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基礎体温はどうして測るの?

なぜ基礎体温を測るのでしょうか。
それは基礎体温が妊娠できるタイミングを判断する「一つの指標」となるからです。
基礎体温は「プロゲステロン」という排卵した後に卵巣から分泌されるホルモンと相関します。

脱落膜化とは?

プロゲステロンについての解説は改めて行いますが、プロゲステロンは子宮内膜を「脱落膜化」するのに重要なホルモンです。「脱落膜化」と聞くとはがれ落ちてしまうように子宮内膜が変化すると考えられてしまうのですが、これは月経のときに内膜がはがれることから名前が由来しているだけで、これは着床に向けた重要なプロセスです。生理のあとに新しくできた子宮内膜が脱落膜化することで受精卵(胚)を受け入れる準備をします(文献1)。
妊娠においては脱落膜化が起きないと着床やその後の妊娠継続は通常できません。

排卵すると子宮内膜が脱落膜化する!…だから、着床時期がわかる!

子宮内膜は、排卵した後に卵巣にできる黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌し脱落膜化が起こります。脱落膜化することで、排卵した後6~10日目には、子宮内膜は「着床の窓」と呼ばれる着床時期になります(文献1)。
同じころに排卵した卵子は精子と受精して、細胞が分割しながら成長し最終的に胚盤胞と呼ばれる胚になります。胚盤胞は透明帯から孵化し脱落膜化した子宮内膜と接着し入り込み妊娠が成立します。この着床の窓と胚発育の速度が一致しないと通常妊娠は成立しません(文献1)。
基礎体温がプロゲステロンの分泌と相関するということは,基礎体温を測ることによって、自分が排卵しているのか、排卵した後にプロゲステロンが十分に分泌されているかを知ることができるということです。それはすなわち「着床の窓」を知ることができるということです。

月経周期は平均28日!

次に月経の周期についてお話します。

卵胞期(低温期)

女性の月経周期の正常範囲は、25〜38日(平均28日)です。月経から卵胞が発育して排卵するまでの期間は、「卵胞期」もしくは基礎体温の低い時期のため「低温期」と言い、その平均は約14日間です。

黄体期(高温期)

また排卵から次の月経までの期間を、「黄体期」もしくは「高温期」と言い、その平均も約14日です。黄体期はほとんどの女性で14日間のため、月経周期は主に卵胞発育して排卵するまでの期間と関係します。
卵胞期(低温期)と黄体期(高温期)を判断する一つの目安が,「基礎体温」となります。

排卵時期の予測方法

排卵が早ければ月経周期は短くなり、排卵が遅ければ月経周期が長くなります。つまり排卵時期の簡単な予測方法は「(平均月経周期日数)−(14日間)」で、例えば32日間の月経周期であれば、「32―14=18」となり、月経から18日目が排卵時期になります(文献2)。

素朴な疑問…月経って初日はいつ? 

上述した月経周期をどう数えるかには、まず月経がいつ始まるか、ということを知っておく必要があるでしょう。実は出血がグンと増えた日を月経1日目としてカウントし、なんだがジワジワ血が出てるな….という日はまだカウントしません。

基礎体温

さて,いよいよ基礎体温の測りかたについてです。

基本的な測定方法

基礎体温は通常の体温測定と異なり、外気温に影響を受けにくい朝目覚めたときの起床前に0.01℃刻みの基礎体温用の体温計を舌の下に入れて測定します。同じ時刻に計測するのが望ましいと言われていますが、起床前の体温であれば必ずしも同一時刻でなくても問題はありません(文献3)。また通常基礎体温は体温表を細かく1日1日見ることはなく、体温表全体でみて評価をするため、時々測定し忘れるくらいは心配しないでください。
高温期の定義は、低温期より0.3℃以上の体温の上昇が7日以上継続することです。高温期は基本が10日間以上で、それより短いとプロゲステロンの分泌が不足している「黄体機能不全」の可能性があり、高温相がはっきりせず月経周期が長い場合には、「排卵障害」の可能性があります。

月経に関連した体温の推移

また妊娠している場合には、妊娠のホルモンhCGの影響で黄体が賦活化されて、プロゲステロンが持続的に分泌されるため、高温相が継続します。

分泌されるプロゲステロンの量は基礎体温ではわからない

体温上昇の変化とプロゲステロン分泌「量」は相関しません。普通の人より基礎体温が低いからプロゲステロンの分泌量が少ないということはありません。

でも本当は基礎体温だけじゃ排卵日を特定することはできません!

排卵日の基礎体温のパラメーターとして用いられるのは、体温陥落日、低温期最終日、高温期初日など諸説あるものの一定の見解はなく、基礎体温表のみで排卵日を特定することは難しいです(4)。そのため、自分で排卵日を正確に確認する場合には、尿による排卵検査薬を併用することをおすすめします。

参考文献
1. Gellersen B, Brosens JJ. Cyclic Decidualization of the Human Endometrium in Reproductive Health and Failure. Endocrine Reviews 2014;35:851-905.
2. 黒田恵司, 地主誠. 総論 不妊治療に必要な基礎知識 月経周期. データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針 改定第二版 Medical View社 32-36, 2022
3. Kawamura M, et al. Frequency of rate of body temperature chart at mid cycle in pregnant women and the subsequent effect on pregnancy. Clin Exp Obstet Gynecol 2008;35:45-7.
4. Direito A, et al. Relationships between the luteinizing hormone surge and other characteristics of the menstrual cycle in normally ovulating women. Fertil Steril 2013;99:279-85.e3.

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