medicalgram【メジカルビュー社公式】

市ヶ谷にある医学書出版社が発信するアカウントです。 専門医の先生方にご監修いただいた正…

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市ヶ谷にある医学書出版社が発信するアカウントです。 専門医の先生方にご監修いただいた正しい医療情報を発信いたします。

マガジン

  • 子供がほしい人のための正しい知識

    メジカルビュー社は産婦人科の専門書を数多く発行してきた経験を活かして、不妊治療・不育症治療の医学的に正しい知識を発信いたします。 不妊治療・不育症治療のエキスパートである黒田恵司先生の監修により、妊活をこれから始める方にも・すでに始めている方にも、不妊症・不育症専門医の監修・執筆による、エビデンスが明確な、偏りのない情報をわかりやすくコンパクトに、厳選してお届けいたします。 女性を診る機会のある医師の方にも、知識のアップデートにご活用いただけたらと思います。ぜひフォローください。 【毎週水曜日更新予定】

最近の記事

不育症の治療方法②

不育症の治療法は、何度も言いますが流産率を上げる不育症や流産のリスク因子を少しでも減らすことです。それぞれのリスク因子ごとの治療法を解説します。 前回に続き、今回は「糖尿病や肥満」「免疫異常」「生活習慣」「女性の年齢」「原因不明不育症」を取り上げます。 糖尿病や肥満妊娠前からの管理が重要 糖尿病や糖尿病予備軍といわれる耐糖能異常や肥満は流産のリスク因子になります(文献1)。肥満があれば妊娠前から適度なダイエットや栄養管理をすることも流産予防には重要です。 また糖尿病もしく

    • 不育症の治療方法

       不育症の治療法は、何度も言いますが流産率を上げる不育症や流産のリスク因子を少しでも減らすことです。それぞれのリスク因子ごとの治療法を解説します。  まず,今回は「血栓性素因」「甲状腺機能異常」「子宮内病変」「染色体異常」を取り上げます。 血栓性素因(抗リン脂質抗体症候群、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、第XII因子欠乏症)基本は低用量アスピリン療法 血栓性素因の治療は、血液をサラサラにする低用量アスピリン療法が基本です。低用量アスピリン療法は、痛み止めでおなじみ

      • 流産は治療できる?

        流産の治療は難しい流産の約80%は受精卵に偶発的に生じた染色体異常が原因で、その受精卵の染色体異常を治療することは不可能です(文献1)。ヒトはもともと受精卵の染色体異常が多く、どうしても避けられない流産があります。 ただ、受精卵以外の問題で流産率を上げるリスク因子を、少しでも減らすことはできます。つまり流産の治療の基本は、流産や不育症のリスク因子をひとつでも減らすことです。 ただ、不育症の多くはリスク因子がない原因不明不育症です。 これまでにたくさんの原因不明不育症に対する試

        • 流産や不育症の検査方法

          以前、流産や不育症にどうしてなってしまうのか?またそのリスク因子についてお伝えしました。 今回は、流産や不育症の検査方法についてお話したいと思います。 流産や不育症のリスク因子は以前述べたとおり、さまざまです。その主な検査方法を表に示します。 問診・生活習慣の確認まずは、生活習慣の確認をしましょう。 流産率を上げる肥満、喫煙やカフェイン摂取状況、精神的なストレスの有無を確認します。 子宮形態・内腔の確認経腟超音波検査や子宮鏡検査で、子宮の形態や子宮内膜ポリープや慢性子宮

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        • 子供がほしい人のための正しい知識
          26本

        記事

          間違いだらけの不妊治療 体外受精編②

          インターネットをみてみると、体外受精に関して本当にたくさんの間違った情報が流れています。また一部の企業は自分たちの製品を使ってもらうため、一部のクリニックは自分たちの病院へ患者さんを呼び込むために、エビデンス(根拠)の不確定な検査や治療をあたかも完成された治療のように書いていることもあります。  ここでは、前回、前々回に引き続き、きちんとしたエビデンスのある、間違いのない情報を実際に患者さんから聞かれた質問に沿って、説明していきたいと思います。 Q. 卵巣刺激をしないで採卵

