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雑感

 今から話すことはできれば触れたくないことである。
 しかし、避けては通れない話なので、事実の経過と私の主観を説明する。


 私が弁護士をやめ、療養生活に入ってから今日までの約5年間、私は牌譜解析結果などの麻雀研究成果を基本的に無償で公開してきた。
 もちろん、一部書籍においては対価を得ているが、対価をもらってデータを提供したものは(以下、書籍については著者などの情報は省略する)

『神速の麻雀 堀内システム51』
『オンライン対戦麻雀天鳳公式完全攻略読本』
『牌効率から読みまで極めるよくわかる麻雀の勝ち方30の技術』
『麻雀強者の0秒思考』
 天鳳名人戦対局者データサイトの牌譜解析(第8期以降、第7期は無償)

だけである。
 これ以外の書籍においても私のデータが使われている本は複数あるが、それらから対価を得てはいない。


 例えば、データ本と言ってもよい『勝つ人は知っている現代麻雀30の新常識』。
 これは、私・nisiさん・北HAZさんのデータがふんだんに使われているが、私は一切の対価をもらっていない。

 あるいは、ネマタの『勝つための現代麻雀技術論』。
 これも私は一切対価をもらっていない。
 しかも、上記本のネマタのあとがき(謝辞)には個別具体的な研究者が誰一人列挙されておらず、「ネマタにとって研究者のデータは道に落ちている石ころ同然なのだな」と思わざるを得なかった(注1)。


 さて、時系列に見れば、ネマタの件が先である。
 ネマタ本の一件以来、私の中には次のような考え方が胸中にあった。

 1つ目は、「このまま放置したら研究者は使い捨てられる。自分の身は自分で守らないと。」ということ。
 2つ目は、「データはインフラなのだから、研究者(私)が使い捨てられるとしても、麻雀界のために奉仕すべき」ということ。
 3つ目は、「データの普及の観点から見れば、対価を求めると普及が遅れる可能性がある。よって、普及のために対価は我慢すべきである」ということ。
 4つ目は、「趣味なんだから、対価を求めにいくのはどうか」ということ。
 5つ目は、「対価を求めて仕事にした瞬間、麻雀研究はつまらなくなる。それなら対価を求めずに自分のやりたいようにやるべきだ」ということ。
 6つ目は、「私が天鳳の牌譜解析をすることができるのは、天鳳が無償で牌譜を公開してくれているおかげである。とすれば、私の牌譜解析結果も無償で公開すべきである」ということ。



 このような考えから、私の方針は「出典(名誉)については厳格に求める、代わりに、金銭については求めない」となった。
 そして、この方針でここ数年やってきた。
 その結果、私のデータは様々な本で使われるようになり、データの普及も進んだ。
 また、私の知名度もそれなりに広まった。

 私は凸のように麻雀界に革命を起こしたわけでも、nisiさんのように凸理論を進化させたシミュレータを作ったわけでも、kmo2さんや水上さんのように麻雀AIを作ったわけでもなく、新たな麻雀研究をしているとは思っていない。
 ただ、データの普及については心を砕いてきたし、データの普及に対してそれなりに貢献したと自負している。


 ただ、最近こう思う。
 私の選択は正しかったのだろうか、と。


 幸運にも、私は福地誠と仕事を組んで、麻雀本の出版にかかわるようになった。
 その甲斐あって、書籍にデータを提供する機会が生まれ、それなりの対価をもらうようになった。
 また、福地誠と共著を出版し、さらには、単著を出版するようになった。
 その意味で、私はnisiさんよりも恵まれていると言える。

 また、データの普及も進んだと言える。
 その意味で私のしたことは無駄ではなかった。

 しかし、私とnisiさん以外に、長期的に、麻雀研究をして、そのデータを麻雀界に還元する人間はいない。
 私は『統計で勝つ麻雀』において「早晩、麻雀研究をして、データを公開する人間はいなくなる」と述べた。
 そして、それは現実になりつつある。
 それは、私が無償でデータを提供し続けた結果ではないか、と。

 あと、「対価を求めない」、「趣味である」というのは、「責任を負わない」というのとセットである。
 それも麻雀界にとって良いことなのか。
 以前、「とある研究をしてくれ」と言われた際、「あまりに時間がかかるから」と言って断った記憶がある。
 だが、対価をもらって(あるいは、寄付でも募って)、もっと緻密な研究をすべきだったのではないか。
 

 正直、何が正解か私自身分かっていない。
 だが、私の考えを示しておくため、このNOTEに示しておくことにする。

 それでは。

 1点だけ注意。
 上で「対価をもらってない」旨書いたが、それは別に事実を確認しただけで、対価を払わなかったことに対して批判するつもりはない(当時、私はもらう予定はなかった)。
 今後の麻雀研究の在り方について考えるために事実を記載しただけである。
 そこはご理解願いたい。


(注1)さすがに、この本の初版では私の出したデータをぐっさんの研究と書いたり(220ページ)、私がやっていない研究を私がやったことになっている(87ページ)などあまりに研究者に対して失礼極まりなかったので、私は抗議している。なお、この問題は決着がついている。

もし気が向いたら、サポートしていただければありがたいです。 なお、サポートしていただいた分は、麻雀研究費用に充てさせていただきます。