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【千葉商大が認定校?】フォント会社の「モリサワ」さんを取材してみた

こんにちは。千葉商科大学 メディア・プロジェクトのトポスです。

さて、千葉商大が、株式会社モリサワという会社の「認定校」になっているのをご存知ですか?本プロジェクトのメンバーに聞いてみた所、知っている方は殆ど居ませんでした。

モリサワさんは、PC等で使うフォントを制作・販売している会社です。その「認定校」である千葉商大は、大学設置のPCにモリサワのフォントが沢山入っていたり、沢山のフォントを一定期間使えるサービス「MORISAWA PASSPORT アカデミック版」を認定校特別価格で買えたりします。

詳しくは、この記事と同時に公開した、「MORISAWA PASSPORT」の紹介記事を御覧下さい。

大学での制作物とかにも役立つこの存在を、知らない方がいるのは勿体ない!ということで、今回は、そのモリサワさんに実際に赴き、「MORISAWA PASSPORT」などについて取材をさせて頂きました!


訪れたのは、東京都飯田橋。

JR飯田橋駅から北へ歩いて少しの所に、1つのビルがあります。株式会社モリサワの東京本社です。モリサワさんは大阪にも本社があり、フォントのデザインや制作は分担して行っているそうです。

ビル1つまるまるモリサワさん

そして、今回は、この東京本社のモリサワさんで取材をさせて頂く事になりました。

担当して下さったのは、株式会社モリサワ 東京本社の須田茉利江さんと、長武史さん

株式会社モリサワ 東京本社 須田茉利江さん

須田さんは、なんと千葉商科大学に来たことがあるらしく、モリサワの「認定校セミナー」を、毎年、政策情報学部の吉羽一之教授の講義でされているそうです。私はサービス創造学部生だったので知りませんでした……。

という事で、取材の始めに、その認定校セミナーで配布している資料を頂きました。政策情報学部生の方は、興味があったら是非、「認定校セミナー」を受けてみて下さい!!

頂いた資料の一部

(ここからは、取材の様子を簡単な対話形式を交えて、お伝えします。)

アカデミック版の狙い

――それではまず、アカデミック版の狙いを伺いたいです。

須田さん:アカデミック版は他の製品と比べて安い値段設定になっていますが、元々は、プロを目指す学生さんに向けて、その学生さんが御求めやすい価格を考えて設計した物です。
実際に先生方にヒアリングさせて頂いて、無理のない価格になればと考えて作りました。
収録されているフォントは「プロ」向け製品と同じで、「プロ」の方と同じ環境で使って欲しい、学んで欲しいという願いを込めています。

学生向け製品である「MORISAWA PASSPORT アカデミック版」の価格は、一般校用が24,200円、認定校用が13,200円で、どちらも4年間使用可能。一方のプロ向け製品「Morisawa Fonts スタンダードプラン」は、年額64,240円。
アカデミック版とプロ向け製品では、年額で10倍以上の差がある。
また、アカデミック版は、月額にすると約250~500円となり、破格と言える。

何故、千葉商大が認定校に?

――認定校の一覧を見てみると、デザイン系や美術系の学校が多いですが、その中で、どちらかと言えば経営系の千葉商科大学が認定校になっているのは、どのような経緯があったのでしょうか?

須田さん:認定校になる過程は公開していまして、アカデミック版を契約している生徒が年度中に60名以上いた場合、学校の設備に「教育機関向けMORISAWA PASSPORT」を31台以上導入している場合の2つがあります。
千葉商大の場合では、メディアや情報発信について学んでいる学生さん向けに、学校設備に導入いただいているので、認定校になっています。

須田さん:また、千葉商大に関連する分野では、近年、「デザイン思考」という様な、経営にもデザインの考えを取り入れようという機運が高まっています。

須田さん:そして、学生の方々は、経営に限らず、色んな進路を進む方が居ると思います。
例えば、私は地方自治体でセミナーをさせて頂く機会があるのですが、職員の方々に、広報誌を作ったり、色んな人に知ってほしいお知らせを作る時、分かり易いチラシってなんだろう、分かり易いフォントってなんだろうとか、そういう話をさせて頂く事があります。
この様に、デザイン以外業界でも、どういった方向に行かれるにしても、フォントの知識は役立つのかなと思います。

豊富なラインナップの秘訣

――MORISAWA PASSPORTには、モリサワさんが作ったフォントは勿論の事、他のメーカーさんのフォントも収録されています。この様な豊富なラインナップはどの様に実現されているのでしょうか?

