘」とは、

① 空:空の天気を眺め(観察)
② 雨:「雨が降るかな」と予測し(分析)
③ 傘:「傘を持って行こう」などの打ち手を決める(戦略策定)

という、「観察・分析・戦略策定」のフレームワークです。


ここにおいて、②「雨」の場面の「分析」には、主観が混じっています。

人によっては、同じ空を眺めても、「もう少し持ちこたえそうだ」と分析する人もいるでしょう。


こうして、異なる分析をする人も出てくるわけですから、

「主張(=結論)が必ずしも正しいとは限らない」

わけです。


01_02_ノーマル・バスト


しかし、自分なりの視点・視座で物事を分析するからこそ、

「雨が降りそうだ」「傘を持って行くべきだ」

というように、

「主張(=結論)において情報量が増える」

というメリットもあるのです!


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真理だけど、情報の増えない「演繹的推論」

さて、ここまで「非演繹的推論」を見てきました。

この辺でそろそろ、「非」のついていない「演繹的推論」も見ていきましょう。


「演繹的推論」では、真理から、個別の事例に言及していきます。

例えば、「昆虫は6本の足を持つ」という真理を参照して、

「カマキリは6本の足を持つ」という個別の事例に言及するわけです。


「非演繹的推論」の2つの共通点に比較すると、

「演繹的推論」には次の2つの特徴があります。


①前提の真理が、結論まで続く=誤りを起こさない
②情報量が増えない


間違うことはないけれど、

新しいことは特に何も言っていない、

というのが演繹的推論の特徴です。


こう書くと、非演繹的推論のときに比べて、

秀才肌だけどおもしろみのない無難なインテリくん

みたいな、融通の利かないキャラクターが頭に浮かんでしまいます。


「サンバカーニバルの格好をして、

ペットのライオンとともに、

高笑いしながら宴会場にやってくる」

というようなお題を一発芸で与えても、

堅苦しい表情を浮かべて登場するはずです。


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しかし、この融通の利かないインテリの「演繹的推論」でも、

ちゃんと役に立つ場面はあります。


たとえば、

「クモは昆虫なの?」

と子どもに聞かれたとき、混乱しそうになっても、

「昆虫は、足が6本」という真理を知っておけば、

「クモは足が8本だから、昆虫じゃないよ」と答えられます。

これは、「演繹的推論」から導いた結論です。


「演繹的推論」では、混乱や勘違いがおきそうなとき、ある種の確認作業に向いているわけですね。


仮説演繹法:非演繹と演繹のフュージョン

さて、『「科学的思考」のレッスン』では、

「非演繹的推論」と「演繹的推論」を組み合わせて使うことで、

「新しい」かつ「正しい」ことを言うことができる、

「仮説演繹法」という手法が紹介されています。


「仮説演繹法」では、

①現実を観察してデータを集める
②データから、アブダクションで仮説を立てる
③仮説から演繹して、予言をする
④予言を検証する

という流れを追っていきます。


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具体例として、ゼンメルワイスという医師が、

「産褥熱(さんじょくねつ)」という出産後に女性が無くなる現象を、

どうやって解決したか、が紹介されていました。


①現実を観察してデータを集める

・医師が立ち会った場合、女性が多く死亡していた
・一方、産婆が立ち会った場合の死亡数は少なかった
・医師は、解剖などで死体を触ることが多かった
②データから、アブダクションで仮説を立てる

(仮説)
「死体に含まれる物質」が医師を通して女性に移り、
これが産褥熱の原因になった
③仮説から演繹して、予言をする

(予言)
「死体に含まれる物質」が女性に移らないよう、
医師がお産の前に手を洗うと、産褥熱は防げる
④予言を検証する

・実際に手洗いをしてみる
⇒産褥熱が減る
⇒新しい予言は正しかった!


この「仮説演繹法」の流れは少しわかりにくいところもあるのですが、

前回の記事の、「根拠→主張→論拠」の論証基本フォームに当てはめると、

理解しやすくなりました。


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ちなみに、当時のヨーロッパでは、ゼンメルワイスの、

「医師がお産の前に手を洗うと、産褥熱は防げる」

という主張は、すぐには受け入れられなかったそうです。


これは、ヨーロッパの研究者たちにとって、

「根拠」→「主張」の飛躍が大きすぎると感じられたから
飛躍を支える「論拠」が弱いと感じられたから

だと言えるでしょう。


飛躍が大きければ大きいほど、主張の新奇性は高まりますが、

その分、その飛躍を支える「論拠」にも、より多くのデータが必要になる、

という示唆が得られますね。


まとめ

では、ここまでの内容を振り返りましょう。

【非演繹的推論① 帰納法(インダクション)】

・個別の例から一般性を導く推論

【非演繹的推論② 投射(プロジェクション)】

個別の例から、「次の事例もそうだろう」と推論する

・「二度あることは三度ある」
【非演繹的推論③ 類比(アナロジー)】

・ある共通点を持つ2つは、別の共通点も持っていると推論する
【非演繹的推論 ④アブダクション】


・ある事象に対し、仮説を用意することで説明する
【「非演繹的推論」の共通点】

①主張(=結論)が必ずしも正しいとは限らない
②主張(=結論)において情報量が増える

※「空・雨・傘」のフレームワークとよく似ている
① 空:空の天気を眺め(観察)
② 雨:「雨が降るかな」と予測し(分析)
③ 傘:「傘を持って行こう」などの打ち手を決める(戦略策定)
【演繹的推論】

①前提の真理が、結論まで続く=誤りを起こさない
②情報量が増えない
→混乱や勘違いがおきそうなときの確認作業に向いている
【仮説演繹法】

①現実を観察してデータを集める
②データから、アブダクションで仮説を立てる
③仮説から演繹して、予言をする
④予言を検証する


さて、次回は、引き続き議論の手法について見ていきます。


お楽しみに。

to be continued...



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