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備忘録。すべてが流れ去ってしまう前に。

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最近の記事

拝啓、痛々しくも愛おしいあの頃の私たちへ

10代の頃にめちゃくちゃ好きだったバンドの音楽を、大人になってから聴いてみるとダサかった、というほど嫌なものはない。 そういう経験は、恥ずかしながら少なくない。 足を洗ってしばらく経つけれど、私はバンギャルだった。 バンギャルという言葉が今の世の中でどれほど伝わるのか分からないけれど、ヴィジュアル系バンドが好きな女の子たちを指す言葉だ。 私の青春とは、お化粧をしたバンドマンたちに恋をして、重低音きつめの爆音に身を預けて、頭を振り乱し、拳を突き上げたあの頃のものだ。 もうす

    • 30手前にして、ジャニーズアイドルにハマった

      はじめに言っておきたいのが、私は自分の好きな物を人に話すのが基本的には好きではない。 それを好きだと思う気持ちも、感じたことも、得た何かも、私だけの宝物。 そこに土足で誰かの物差しや感性、解釈が入ってくることが許せない心の狭い人間だからだ。 だからこれから書く文章には、具体的な固有名詞は載せない。 分かる人には分かってしまうかもしれないけれど、それは無視して書こうと思う。 それくらい私にとって大きなことが起きた。 ずっと考えてたし、認めてなるものかと1週間くらい葛藤したり

      • 全く初見でシン・エヴァを観た話

        去年の3月の始めの頃、友人と『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』を観た。 会社の福利厚生で、映画のタダ券をもらったのだが、この時期特に観たい映画もなく、熱狂していた世間の波に乗ってみようと思って決めただけだった(その証拠に、私たちはあの時シンエヴァにするか、無限列車に乗るかの話し合いを30分ほど繰り広げた)。 友人はテレビアニメシリーズ観ていたらしいが、私はテレビアニメも映画も、1回も観たことがない状態。 カラオケビデオで流れる絵、パロディに使われるような台詞やキャラクター

        • 2021年のトピック①全てに甘え、頼り、小説書いた

          先日、大泉洋さん主演の『騙し絵の牙』を観た。 久々に自分の中でヒットで、観終わってすぐ、気になったシーンをもう一度見直したほどだ。 そして、その中の台詞に、ぐっと心を掴まれた。 「面白いこと以外はどうでもいいんだ」 「あなたは書くことでしか救われない人だ」 今年、私は友人の犬尾春陽さんにお誘いいただき、初めて小説を書いた。 『故買屋 いわくのあるものを扱う店』という一冊の本に収められ、先月の文学フリマにて、犬尾さんのブースで販売された。 私は、「書くことでしか救われない

        拝啓、痛々しくも愛おしいあの頃の私たちへ

          『愛がなんだ』の恐ろしさ

          何年か前にパラパラと読んだ角田光代『愛がなんだ』が映画化されたのは2年前のことだ。 読書好きの友人界隈で話題になっていたし、成田凌さんが好きだった私も気になってはいたものの、映画館に行くほどの熱はなかった。 先日、公募に出すための文章を書くために何かBGMになる映画ないかなーとサブスクを漁っていたら、配信されていた。ストーリーは知っているから流し見にはちょうど良いやって、軽い気持ちで再生し始めた。 約2時間後、私は腹の底から震え上がった。 1.小説『愛がなんだ』/言語化され

          『愛がなんだ』の恐ろしさ

          茶色い食卓

          世の中が殺伐として、流れてくる情報が全て極端で攻撃的になって、心底疲れたと感じたのが去年末だった。 私が無知であることや情弱であることは認めるし、何が正しいのかきっと誰もがまだ分からない状況であることは分かっている。 だけど、何を信じたらいいのか分からないことや、自分がどちらかと言うと守られた、恵まれた環境で生きられている一方で、追い詰められている人たちがいることが、つらかった。 そんな中で私を生活に繋ぎ止めてくれたのが、自炊だった。 始めたきっかけは一体何だっただろう

          茶色い食卓

          「一世一代の大ペテン」に騙されたい

          芸術・エンターテインメントを消費する側の人間として重要なのは、それがいかに現実を忘れさせてくれるかだと私は考えている。 碌でもない日常があっても、片のつけようのない悩みがあったとしても、それに触れている時はその一切を忘れ去ってしまう。現実から遠ざけられてしまう。 人は誰しもそんな願望を持っていると思う。 だから、世の中には小説が溢れ、映画が溢れ、音楽が溢れている。この世はエンターテインメントで溢れている。 私たちは、架空を愛して生きている。 そして、極上の芸術・エンターテイ

          「一世一代の大ペテン」に騙されたい

          「女って最高」と思える生き方がしたい

          10月のある日、私は緑の濃い公園を歩いた。 そのすぐ近くには私の通っていた高校があり、実家からもほど近い場所だった。観光に遠くから訪れる人もいるようなところだったけど、正直私は何の興味もなかった。 私にとってここは、(特に実家に住んでいた頃は、)ただの不自由な場所だった。色んなものに監視され、縛られ、自分の興味関心のままに動くことを許されない場所。 休みの日にわざわざ出掛けていきたいような場所ではなかった。 だからあの日、私は驚いた。 湖をぐるっと囲む山々の緑の中を歩いて

