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PBは「ブランド」、資産として投資すべき。製造時の粗利益率より通年の評価基準を持とう/郡司昇氏インタビュー

現在、多くのドラッグストア(DgS)で展開されているプライベートブランド(PB)商品。ただ残念ながら、消費者目線で見るとナショナルブランド(NB)との差異が少なく、どの企業がどのPBを扱っているのかということすらほとんどわからない。そんな現状を打破し、さらにPBの売上を伸ばしていくにはどうするべきか。PBの現在と今後について、ICTコンサルタントの郡司昇氏に伺った。

〈 取材協力 〉

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店舗のICT活用研究所
代表 郡司昇氏

ココカラファインにおいて、販社統合のプロジェクトを担当した後、EC事業子会社を設立し代表取締役社長に就任。EC事業を立て直すと同時に全社マーケティング戦略を構築・実行。現在は、メーカー・テック企業・小売業をICT活用し繋ぐことで、顧客接点の全体最適化を推進。

手に取る魅力に欠けたPB
ブランドとして投資を

多くのDgSがオリジナルで企画したPBを持つ昨今であるが、その開発目的には2種類あると考えられる。ひとつは、NBよりも高い粗利の確保を目的とするケース。もうひとつが、PBを自社の「ブランド」として確立させようと試みているケースだ。

現在、ほとんどのDgSは粗利を求める第一のケースでPBを展開している。そのわりには「売り方」に工夫がなく、棚への置き方ひとつ取ってみても、NBの右隣に倍量を陳列するという基本ルールすら守られていない。

「価格差や商品特徴などをアピールしていることも少なく、ただ商品を並べている状況が圧倒的に多い。PBを選ぶことによって、消費者にどんな『お得』や『お役立ち』があるのかがまったくわかりません。つまり現在のPB商品の多くは、消費者にとって手に取る魅力に欠けているといえます」

DgSのPBの現状を郡司昇氏はこう語る。一方、PBを第二のケースで扱っているいくつかのDgSの場合は、パッケージデザインなどに統一感を出し、少なくとも「A社のPB」であることは訴求されている。また、その商品にどんな魅力があるのかなどもアピール。それにより、自社のPBがひとつの「ブランド」であることを訴えつつ、それを「選ぶ」意味、付加価値を与えているといえるだろう。

「PB開発の際まず最初に考慮すべきは、自社のPB商品に対しどんなイメージを持ってほしいかを確立させ、それに沿ったものを開発していくこと。その際には、ブランドのイメージを形づくるガイドライン─ブランドカラーやフォント、パッケージデザイン─などもしっかりと定めておくことが必要となります。『ブランド』である以上、単発の販促ではなく、適切な投資計画と実行力が求められるでしょう」

ブランドサイトの構築など、消費者にその存在を認知してもらうために資金を投入し、商品の研究開発自体にもお金をかける必要がある。

消費者にとって商品の価値とは、商品の「品質・機能÷価格」。その認識にかなう商品をどれだけつくり出していけるか、それが各社PBの大きな差となっていくだろう。

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▲棚に照明を入れ目立たせてはいるが、価格以外の訴求がなく、オリジナルのブランドであることが伝わっていない

バイイングパワーを向上させ
「顧客との対話」を見過ごさない

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