５年ほど前のことだったと思います。大阪から横浜に帰るとき、新幹線で読む本を探しに、新大阪駅にあった「LIBRO新大阪店」に立ち寄りました。そこで手に取った本が、辻山良雄（著）『本屋、始めました』でした。それがきっかけで、荻窪にある「Title」という本屋さんに時々行くようになりました。「Title」は、著者の辻山良雄さんが経営する本屋さんです。横浜から荻窪に行くには、そんなに遠くはないと言えども、少々時間はかかるので、そんなにしょっ中行っているわけではありませんが、とても気に入っている本屋さんです。

ネットでいつでも家に居ながらにして、本を買うことができる時代です。物理的な本を購入しなくても、電子書籍という方法もあります。それでも敢えて時間とお金をかけてでも、行く価値のある本屋さんがあります。そういう本屋さんに行くと、その本屋さんでしか出会えなかったであろう、本と巡り会うことができます。

「Title」さんには、お店の奥に、カフェがあります。出会った本を、その場で美味しいコーヒー飲みながら楽しむことができます。釣った魚をその場で調理して、お刺身で食するような気分です。

店主の辻山さんとは、レジでお支払いをするだけの関係で、会話を交わしたことはありません。人見知りの私には、お店の人に話しかけるというようなことは少し苦手です。『小さな声、光る棚』を読んで、おそらく辻山さんは、本を選んでいる私を、いつもレジの横から静かに見ていてくれているのだと思います。