長さん:そもそもモリサワのサブスクリプションモデルが始まったのが2005年8月からで、その当時は200書体ぐらいしかなかったんです。
そこから、毎年、新書体を提供していく事になりますが、モリサワのフォントだけではカバーしきれない部分などを、他のメーカーさんのフォントをMORISAWA PASSPORTの製品を理解して頂いた上で、収録させていただきました。
モリサワだけでは拡張できない部分を補うという手段としてあったという形ですね。

アピールポイント ~プロ向け製品と同じだから出来ること~

須田さん:千葉商大のPCに入っている「MORISAWA PASSPORT」のフォントと、実際のプロ向けの製品で入っているフォントは同じなので、「プロ」のクリエイターさんと全く同じ環境で勉強できるというところがアピールポイントかなあと思います。
入っているフォントは、色んな商業出版物とか印刷物とかに使われているので、「プロ」の作った物を見ながらマネッコできる、同じフォントを使えるというのが魅力だと思います。

――実は、私も、真似っ子出来るみたいな意味で購入させて頂いて……。見出ゴMB31というのが、昔、某大手スーパーマーケットで使われていたフォントらしく、それで買わせて頂きました。

須田さん:電車とか、鉄道が好きで、そこで使われているフォントを使いたいという方が、フォントを買うというのは聞いたことがあるんですけど、スーパーというのは新しくて新鮮です(笑)

――確かに、鉄道では色々な所にフォントが使われていますね。

須田さん:例えば、駅名標には新ゴとかで、「秋葉原」だとか。

千葉商大の最寄り駅「市川駅」でも、看板に新ゴが使われている。

日常的に目にするモリサワのフォントの魅力

――モリサワさんのフォントは様々な場所や場面で目にする大変身近なものですが、そのモリサワさんのフォントの魅力を教えて頂きたいです。

須田さん:プロのデザイナーさんが、一文字一文字こだわって、何度もチェックを重ねてこだわって制作しているという所です。実は、割とつい最近までは手書きで作っていたんですね。

長く愛されつつも、新しくなっていく

須田さん:先程出て来た見出ゴMB31もそうですけれど、長く愛されて使われているフォントが沢山収録されているというところ、そして、昔ながらの良いフォントだけではなくて、時代とかお客様のニーズに合わせて、今もラインナップが増えているというところも言えるかなと思います。

須田さん:例えば、A1明朝というフォントも結構人気の高い書体で、映画や雑誌、広告で使われていたりします。有名なアニメーション作品のロゴ等で見たことがある方も居るかも知れません。
写植時代を起源に持つフォントなのですが、今迄1つのウエイト(太さ)しかなかったのですが、人気が高い書体なので色んなウエイトを使いたいという声を頂きまして、つい最近ウエイトが増えたものがでたりだとか、そういうニーズに合わせて変わっていっています。

ユニバーサルデザインフォント

須田さん:また、時代に合わせて出てきたフォントで言えば、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)。より多くの人に見易いデザインを目指したフォントです。
具体的には、見間違えてしまいそうな文字のデザインを変えたりだとか、明朝体の細い横線を通常より太くするなどして、見やすく読み間違え難い工夫をしています。

長さん:UDフォントが出てきたのがちょうど10年ぐらい前で、高齢化社会が進む中、文字自体の読みやすさを追求してきたという背景があります。
そして、現在では、教育分野で、弱視やディスレクシアに配慮したデザインの「UDデジタル教科書体」をリリースし、教科書等での採用が進んでいます。

須田さん:UDデジタル教科書体はニーズが高くて、MORISAWA PASSPORTは勿論、WindowsのOSにも搭載されてます(※Windows 10 Fall Creators Update以降)。Windowsの影響か、最近、色々な所でよく見るようになりましたね。
明朝体だと線に強弱があって見え辛い人や、先端の尖っている部分がストレスになってしまう人もいます。その為、フェルトで書いた様な一定の太さと、丸みのある優しいデザインになっています。

