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「音楽なんてキライだ!」第15話 人生の贈り物が目覚めるとき

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新しい感覚

忘れもしない、あれは茨城の鹿島神宮へ車でドライブをしているときのこと。車の中では彼女が持ってきたケツメイシのCD「ケツノポリス10(アルバム)」の曲が流れている。

今までまったく関心のなかったラップ調の曲からは、歌詞がほとんど聞きとれない。「手紙~あれから」が流れていたけど、ほぼ聞いていないのと同じ状態で運転を続けていた。

すると、「ひろきにとっていい曲だと思うから、よく聴いてみて」と、彼女は同じ曲を再生してくれた。

10年前の僕たちへ 今を伝えよう
やるべきことはそれなりに 手を抜かずに~♪

最初は英語でも聞いているかのようで何を言っているのか聞き取れなかったけど、意識して小刻みなラップのリズムに耳を傾けていくと、少しずつ歌詞の意味を理解できるようになった。
確かに彼女の言うとおりだった。
最初は、こんな音楽を聴いているのか~、と少し好みの違いに戸惑った気持ちもあったけど、しっかり聴くとその歌詞は、私が歩んできたここ10数年をそのまま表しているかのようだった。

ちょっとした衝撃でもあった。こんなに自分にフィットする歌があるなんて。このときになってはじめて気づいたことでもあった。   
私は長い間、自分が好きになる曲はないだろうと、無意識のうちに、身近にある音楽に対して心の扉を閉じていたのだ。

それから数か月たったころから、二人でよくカラオケに行くようになった。彼女は、音程もリズムもしっかりとれていて、心から楽しそうに歌っていた。
私はというと、久々のカラオケで音痴はだいぶ解消されたとはいえ、大学時代のうまく歌えなかったときの記憶もあったからか、最初は伸び伸び歌えていなかった。
それでも、何回かカラオケに通ううちに思い切ってケツメイシの歌に挑戦するようにもなった。「ケツノポリス10」の中には好きになった曲がいくつもあって、くり返し聴いているうちにサビの部分を覚えていたからだ。

しかし、最初はまったく歯が立たなかった。少しずつ慣れていったけど、今までトライしてきた音楽とは、まったく違う分野でもあり、ラップの独特のリズムに歌詞を乗せていくのが難しくもあった。
それでも自分としては、以前の自分とは比べ物にならないくらいにカラオケで歌うことができたから、大きな満足感を得ていた。

最初は彼女の前で歌うことに緊張していたけど、だんだんと自分が歌いやすい方法を見いだしていくようにもなっていた。
たとえば、マイクを使って歌うと、どうしても喉を使って歌うようになってしまい、思ったように声が出なくなる。
声楽を習い始めたときから、マイクを使わないで歌ってきたから、やっぱり身体を使って歌いたいと思って、マイクを使わないで歌うようにもなった。

また、そのころにはおもしろいことが自分の中で起こるようになっていた。たまに、自分の内側でおのずと響いてくる曲があって、その歌詞を捉えていくと、そのときの自分にとって大切なメッセージになっていることが多かった。

お前ならいけるさ トム
誰よりも遠くへ
地平線のかなたで待っている
すばらしい冒険が

子どものころによく見ていたアニメ「トム・ソーヤの冒険」の主題歌の歌いだしの部分だ。自分の内側にすーっと流れてくるメロディーにその歌詞が乗ってくると、ああ、確かにその通りだと、心から思えることが多かった。
このころに自分の内側で響いてくる曲には、リズムも歌の抑揚もしっかりとついている。こんなことは以前だったらなかったことだ。
そして自分にとっては、歌詞の一つひとつが魂の響きと言えるものだった。
基本的に私は、人生において約束された旅というものが誰にでもあると、普段から思っている。
成し遂げなければいけないというものではなくて、自分の中で事前に設定しているもの。つまり、もとからたどることが決まっていた魂の計画のようなものが、人の内側にはあるのではないかと。
そして、才能や特質など思ってもみないような宝物を持ち、人は生まれてきていると思うのだが、それが自分の内側にあると気づくまでには、時間も、多くの体験も必要になる。

私が体験してきたことは、自分にとって必要だからこそ、人生の中に現れてきたのだろう。ボイストレーニングをしようと声楽のレッスンに通い始めてから、何が何だかわからないままクラシックの楽曲を歌うことになり、それが一つのきっかけとなって音楽への扉が開き始めた。
私は、人生の中で、音楽が一番苦手だと思っていた。
これは30代になったころの体験だが、大学生のときにカラオケでよく歌った曲を口ずさんでみても、自分の耳に聞こえてくるメロディーは、心地いいものではなかった。いつも思っているわけではなかったけど、そのころから歌えないということに対し、妙に気になることが多くなっていたのだ。
声楽のレッスンは、そんなときに自然と訪れた流れだった。最初のレッスンに向かう途中で胸の内側で響いてきたあの曲の歌詞、「君のゆく道は果てしなく遠い……」は今でも忘れない。
確かにあの歌詞に見合う体験が多くあったように思うけど、自分の内側にあったものを一つひとつ見てきて本当によかったと思う。

内側に眠っているものを開いていくというのは、簡単にいかないこともある。それは私のように、内側に潜んでいる過去のトラウマと向き合わなければいけないときもあるからだ。
大切なのは準備ができたときに自分にとって必要なことと向き合うことなのだろう。無理をする必要はないと思うけど、人それぞれの人生の中で、自分と向き合うタイミングはきっとあると思う。
だからこそ、私自身の体験を通して、こんなやり方があるよと、私は多くの機会の中で伝えることもしてきた。

そして、私が音痴を克服してきたこのプロセスは、自分自身の中にある可能性をさらに引き伸ばしていくものとして、いつの時代にも、またどんな分野にも参考になるだろうと考えるようにもなった。




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