忘れるには思い出がありすぎる恋
忘れたいと思いながらも忘れられずにいる、実らなかった恋がある
話をするうちにその人に惹かれて、どこか憧れていた。ユーモアがあって、話のテンポが心地良くて、笑顔がよくて、夢があって、努力をしていて、少し大人で。ああ私はこういう人が好きだなと思った。
でも私たちは、会ったときに話すくらいの仲で、別にLINEしたりもしていなかったから、これといった関係の変化もないまま会うこともなくなっていった。それがすごく寂しくて、その人の誕生日にかこつけて連絡した。
連絡したら案外すぐ返事が来て、そのあとからは2人でご飯に行ったりすることが増えた。
これがまたすっごく楽しかった。そうしてどんどん近づいていったけど、別に付き合うわけでもなく、何かするわけでもなく、前より親しくなっただけだった。
好きな気持ちはあるけれど、これ以上の関係になることはないと気づいたときがあった。
それからは、だんだん会わなくなっていって、連絡もとらなくなって、今ではたまに人づてにその人の情報が流れてくるくらい。
こんなのがなんで忘れられないのか。それはその人といた時間のなかに新鮮なことや新しいことがたくさんあったから。
過ごした時間のわりに思い出が多すぎるのだ。
初めて行ったお店で食べたミルクレープの味に感動したこと、それまで飲めなかったミルクティーが飲めるようになったこととか。
くだらないことばかりだけど鮮明に思い出せて、会わなくなってからも日常にあふれてることで、その人のことを思い出すきっかけになってしまう。そうして失恋ソングに自分を当てはめる典型的な人間と化している自分がいる。
忘れるには難しい思い出がたくさんあって、思い出の多さが自分を苦しめている。
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