          「女って最高」と思える生き方がしたい

          草迷宮の思い出

          私は父の影響で攻殻機動隊が好きだ。 以前その話を美容師さんにしたら、「攻殻機動隊はシリーズが多すぎてどこから手を出したらいいか分からない。」と言われた。確かにその通りだ。私も好きだとは言ったものの、観ていないシリーズもある。 私が観たのは押井守監督の映画「攻殻機動隊 Ghost in the shell」、テレビアニメのSTAND ALONE COMPLEXシリーズ、「イノセンス」、「攻殻機動隊 Solid State Society」のみだ。 ここで私が言いたいのは、攻殻

          草迷宮の思い出

          小さな戦争

          小学校2年生の時に、作文のコンクールで私が書いた読書感想文が最優秀賞をもらい、地元のFMで朗読が放送された。 もうタイトルも覚えていない戦争を描いた児童文学の感想文。戦時下で父親は出征し、ひもじい生活を送る主人公の描写を受けて、私は、 「この前家族全員で東京ディズニーランドに行きました。すごく楽しかったけど、お土産にミッキーの大きなぬいぐるみがほしいと言ったら、買ってもらえず、悲しくて泣きました。だけど、この物語を読んで、家族全員で一緒に居られる、楽しい場所に出掛けられる

          小さな戦争

          「おやすみって言ったっけ?」

          寝て起きたら、大体すっきりしてる。あるいは、輪郭がぼやけて何がなにやらよく分からなくなる。 嫌なことも良いことも、自分の意思にかかわらず、ずっと遠くに行ってしまう。 理不尽だけど平等な夜は、私を安心させる。 だから、早く寝てしまいたいのに。 好きな人の隣りで眠ることは、どうしてこんなに難しいのだろう。 なんで少しも安心できないのだろう。 一人で居る時の不安に比べて、誰かと居る時の不安は重たくて、手に負えない。 何でも知ってるつもりだった。目の前に居ること、吐き出される言

          「おやすみって言ったっけ?」

          命を許されたかった

          数年前、友人から「死のうと考えている」と言われた。 詳しいことは割愛するが、それはその人にとって文字通り命を懸けた何かが終わりを迎えたタイミングだった。だから、その言葉を放つ友人の本気を私は知っていた。 スイスに渡って、200万だか500万だか支払えば、安楽死をさせてくれるらしい。友人は安楽死のために貯金をして、1年以内には死にたいのだと言った。 私はその人に死んでほしくなかった。素直に「私が寂しいし、嫌だから死なないでほしい」と言ったけど、その人の切実さの前には無意味だ

          命を許されたかった

          可愛い女という化け物

          去年の冬、好きな男とセックスをした。 男とは友達としての付き合いが長く、それまでも何度も二人きりで遊んだり、お酒を飲んだりしていた。 私たちはそれぞれの歴代の恋人たちよりも、お互いのことをよく知っていたと思う。恋人として関係を維持しなければいけないという遠慮がなく、お互いのことを打ち明けあっていたから。 だけど、私たちはセックスをした。 男にとって私は恋愛対象ではなかったと思うし、私が男のことを好きであることも明かしていなかった。 お酒に酔っていた、外が寒かった、何となく

          可愛い女という化け物

          私の「チワワちゃん」

          ここ数年観た映画の中でトップ3を選ぶとしたら、私は真っ先に「チワワちゃん」を選ぶ。 作中の台詞を借りるなら、この映画はまさに「青春の自爆テロ」だ。 ーバラバラの遺体が東京湾で発見される。それは「チワワちゃん」と呼ばれる20歳の女の子の遺体だった。チワワちゃんは東京のクラブで出会った男女グループの中心的な存在だった。 ある記者がチワワちゃんについての取材を始め、仲間たちがそれぞれチワワちゃんとのことを語りだすが、誰もチワワちゃんの本名や境遇、素性を知らなかったー 映画の内

          私の「チワワちゃん」

          他人の人生を貸りて生きている

          私は学生時代のアルバイトからずっと教育業界で仕事をしている。講師、プランナーとして提案営業、教室運営などの仕事をしてきた。 私が教育業界で仕事をするきっかけになったのは、中学生の時に出会った国語の先生だ。 彼女は当時通っていた進学塾の先生だった。歳は多分40前後、スラッと背が高くて、エルグランドを乗り回し、怒ると物凄く怖くて、だけど顔全体で豪快に笑う女性。 正直受験対策で習ったことはほとんど覚えていない。 一つ一つの文章にとにかく時間をかけて向き合うので、話が脱線したり、

          他人の人生を貸りて生きている

          「食べる」

          何歳の誕生日だったかは覚えていない。住んでいた場所を考えると、3歳から5歳くらいの間の出来事だと思う。 母に切り分けられたケーキが目の前に置かれる。 上に乗っていた苺を咀嚼ながら、私は父と母にの様子を窺っていた。2人が私のことをちゃんと見ているかを確認しておく必要があったから。 ケーキの入っていた箱を潰したり、紅茶をカップに注ぎ足したりしていた2人が私の方を見た。 今だ、そう思った私は、テーブルに両手をついて、ケーキに真上からかぶりついて見せた。顔中をクリーム塗れにして。 す

          「食べる」