          間違いだらけの不妊治療 体外受精編②

          間違いだらけの不妊治療 体外受精編①

          インターネットをみてみると、体外受精に関して本当にたくさんの間違った情報が流れています。また一部の企業は自分たちの製品を使ってもらうため、一部のクリニックは自分たちの病院へ患者さんを呼び込むために、エビデンス(根拠)の不確定な検査や治療をあたかも完成された治療のように書いていることもあります。  ここでは、きちんとしたエビデンスのある、間違いのない情報を実際に患者さんから聞かれた質問に沿って、説明していきたいと思います。 Q. 日本が世界で最も体外受精で妊娠率が低い国と言わ

          間違いだらけの不妊治療 体外受精編①

          間違いだらけの不妊治療(一般不妊治療編)

          不妊治療に関して、インターネットではたくさんの情報が流れています。すぐに情報が得られるので、非常に便利なのですが、その一方で間違っている情報もたくさんあります。 患者さんから実際に聞かれた質問に沿って、間違いのない情報を説明していきたいと思います。 Q. 閉経するまで妊娠・出産はできますか?いつまで妊娠ができるか、というのは非常に難しい質問です。 閉経は平均50歳ですが、50歳近くまで妊娠できるなんてことはありません。ときどき海外セレブなどで50歳超えて妊娠・出産したとい

          間違いだらけの不妊治療(一般不妊治療編)

          どうすれば不妊治療と仕事を両立できるの?

          不妊治療と仕事の両立は難しい!しかし…仕事をしてキャリアを積む中で、女性は妊娠・出産の時期をいつにすべきか悩む方も多いと思います。総務省の労働力調査によると、日本の雇用者のうち女性の割合は年々増加して、2017年にすでに40~50%を占めており、20~44歳の生殖年齢の女性の7割以上が仕事をしていることがわかっています(文献1)。 職場の理解は重要 30代に入って、キャリアを積んで重要な仕事を任されるようになってくるころには、ちょうど妊娠適齢期があり、仕事を優先すると妊娠

          どうすれば不妊治療と仕事を両立できるの?

          どういう状況ならば不妊治療に保険が使えるの?

          不妊治療はもともとほとんどが保険適用外の自由診療で、特に体外受精は経済的負担も大きいために、43歳未満の女性を対象に厚生労働省が助成制度による支援を行ってきました。2022年4月に体外受精に対する助成支援事業が撤廃され、大幅に不妊治療の保険適用の拡大が進みました。 厚生労働省が提示した、保険適用の概要を図に示します(文献1)。これだけみてもわからないことが多いと思いますので、解説をしていきたいと思います。ただし今回解説する不妊治療の保険診療は2022年現在の内容で、まだ流動的

          どういう状況ならば不妊治療に保険が使えるの?

          データから妊娠力を考えてみよう

          これまで不妊症や不妊症に対する不妊治療について書いてきました。 ここでは、すでに不妊治療を開始している方を対象として、検査結果をもとに、あなたの妊娠力を考えてみたいと思います(まだ検査を行っていない方であれば読み飛ばしていただいても結構です)。 一般的な不妊治療のスクリーニング検査は、①経腟超音波検査、②子宮卵管造影検査、③ホルモン採血検査、④抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査、⑤精液検査などが挙げられます。 これらの中から、子宮卵管造影検査は卵管閉塞の有無を確認し、卵管の

          データから妊娠力を考えてみよう

          不妊治療はどのように進んでいくの?

