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幸福とはあらゆる瞬間のこと

人には様々な欲があって、そういう満たされない想いが何かを前に進める力になる。
だから自分の内側から溢れる気持ちに純粋でいることが全てだと思う。

ただ、ここに他人の目や評価軸などのノイズが入ってしまうと、何もかもが分からなくなってしまうよね。自分の望んでいないことをいつしか望むようになってしまうこともあるだろう。社会に出てみると、とにかくノイズが多い。こちらに受け入れる気がなくても止まることなく流れ込んでくることは、きっとこの先も変わらないのだろう。

何かを追うことは本当に素晴らしいことだが、追うことが目的になってしまって、自分はこれができないんだとか、こんなに足りないんだという風に、自分自身を責めないように生きていきたいね。

幸福の象徴は、やはり日常に散りばめられていて、そのどれもが本当に温かくて切ないものなんだよね。
先日金沢に遊びに向かった新幹線の中で見つけた懐かしい文章。ばななさんは幸福とは何かを絶え間無く、ほんのり呼び覚ましてくれる存在。

その不規則なりの自然さを観察していたら、人間は体に任せて生活するのがいちばんいいんだな、とさえ思った。
疲れているときはたくさん寝て、動きたいときはたくさん動いて、体が勝手に調節していく。
そんなふうに強くできている成長の時期の底力を見た。
ある夜、お友だちの原マスミさんが近所でライブをやり、帰りにちょっとうちに寄ってくれた。
11時だったが、子どもはまだ起きていた。うちでお茶してゆっくりしてから、原さんをタクシーが拾えるところまで送って行った。
原さんと子どもはにこにこしならがら手をつないで夜道を歩いていた。
そして原さんが言った。
「こうやって夜中にいっしょに歩いたこと、一生忘れないでね」
そうだな、原さんも私も、順当にいけばこの子よりも先に、ここからいなくなるんだな…星空を見上げながらそんなことを思って、胸がきゅんとした。

どうか自分が、こういう日常にある幸福を忘れることがありませんように。
こうやって過ごす中にある大切なものを、いつも肌で感じられる人間でありますように。

それだけだと思う。

#吉本ばなな

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