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第213話 愛と憎悪を内包している


 かつて私とはプレアデスにおける、姫のような王女のような者だった。私ほどの深い愛を擁する者もそうはいない。

 ある時そこに彼らがやってきた。愛する星の者たちは、私ほどには彼らを受け入れる愛を持ち得なかったけれど、かといって彼らをどう扱ったらいいのか一様に皆考えあぐねていた。

 それでも目の前の異邦人たちは“現に目の前で”困窮している。彼ら自身、元いた星を追われて広い宇宙を彷徨っている。今、彼らを再び放り出してしまうことなど私にはどうしてもできなかった。そこで私はただ一人、彼らオリオンの者も、プレアデスの者たちも全てを受け入れる覚悟を決める。

 プレアデスの民は私についてきた。私が彼らを愛していることを、彼らはよく知っていたから。
 ところがオリオンの目的とはプレアデスの破壊。そのために難民の姿を装い、潜入した彼らが秘密裡に活動すると、複数箇所から同時爆破され星が散った。

「騙された!!」

何故!我が愛する星を壊したか!
何故!平和を破壊したか!
何故!罪なき命を奪うのか!!


 私は闇を学びに行った。自分の治世に降って湧いた理解の及ばぬ災いを前に、彼らが何を考えているのか全くわからなかったからである。少なくとも自ら闇というものを知れば、彼らが何故そのような行いをしたのかを解明できるかもしれない。

 オリオンの闇へと堕ちると、そこで“彼”に出会うことになった。どうやってそれが分かったのか、彼は私の素性を見抜いた。

「ここはあなたのような方がいる場所ではありません!」

 そう、彼は言った。
彼もまた、闇を知るために闇堕ちした者。私たちは闇の中で助け合い励まし合い、かけがえのない友情を築く。そして共に地球へと転生すると、その人はのちの私の子供、あきらとなる。


 オリオンの闇で視えたもの、それはこんな感情だった。

「プレアデスなんて光しか知らない馬鹿な奴らが憎らしい。こっちはお前らみたいな能天気とは違い、日々苦しみに満ちている。毎日絶望でいっぱいで、愛なんてあっても生きていけない。
 愛がいかに愚かなものか、あいつら潰して解らせてやる。不要な愛など破壊してしまえ。」

……

 あきらのハイヤーセルフと共にここに潜った“今の私”……サイレントで自己成長を続けてきた私には、彼らの悲痛が理解できた。
 オリオンがプレアデスを憎悪した一見複雑な感情も、細部まで分解していくと『嫉妬』や『悲しみ』や『怒り』。それから更にその奥にある、『淋しさ』から来る『助けて』など、今のこの私に宿るウニヒピリの分身とまるで何も変わらなかった。

 プレアデスがオリオンの闇を愛したいと求めたように、彼らオリオンも光に対し、『わかってほしい。』『愛してほしい。』とただ求めていただけだった。

『闇は光を求めていて、光も闇を求めていた。』

 けれども分離を主軸としていた当時の宇宙空間に当たり、ではやはりオリオンがあれほど台頭できたその動力とは『孤独』だった。
 孤独が人を悪魔に変えた、ただそれだけだったのだ。

……

 するとそこに気づいたことに比例して、スサナル先生の闇が出てくる。『プレアデスという私』が理解を望んだ『オリオンという彼』の闇。知り得たかった、彼の錘(おもり)のひと雫。


 先生の内側には、「自分が彼女を置いていったけど“置いていかれた”」という気持ちが残る。

 ねぇ、一体どこにいるの?

「私はここ。一緒にいるよ。」

……僕は最初、職員室のみんなのほうがおかしいと思ってた。だけど自分が外される状況があまりに長く続いて、もしかしておかしいのは自分のほうかもしれないと思い始まった。

 自分の弱さを見たくないから、そこを認めるのは苦しかった。本当は気づきたくも知りたくもなかった。

「ヒリヒリしたね。痛かったね。
血の気が引いて、嫌な汗が出るようだったのね。」

 恥ずかしい。
今まで自分に愛を注いでくれた人たち、その人たちのことを馬鹿にしていた。その人たちの愛なんかいらないと思ってた。“彼女”の愛もいらないと思ってた。いつも僕を想ってくれていたのに。

 弱い自分を認めるのが怖い。
強い自分、できる自分の振りをしてきた。だけど本当の内側の自分は弱かった。子供たちで強さを誤魔化していたけどおそらく誰より弱かった。

『こんな自分には価値がない。』
そう。僕には価値がない。

「本当に私と同じだね。
私も私の価値がわからない。今もそれを探してる。
 でもね、やってしまったことは取り返せないけど、そこから自分の弱さを認めて変えていくことはできるよ。あなたは弱くていいよ。強くなくていい。
 だって弱さを知ってることが、実は一番の武器なんだ。ちゃんと弱さをやり切った人にだけ、その本当の底力が使える。多分私たちって、きっと誰より無敵かも。
 プレアデスだって元通りくっつく訳じゃないけど……、それは私にとっても辛いことだけど……。
それでも“今ここ”から自分を変えていけば過去の自分も変わっていくよ。私も私を探し続ける。」


……「私と同じ。」

 自分でそう口にして、俄か(にわか)に落ち着かないものを感じた。
 その正体に気がつくや否や呼気が乱れ、上がってきた闇によって頭蓋骨が膨れ上がる。耳の後ろに脈拍を感じると、鼓膜が鼓動を拾い続ける。

 早鐘が、この世の螺旋を教えてくれることになる。




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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平安時代、雛祭りとは今のような形ではなく形代(かたしろ)、人形(ひとがた)に穢れを移して川に流す身代わりの儀式でした。それほど死が身近で、子供が夭折することが多かったわけです。子供がきちんと成人するって本当はすごく有り難い(古語【有難し】:  滅多にない、珍しい)こと。
日頃大事なお子さんを、自分の不機嫌の的にしたりなんかしてないですか?子供のほうが進化してますよ。
今日という日をきっかけに振り返ってみてください。

さてそれと。善と悪との判断ではなく、“曇りなき心眼で”今の世界を視てみてください。善悪は更なる敵を作るということ、立場によって容易に反転すること、闇を学ぶ機会とは与えられているギフトだということ、それは有り難い(貴重な)ことです。

そのことを思いながら今日はそんな、純度の高い子供の波動を映像と共に感じてみてください。
Michael Jacksonの♪Heal the world.

銃を持つ兵士と非力な子供たち。どちらが真に強き者か。
……でも、間違ったっていいんです。戦地に赴く兵士だって、かつてはちゃんと、“気高き子供”だったんですから。

高校時代のよりこ、私に無理矢理CD布教してくれて有り難う笑

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←今までのお話はこちら

→第214話 倦怠のうちに死を夢む


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