――確かに、このフォントは見た事があります。

長さん:デザイン書体を作ろうとかだけでは無くて、こういった社会課題にも対応した書体なんかも、モリサワとして力を入れているということですね。

活用法

――続いて、MORISAWA PASSPORTを使って、学生がどういう風にフォントを活用してほしいかといった事を御聞きしたいです。

須田さん:基本的には、自分の作りたいもの全部、趣味とか含めて全部、ガンガン作ってほしいな。せっかく認定校の学生さんで、(大学内のPCで使えるMORISAWA PASSPORTを)使える状況ですので。
一言で言えば、「色んなところで使って下さい」ですね。

須田さん:フォントって文字なので、伝えるための物ということで、最初からPCに入っていたりしますが、今持っているもので伝えたいことを伝えきれないという事があるんじゃないかなと思うんです。
ただただテキスト情報だけではなくて、ニュアンスだとか世界観、雰囲気を伝えるのに役立つものなので、「もうちょっとかっこいいフォントを使いたいな」だとか、「もう少し太いフォントを使いたいのに、それがなくて目立ちにくいな」という時に、大学のPCでフォントを探してみたら役に立つんじゃないかなと思います。

須田さん:例えば、講義だったら、レポートとかスライド作成とかで使って頂きたいですし、明朝体とかゴシック体とか揃っています。ポスターとかチラシとか、遠くからでも見えやすいようにという事で、さっき言ったUDフォントが使える場所があるかも知れません。
後は、ビジネスコンテストとかコンペとか、自分の作った企画や作品にも、その魅力が更に伝わる様に、是非モリサワのフォントを活用して頂きたいです。フォントにこだわると、仕上がりに差がつけられると思います。

フォントを使う上での注意点

――何かフォントを使う上で、気をつけて欲しい点というのはありますか?

須田さん:アカデミック版については、学生版ということで価格を抑えているので、バリバリ仕事で使いたい方はプロ向け製品の方をおすすめしますので、営利目的での利用はNGということでお願いします。

――ありがとうございます。それでは、MORISAWA PASSPORTに限らず、フォント全般でなにか気をつける点はありますか?

長さん:フリーフォントなんかもそうですが、使用許諾というものが存在してますので、使用許諾は作った人とかメーカーさんが決めているので、MORISAWA PASSPORTを含めて、そのルール内の中で使って下さい。他のフォントでも、使用許諾というのは各社さんで決まっていますので、御確認下さい。

須田さん:こういう使い方はだめだよみたいなフリーフォントもありますので。リスク管理の一つとして気をつけて下さい。

初心者でも安心 フォントのおすすめ選び方

――MORISAWA PASSPORTを初めて使うと、色々なフォントがありすぎて、何を使えばいいか分からなくなってしまう学生も居ると思います。そういう場合の、オススメのフォントの選び方を教えて下さい。

書体見本

須田さん:モリサワのホームページに「書体見本」というものがありまして、これを使うと、書体の分類とか、イメージワードとか、用途とかで、検索することが出来ます。

須田さん:例えば、「明朝体」「やわらかい」等のイメージワードにチェックを入れると、ぱぱぱってモリサワがこれが良いんじゃないかっていうフォントが出てくるので、どういう風に選んだら良いか分からないなというときは活用して頂きたいです。

須田さん:一覧を見て、このフォントについてもうちょっと調べたいなってなったときは、そのフォントを選択すれば、書体見本と、その書体の詳しい解説が出てきます。ここにはモリサワからのメッセージとかが書いてありますので、こういった所を手がかりに選んで頂けたらなと思います。

書体見本では試し打ちも可能

FONT SWITCH PROJECT

須田さん:あと、私達「FONT SWITCH PROJECT」という活動をやっていまして、色んなところでフォントを身近に感じてもらって活用してもらいたいという活動をしています。

須田さん:フォントについて色んな情報を提供しているウェブサイトです。

須田さん:ここでは、学生さんに向けて、Fontビギナーズガイドという、フォントの基礎的な講座みたいなのを載せています。「ウエイト(書体の太さ)を変えるとこんな風になるんだね」だとか、「ゴシック体と明朝体は何が違うのか」とか、「横画や縦画といった字を構成する『エレメント』という要素があって、その隅々を見ていくとデザインの見方が変わるね」とか、そういう記事を掲載しています。

須田さん:YouTubeもありまして、先程の記事が動画として出てきたりもするので、もしよければ困った時等に参考にしてみて下さいね!

