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「プログレとして聴く『ラプソディア』」

 久々に『ラプソディア』を聴いている。
 キューバ出身の超絶技巧ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバが1993年に発表したアルバム。今となっては懐かしいスイングジャーナル誌主催のジャズ・ディスク大賞で、前年の『ロマンティック』に続き金賞連続受賞という快挙を成し遂げた作品である。ゴンサロは1963年の生まれだから、ちょうど30歳の時の作品ということになる。若い。全体にギラギラとした覇気が溢れているのもなるほどと頷ける。

 このアルバムを初めて聴いた頃、自分がどんな状況にあったのかすぐに思い出せなかったのだが、よくよく考えて見ると、文芸同人誌に加入し、エッセイを書き始めた頃だ。ピアノ教師をしながら、テレビCMや演劇のための音楽などを作っていた。CD購入も、クラシックのピアノか、音楽制作のための直接的なヒントを掴むためのシンセサイザー主体のニューエイジ系のものが多かった。音楽的には、あまり刺激的な生活をしていたとは言えない。ジャズを聴くにしても、ロックを聴くにしても、20代前半までの趣向で止まっていた。

 文芸同人誌に加入した裏には、そんな安定志向に安住する気持ちを改めたいという気持ちが働いていたし、ジャズ誌を十数年振りに読み始めたのも、同じような心理が働いていたような気がする。
 切っかけは何だったかと思って、よくよく考えてみると、ついさっき「note」に書いた、男子高校生との情報交換だったことを思い出した。

 ピアノを習いに来ていた男子高校生に、こちらからは70年代のロック・アルバムを貸し、彼からは、当時流行っていたへヴィー・メタルのCDを借りた。そんな遣り取りに刺激されて、スーパー・ギタリストを擁するハード・ロックのCDを買い漁ったりした頃だ。
 そんな時期に、ジャズ誌のレビューを見て『ラプソディア』を初めて聴き、プログレッシヴ・ロックの延長線上で捉え、すっかり興奮して聴いた覚えがある。超絶技巧、複雑なリズムによるキメ・フレーズ、衝撃的なクラスターの使用、そしてジャズ・フィーリング(この点は、本物のジャズ・ミュージシャンなんだから当然だが)など、かつてキース・エマーソンに求めていたものの多くをここに見ることが出来る(Karn Evil9 2nd Impression よりこちらのほうが遥かに良い。などと言うと、EL&Pファンが怒るかも知れないなぁ)。

 その後、様々な新しいジャズ作品に出会ううちに、この『ラプソディア』を聴く機会はほとんど無くなっていた。そして、20数年振りに聴いた今でも、このアルバムをジャズとしてよりプログレとして聴いてしまう自分がいる(笑)
 変化を求めて模索し始めていた頃の気持ちも蘇ってきた。鹿児島にUターンして以来、音楽脳の一部が、ちょっと乾涸びつつあったよなぁ・・・。

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