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【ウクライナ情勢】ロシア国民「茹でガエル」説

 ウクライナ南部ヘルソン州の「知事代行」をかたる親ロシア派のサリド氏がドニエプル川右岸(西岸)の住民を左岸(東岸)に退避させると発表し、ロシアの「特別軍事作戦」を指揮するスロビキン総司令官がウクライナ東・南部4州の状況は緊迫しており「困難な決断を下すことも排除しない」と語った18日時点で、こりゃドニエプル川右岸での化学兵器・核兵器使用の前触れかと身構えたが、どうも違ったようだ。

 プーチン大統領は翌19日、東・南部4州に戒厳令を敷くと同時に、ロシア国内26州の行政権限を強化する大統領令に署名。スロビキンが語った「困難な決断」とは、戒厳令を指していたもよう。

 最悪の事態に一直線、というわけではなくておのれの見立ての誤りにかえって安堵したぐらいだが、ロシア国民はそうもいかんでしょう。4州に戒厳令と言ったって、既に戦火が及んでいる場所も多い地域で、実質的な意味がどれだけあるかは疑問。むしろロシア国内の締め付け強化の方が「本命」のようにも見えるからだ。

 国民総動員令を出したりというわけにはいかないので、4州の危機を口実に国内の動員体制を事実上引き上げる、という策略。米シンクタンク「戦略国際問題研究所」の専門家マックス・バーグマン氏いわく、「市民を慌てふためかせかねない重大な措置を逐一発表するのではなく、徐々にこうした措置を打ち出していくというアイデア」である。

 題して「茹でガエル戦略」。ロシア国民はあまり意識しないうちにプーチンの戦争に協力させられ、気づいたら第二次大戦中の日本国民のように男手は兵隊に取られ残された婦女子は芋ばっかりの飯を食う羽目に陥る、というわけです。

 何にせよ、今回のプーチン会長の動きは「強さではなく混乱の現れ」であり、その狙いはウクライナ軍という外敵ではなくロシア国内の「革命」機運を摘み取ることにありそう、というのが米欧の見立てのようだ。私はまだ、「空白地帯」となったドニエプル右岸に核落とすぞ、と威嚇を強めるシナリオを警戒してますが。


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