11月25日(土)メディア日記

 長野に住む友人から信濃毎日新聞25日朝刊の社説が送られてきた。信毎の社説は「慰安婦問題は日本が歩み寄らなければ真の解決をみない」と大胆に書いた。有力地方紙がここまで踏み込んだ社説を書いたことに正直驚いた。長いが全文を転載する。

「韓国の高裁が日本政府に、元従軍慰安婦らへの賠償を命じた。日本政府は、国家は他国の裁判権に服さないとする「主権免除」を掲げ、裁判そのものを否定する立場を取っていた。免除は絶対的な原則でなく、高裁は認めなかった。深刻な人権侵害に遭った人たちの裁判を受ける権利が優越する―という国際司法の潮流を踏まえている。
 1965年の日韓請求権協定や2015年の慰安婦合意が賠償請求権を消滅させるか否かは、日本が公判に参加しなかったため、争点から除かれた。一審は「外交的衝突は不可避」として免除を認め、訴えを退けていた。正反対の判断も、日本の負う責務は変わらない。
高裁は、日本が原告を慰安婦として無理に動員し、軍人との性行為を強要したと指摘。慣習である主権免除を認める範囲は狭められる方向にあるとし「韓国の国民に取られた不法行為に関しては適用されない」と結論付けた。植民地支配を正当化するような国際法は、支配された国の人々から見直しを訴える声が強まっている。国際社会に広がる人権重視を踏まえ、各国の司法は現代の法律に照らし、過去の条約や協定を解釈する流れにある。請求権協定の際、日本は植民地支配の違法性を認めず、賠償責任を負わなかった。韓国の司法はこれを果たすよう迫っている。岸田文雄政権は駐日韓国大使を外務省に呼び「判決は断じて受け入れられない」と抗議した。相も変わらず「請求権協定で解決済みだ」と繰り返している。慰安婦合意は当事者の意向を聞かずに成立した。「日韓両政府が協力し、元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷を癒やすための事業を行う」と記されたのに、当時の安倍晋三首相は、元慰安婦が求めた手紙での謝罪を拒んだ。
 元徴用工問題は、韓国政府傘下の財団が、日本企業の賠償金支払いを肩代わりすることで一応の決着を見た。内実は、米国の強い意向もあり、日韓が植民地支配の清算を棚上げし、安全保障面の利益を優先したに過ぎない。今回の判決を受け原告側は「日本に謝罪を促したい」と語っている。元の慰安婦も徴用工も、日本が植民地支配と戦争責任を認めることを通じた、自尊心の回復を望んでいるのだろう。韓国政府が対日関係の改善に積極的ないま、日本が歩みよらなければ真の解決を見ない。問われているのは人権に対する認識だ」

 共同通信によると、相次ぐ差別的言動で批判を受ける自民党の杉田水脈衆院議員は、メディア側から開催を求める声が出ている記者会見に関し、24日付のX(旧ツイッター)に書き込み、今後も応じない考えを明らかにした。杉田は理由の一つとして、自身の発言をメディアが切り取って報道するからだとの認識を示した。自分の意に沿わないメディアによる会見質問や批判報道を警戒し、公の場での対外説明を拒んだ形。
一方で杉田に好意的な右派系月刊雑誌は、「杉田水脈イジメが凄すぎる」(WILL)と擁護し、杉田自身は「私を潰そうとしている人の正体」(Hanada)などと寄稿している。

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