もっとフォントを身近に感じて欲しい

――それでは、次に、モリサワさんの、これからの学生向けサービスの展開について、差し支えない範囲で、お願いします。

須田さん:先程の「FONT SWITCH PROJECT」のように、フォントを身近に感じて活用してもらいたい、美大生とかデザインを学ぶ学生さん以外にもフォントの力を活用していただきたいと思っています。

須田さん:その一環として、FONT SWITCH PROJECTで学生向けのセミナーを行っています。
例えば、イラストレータのさいとうなおきさんをゲストにお呼びし、より伝わりやすいイラストや配信のことをテーマにお話いただく、オンラインイベントを実施しました。

須田さん:また、最近ご一緒させて頂いたのが、早稲田大学准教授の早水桃子先生とのイベントや動画です。数学の研究者であり、YouTubeで講義動画を配信されている早水先生に、研究が伝わりやすいフォントやレイアウトについてお話頂きました。

須田さん:この様に、デザイン分野だけではないゲストをお呼びしてイベントを行うことがあります。
より、フォントの間口を広くしたいなと思っていますので、もしイベント参加したいなという方が居ましたら、オンライン参加できるものも多いですので、是非ご参加頂けたらうれしいなというのが私の気持ちです。

最後の質問 学生に一言

――最後に、学生の皆さんに向けて、一言お願いします。

須田さん:多分、自分の学校が認定校だとが、大学のPCにいっぱいフォントが入っているだということを知らない人が多いと思います。是非活用して、自分の夢だとか希望だとか、趣味だとか、進路だとかに役立てていただければいいなと思っています。

長さん:学校の中で知っている人は知っているんだろうけれど、知らない人は知らないんだね。 

――私も、これからも、何か作るという時とかには、是非活用していただきたいと思います。ありがとうございました!


質問タイムを終えて……

須田さん、長さんへの質問を終えて、取材で使わせて頂いたお部屋を色々見させて頂きました!

記事冒頭でも書いた通り、この部屋は、モリサワ東京本社の一室として、今回のような取材の際に使用されている様です。

部屋で一番目立つのが、なんといっても壁に大きくそびえる棚。ここには、モリサワのフォントのグッズなどが置かれています。
中には、他の企業さんとのコラボレーションの物であったり、実際に販売している物もあるそうです!

更には、このお部屋には、モリサワのフォントを使用・イメージしたポストカードが置かれていました。こちらはなんと、お土産として頂いてしまいました。ありがとうございます……!

この様な感じで、無事、取材が終わりました。

取材を終えて

フォントというのは、それ単体で見ると非常にマニアックな話題ではありますが、現在社会で生活していく上では欠かせない物です。

特に、我々大学生は、レポート等の提出物・発表物といった何かを、PCで作るという機会も多いと思います。そして、大学を出た後も、仕事であったりはたまた趣味であったりの場で、殆どの人がフォントを用いて何かを作るという場面がある筈です。

そのフォントを、学生だから、千葉商大生だからと、オトクに提供してくださって、更には、広報やイベントでフォントに関する知識を深める機会を提供してくださっているというのは、今後、社会で生きていく中で、必ず役に立つと思います。

是非、この機会に「フォント」という物に少しでも興味を持って、課題を作る時に大学のPCのMORISAWA PASSPORTのフォントを使ってみたり、ちょっとウェブサイトでフォントの記事を読んでみたりしてみてほしいです。表現の幅が、今までと比べて劇的に変わると思います。

最後に、取材を受けて下さった株式会社モリサワさん、須田さん、長さん、貴重な体験をさせてくださりありがとうございました!
そして、ここまで記事を読んで下さった方々も、どうもありがとうございました!

(執筆:トポス)

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