          不妊治療は不妊の原因を見つけ、治療することが原則です。 例えば不妊原因が排卵障害であれば、排卵をサポートすることで、他に不妊原因がなければ妊娠できます。 不妊治療を行ううえでの注意点筆者が考える、不妊治療を進めるうえで難しい点は3つあります。 ヒトは妊娠率が低い! ひとつはヒトの妊娠率の低さです。前述のとおり不妊の原因がなくてもヒトは1カ月で約20%しか妊娠しません。そのため不妊症なのか偶発的に妊娠できていないのか確認するのに時間を要します。 不妊原因には検査不可能な

          不妊治療はどのように進んでいくの?

          不妊治療ではどれくらい通院しなければいけないの?

          不妊治療がはじまると何度も通院しなきゃいけないから、仕事しながらでは無理かな…、と諦められている方もいるかもしれません。通院回数や診療時間を知っておくと仕事などとの調整にも役立ちますので解説していきます。 タイミング法と人工授精タイミング法や人工授精は、超音波検査やホルモン検査、基礎体温などで排卵日を予測し、妊娠しやすいタイミングで性交渉もしくは人工授精を行う方法です。 通院回数は、排卵障害の有無によって異なります。 排卵障害がない場合 卵胞(卵子の入っている袋)の発育

          不妊治療ではどれくらい通院しなければいけないの?

          不妊治療ではどんなことをするの?②体外受精

          体外受精のプロセスは?体外受精は5つ過程と必要に応じて6つ目の胚凍結の過程があります。 ①卵胞を複数発育するための「卵巣刺激」 ②卵子を採取する「採卵」 ③体の外で卵子と精子を受精させる「体外受精」もしくは「顕微授精」 ④受精後に培養した受精卵を子宮の中に移植する「胚移植」 ⑤着床や妊娠維持にとって重要なプロゲステロン(黄体ホルモン)を補充する「黄体補充」 ⑥すぐに使用しない受精卵を凍結保存する「胚凍結」を含みます。 その詳細について解説していきます。 卵巣刺激通常、1回

          不妊治療ではどんなことをするの?②体外受精

          不妊治療ではどんなことをするの?①

          不妊治療にはどんな種類がある?不妊治療における治療方法は大きく分けると3つあります。排卵の時期にあわせて性交渉をもつタイミング法、排卵の時期にあわせて運動性の高い精子を集めて子宮内に注入する人工授精、排卵する前に卵子をとって体外で受精した受精卵(胚)を子宮内に入れる体外受精があります。 タイミング法まずは排卵のメカニズムのおさらい 女性の卵巣では、月経が始まったあとから、だんだん卵子の入った卵胞が大きくなり、それに伴い血液内のエストロゲン値が上がります。 排卵時期になると

          不妊治療ではどんなことをするの?①

          不妊原因は人それぞれ違う? 検査の重要性

          不妊の原因を探すことが、妊娠への早道不妊治療はまず何が妊娠できない原因かを探すことが最も重要です。その不妊原因が見つかり取り除くことができれば、自然に近い治療で妊娠できる可能性があります。それぞれの不妊原因と、それに対するスクリーニング検査(不妊原因をみつける検査)を見てみましょう。 不妊原因は一つとは限らない 例えば排卵障害などの明らかな不妊原因がひとつあっても、不妊症のスクリーニング検査はすべて行うことをお勧めします。もし検査を怠って治療を進めた場合に、不妊治療を行っ

          不妊原因は人それぞれ違う? 検査の重要性

          基礎体温はどうして測るの?

          なぜ基礎体温を測るのでしょうか。 それは基礎体温が妊娠できるタイミングを判断する「一つの指標」となるからです。 基礎体温は「プロゲステロン」という排卵した後に卵巣から分泌されるホルモンと相関します。 脱落膜化とは?プロゲステロンについての解説は改めて行いますが、プロゲステロンは子宮内膜を「脱落膜化」するのに重要なホルモンです。「脱落膜化」と聞くとはがれ落ちてしまうように子宮内膜が変化すると考えられてしまうのですが、これは月経のときに内膜がはがれることから名前が由来しているだ

          基礎体温はどうして測るの?