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今につながる先駆者の想い。ミュンヘンのこどもミュージアムを訪ねて。

こんにちは。

私はベルリンのこどもミュージアムで働いています。
他の街のこどもミュージアムを訪ねるのもだいすきです。

昨年の夏、コロナ禍で通常とは違った新しい形で開催されたミニ・ミュンヘンを訪れた際、ミュンヘンのこどもミュージアムにも行ってきたので、今日はその時の話を。

ミュンヘンのこどもミュージアムは、1990年に、使われなくなった市バスの中で始まりました。ミュンヘン市内の各地区の、公園、芝生、イベントなど、こどもがいるところに出向いて行ったそうです。
そして、1995年から現在まで、ミュンヘン中央駅のすぐ横の建物の中で、40以上の参加体験型展示で子どもたち、大人たちを迎え入れてきました。

数日前に電話で取っていたので、その日ミュージアム内で働いていたスタッフ5人にとても快く迎えてもらい、案内をしてもらいました。

このときの展示は、音をテーマにしたもの。

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触って体験して感じて、音について学べる展示物がたくさん。
専門家と一緒に企画して作られたその展示は、楽しく遊びながら得られる気づきも驚きも学びもたくさん。

これぞ、こどもミュージアム!!

はぁー。自分の「こどもミュージアム飢え」のようなものを痛感します。


この展示の準備中に新コロナウイルスがやってきたので、急遽展示方法を変更して設営したそうです。

他の来館者との間に十分に距離を取れるように展示物の間に間隔を取り、つい立てを立てて。
各箇所に手の消毒液を設置して。
閉め切られている地下には人数制限を設けて、地下への階段の手前には、今入っていいかどうかがひと目で分かるように青と赤の信号を設置して。

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中が覗けて、音のなる仕組みが見えるようになっているピアノ。

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いろいろな楽器を試せるお部屋。
「本物」に触れられます。

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手前にあるのは、砂の動きで音の振動が見られるようになっている装置。
ベルリンのこどもミュージアムではきっと砂が一瞬でばらまかれてその装置は機能しないかも。。。ミュンヘンの子どもたちはベルリンの子どもたちと比べてそんなにおとなしいのか!?


今の展示のことや、展示の企画から設営までの流れ、展示内のプロジェクトやワークショップ、デザイナーやファシリテーターなどのスタッフさんたちのことなどなど、お互いのこどもミュージアムの情報交換をしながらミュージアム内をひと通り回ると、気が付けばあっという間に3時間半。

やっぱり一番気になったのは、今ミュージアムをオープンできている、ということ。
メルケル首相から度々コロナ禍での規制が発表されていますが、細かいコロナ対策は、ドイツでは州によって異なります。

私が働いているこどもミュージアムは、屋外でのサマープログラムを除いて、2020年3月中旬からずっと閉館中。
ベルリン州の規制により、ベルリンの美術館や博物館は全て閉鎖されています。

ミュンヘンのあるバイエルン州はベルリンと比べて規制が緩いのか?と尋ねると、

「子どもたちのために、コロナ禍でもできるような展示の形をとって、少しでも早くオープンを、とミュンヘン市からの要請があったんです。」

なんてうらやましい!!!

ミュンヘンはいいなぁー!
と思ったのですが、ミュンヘン市がたまたま規制が緩くてラッキー!というわけではなく、その背景には、こどもの美術教育や遊びの環境のために尽力されてきた先駆者たちの熱意があったのです。

こちらにも書いたのですが、1950年代〜1970年代、学校の枠組みを越えた美的教育への新しい考えを持った若い芸術教育者たちのグループが、様々な活動を行っていました。

世界で一番長い歴史のあるこどものまち「ミニ・ミュンヘン」もそのひとつです。

このグループこそが、使われなくなったバスを使って子どもたちのところへ出向き、すべての子どもたちに遊びと学びを届けていたのです。
それが、このこどもミュージアムの始まりだったのです。

ミュンヘンでは、彼らが行ってきたこどものまちやこどもミュージアムのきっかけになったプロジェクトや他のたくさんの活動や熱意が受け継がれ、しっかりと浸透しているのを感じました。

ミュンヘン市で活躍している政治家の中には、子どもの頃にミュンヘンのこどものまち「ミニ・ミュンヘン」に参加していた人も増えてきているそうです。

先駆者の強い想いと行動が、子どもたちが自発的に何かに取り組んだり、自由に遊んだり、体験しながら学んだり、そういう環境がとても重要と見なされ優先されているミュンヘンの今に繋がっているのです。


私もその熱意を受け取り、ベルリンへの帰路に着きました。

大きな大きなベルリン市を変えるなんてことは私には到底できないけれど、この日学ばせてもらったこととこの気持ちを忘れずに、私も、自分にできることを一つずつやっていきます。

今の自分の想いや行動も、次に繋がっていくと信じて。

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